巌流島の試合場にアメフトの爪痕を残したいと思います!|和久憲三(アメリカンフットボール/日本)
アメリカンフットボールの選手として大学時代から日本代表として活躍し、突然冬季オリンピックのボブスレーに挑戦し、短期間で日本の強化選手に選ばれるなど、抜群の身体能力を誇る和久憲三。格闘技経験ゼロの和久がわずか1ヵ月間の練習でこのトーナメントに挑みます。一体どんな試合を見せてくれるのでしょうか……?
——昨年の11月に巌流島イベントの記者会見を行ったんですけども、和久選手はその頃から巌流島のことはご存じでしたか?
和久いつ見たか忘れたんですけど、アメフトの河口(正史)さんとFacebookで友達になっていて、河口さんが「実行委員会として格闘技に携わることになった、自分は出ないけど」ってのっていたので、なんだろうなぁと思いながら見ました。
——で、和久選手の出場は河口さんから誘われたことがきっかけだったそうですが、最初に言われた時はどう思われましたか?
和久格闘技なんで、「えっ?」と思ったんです。でもボブスレーをやった時もそうですけど、新しいことをやるのは楽しみでもあるのでね。今までも綱引きとか腕相撲とかのテレビ番組でアメフト代表として出させていただいたことがあったんですけど、それで大ケガするということはほぼないじゃないですか。でもさすがに格闘技は殴られたら危ないしというのもあったので、「綱引きに出てみない?」と言われた時の感覚とは違いましたね。さすがにすぐには出ますと言えなかったですから。
——でも、あまり悩まずに出場を決められましたよね。
和久そうですね。格闘技かぁと思いながらも、逆に出たいと言っても出られない方も大勢いる中で、舞台は違いますけどアスリートとして勝負できるというのは魅力的だとは思いました。アスリートしてボブスレーに出た時も、いろんなスポーツの中から選ばれた人達と競ってオリンピックを目指したんですけど、その時と同じ気分で、一人のアスリートして巌流島という新たな格闘技イベントで、押し出しもあったり、(試合場)の広さもあったりとか今までの総合格闘技とはルールも違いましたし、いろんなスポーツ選手が活躍できるルールは盛り込まれているので、一人のアスリートとして他の種目の選手たちと競い合った時にどこまでやれるんだろうかという気持ちから出ようと決めました。あとは、アメリカンフットボールの選手って凄いんだなって思ってもらえる機会にもなるのかなと思いまして。僕が学生時代とかに、テレビ番組で河口さんとかが他のスポーツ選手と競って勝っているところを見て誇らしかったので。
——なるほど、それで出場することが決定した後は元K-1ファイターの金泰泳さんのところで練習をすることになったんですよね。練習始められたのは2月に入ってからということですが、和久選手は格闘技の練習は初めての経験だったと思いますが、最初に練習をしてみていかがでしたか?
和久最初、いきなり金先生から「(自分は)打たないから好きに攻めてこい」と言われて、僕が向かっていったんですけど、今まで4分という勝負をしたことがなかったので、1R終わって吐きましたね。
——でも、いきなりで4分間動ききったんですね。
和久いやでも、シンドかったですよ。もうゼイゼイいいながら、ちょっとこかされて(=転がされて)上に乗られたら動くのもシンドいし。最初3分でなくてワザと4分でやったんですけど、4分間ってどんだけ長いんだろうって思いました。
——試合に向けて特に重点的に教えられたのはなんですか?
和久いろいろあるんですけど、言いたくない部分もあるんで……。
——あ、そうですね、作戦もありますからね。言いたくないなら大丈夫ですよ。
和久僕、ケンカもしたことない人間なんで、パンチの打ち方から、ガードの仕方から、グラウンドの防御とか立ち上がり方という基礎中の基礎を叩き込んでもらいました。
——この1ヵ月間練習をされて、一番キツイ練習ってなんでしたか?
和久ラウンドを闘うってことですかね。3分やって1分ブレイクでまた3分やって1分ブレイクっていう試合形式の練習をやった時に、予想以上にスタミナを奪われまして。なので、試合時間に合わせた練習をし始めた頃は身体はどんどん重くなっていくし、パンチも最後はスローモーションみたいになってしまうし、そういうのはシンドかったです。
——練習の中で、アメフトの動きで活かせる部分っていうのはありましたか?
