これは凄い! 次元が違いすぎる山城師範の戦略!! 「小見川選手を完全に成仏させる!」作戦大公開!!!
お題………大反響! 1・3巌流島を総括する
「僕の中のテーマというのは、神の手の向こう側。超えます。神の手を」
試合前の煽りビデオで小見川道大選手が語った言葉である。
私は試合直前、この言葉を聞いて勝利を確信した。
私らが積んできたことは間違っていなかった。
私の読みは正しかった。
ここに、普段は極秘であるが、試合前の11月21日、世田谷の体幹トレーニングジムCORE’S(http://cores-gym.com)にて行われた今回の戦略会議のボードである。
一部ではあるが、菊野を一段階、二段階も上に成長させるための作戦の一部と、トレーニング項目である。
●チームのメンバーはメンタルトレーニングで有名なAll Day Sportsの阿部先生(http://alldayssports.com)のメンタルコーチングを加え、体調管理とケアを巌流島に出場し、クンタップ選手と激戦を繰り広げた横浜スポーツ接骨院の種市院長(http://www.mahikaizen.jp)にお任せし、私の難しい要望をいとも簡単に解決してくる、世界一のミット持ちの藤田さんと一緒に、チームで菊野選手を強くしていきました。
私の根本にある毎回の作戦の肝は、「菊野選手を成長させること」である。
しかし、今回の作戦にはある一つの決意のようなものを込めて作りあげた。
それは前回、小見川選手が菊野選手に対し、熱い想いを込めて再戦を申し出たその直後に菊野に伝えた。
「完全に成仏させてあげよう」
という思いであった。
おそらく小見川選手は前回の試合を、
「トーナメントではなくワンマッチであったら、勝てたのではないか。
あの神の手も自分ならば攻略できるのではないか」
という思いがあったのではないかと感じていた。
そのため、今回の申し出は
「一度負けた相手に対する再戦」
ではなく、
「一番いいコンディションで勝負させてくれ。それなら勝つから」
という意味合いだと受け取った。
そのため、私は「完全に勝つ、完全な勝利」を菊野にもたらすことは、小見川選手に対して「圧勝、圧巻の勝利、完全に倒す、KO」であると考え、そのための戦略と菊野の鍛錬法に全精力を注いだ。
判定や微妙な勝ちは、今回の試合にはない。ありえないことだ。そういう思いからのスタートだった。
では、どのようなことをすべきか? 先ずは私がこの一年ばら撒いてきた「神の手」に対する誤解と認識を利用することから始まった。
実は前回の対小見川選手の試合では、菊野選手は神の手を使ってない。まだ教えてないからだ。
その時の作戦は「半身」であった。神の手直前の技術だ。
半身を切ることで、菊野選手には安心感、相手には入りにくいプレッシャーを作ることが可能になる。でも誰もこの意味を理解してないかった。もちろん、菊野選手でさえも。
でも、それは私が行なってきたことは武術であり、格闘技ではないので当然なのです。
多くの人間が「神の手」を理解しないまま、言葉とそのイメージだけ先行していった。私の狙い通りだった(ネーミングも東スポさんみたいだし)。
そもそも神の手とは擬似的に間合いを作り出し、相手に錯覚を生み出すための技術だ。
相手の手を触って止めるとか、そういう程度のものでは無い。
そしてこの擬似的に作り出される間合いは、どのような距離感を感じているかは実は対戦した相手のみしかわからない。
マーカス・レロ・アウレリオ選手に対しては、半身とステップワーク、そしてプレッシャーという三つを生かして、それを可能にするためのトレーニングを積み上げた。
ここに、神の手を積極的に使うという要素はない。
だから、対ケヴィン・ソウザに使用しただけの一回だけの技術なのだ。
よって、小見川選手サイドが理解することはないという確信があった。
そしてその「神の手」にも弱点がある。
でも、本当の弱点は言えないにしても、相手側は「神の手とはおそらくこういうことが弱点だろう。ではこうやって対処していこう」と、想像し、対策を練るはずだ。
そこで私が予想する小見川サイドの対策とは、「神の手の向こう側」に行くことだと結論を出すことだろうと読んでいた。
つまり、冒頭の小見川選手のテーマというのは小見川選手の冗談でもなんでもなく、まさに私が読んでいた、小見川サイドの考える「神の手の向こう側」だったのだ。
つまりあちらの作戦はこうだろうと思われる。
「菊野選手が何をしようとも、前にプレッシャーをかけていき、間合いを潰していく。
プレッシャーをかけるために、殴るように手を出すが、当てることが目的ではない。
また、前蹴りが怖いので、前蹴りを出してそこから踏み込んでパンチの連打を打つ。
手を連打して踏み込んで、その後道着を掴む。
道着を掴んだら、投げにいくふりをして打撃で倒す。
投げられたら投げる程度、または殴り返されたら投げで逃げる程度にする」
つまり、「神の手という防御ラインを無視して超えて、投げを警戒させて掴みからの殴りでいく」というもので、これが小見川サイドのいう「神の手の向こう側へ超える」ではなかったかと思っている。
もちろん、想像の域を出ない。
しかし、これであろうと読んだ私は次のように思った。
一、主導権を握られたら、どうやってもそのペースに持ち込まれて負ける。
二、投げ自体に勝利の意味を作り上げた小見川選手は、投げられただけで負けの空気になる。
三、打撃力が強いので、頭を振って踏み込んでこられると対応が難しい。
この三つを解決するためのトレーニングと戦略を作り上げていった。
そしてそこに菊野自身を成長させる要素を組み込んでいった。
一、に対しては皆さんが試合開始直後見たように、まずはズケズケ歩いていって、そのまま避けるか抱きつく。
みんなが驚きの声を上げていましたが、あれも作戦です。これによりギョッとした小見川選手は