和久そうですね、今回はぶつかってもいいので、今までのようにヒットしてもいい部分とか、フットワークの部分では近いところはあると思います。あとは相手の動きに対してリアクションするというのも、フットボールにはありますから、そういう部分でも活きてくるところはあると思ってます。
——では、トーナメントのことを伺いたいのですが、出場選手をみてどう思われましたか?
和久フフフ。どなたも強そうなので……僕は誰とやりたいというレベルでもないですし、誰とやってもシンドイ試合になるのは間違いないので、僕はド素人なんで金先生に教えて頂いたことを信じてやるだけだと思ってます。
——なるほど。特にマークしている選手や対戦してみたい選手っていうのはない感じですか?
和久やってみたいというのであれば、8人の中でいえばミノワマン選手ですね。ミノワマン選手がボブ・サップ選手やチェ・ホンマン選手を倒したのはテレビで見ていて、小さな日本人選手が遙かに大きな外国人選手を倒す姿っていうのは、競技は違えど凄く勇気をもらえました。そのミノワマン選手と同じリングに上がれる機会があるとすれば、光栄なことですね。
——でも、ミノワマン選手と闘う場合は決勝戦でしか実現しないんですよね。
和久なんとか僕も頑張って、決勝の舞台で実現できれば最高だと思います。サイトのミノワマン選手のインタビューで「日本人は僕と和久選手だけですから」って僕の名前を出してくれたことが嬉しくて。「ああ、名前知ってくれているんだ」ってちょっと嬉しかったです。
——その前に、まずは1回戦突破が大きな目標になると思いますが、相手は相撲の星風選手ですね。
和久巌流島のお話しをいただくよりも前の話ですけども、僕、今まで相撲部屋に行かせていただいたことがあって、ぶつかり稽古とかも何度かやったことがあるんですよ。だから、力士の方の強さは分かっているんです。当たっても強いですし、そういう面では皆さんはアメフトと力士ということでぶつかり合いもみたいと思うので。
——星風選手の総合の試合をご覧になってますか?
和久見ました。皆さんの力士のイメージってどちらかというと、大きくて力はあるけど動けないというイメージを持たれていると思うんですけど、(星風選手の)試合を見させていただいて、デカいけど動けるし、気持ちも前に出しているファイターだと思いましたね。デカくて、動けて、気持ちも強いと。
——対星風選手対策として、金さんはしっかりプランを立ててくれているんですよね?
和久そうですね。こういうふうに闘えというプランは教えてもらっているので、僕はそれを信じてやるだけです。1ヵ月ですけど頑張ってきたので面白いものはお見せできると思います。
——では、ルールのこともお聞きしたいのですが、このルールを最初に聞いた時はどう思われましたか?
和久普通のリングで、これまであったPRIDEやK-1やDREAMのような試合だったら、断っていたと思うんですよ。今回は(試合場はリングでなく)広くて、押し出しもアリで、絞め技もなくてとか、多少自分にも利点があるんじゃないかと思ったんでオファーを受けた部分はありますね。
——今回、巌流島に挑戦されて、この試合の後も格闘家としてやっていこうと思っているのか、それとも今回だけの挑戦という感じで挑まれているいるんですか?
和久やってみないと分からない部分はありますけど、僕は今日(インタビュー日)もアメフトの練習に来ているので、僕はあくまでもアメリカンフットボールの選手ですから、フットボーラーとして巌流島に上がるつもりですし、試合が終わってもすぐにフットボーラーに戻ると思ってます。
——そうなんですね。ではこの1ヶ月間金さんから教えられた中で一番印象に残った言葉はありますか?
和久頭の中に残っているのは、試合の時にこれができれば、勝てる。これをやってしまうと負けるっていうのでいくつかのことを言われているので、それだけは頭に入れて試合に臨もうと思ってます。
——楽しみにしております。それでは最後にトーナメントに向けての抱負をお願いします。
和久アメフトの選手は強いんだと思われるような試合をしますんで、応援をよろしくお願いします。巌流島の試合場にアメフトの爪痕を残したいと思います!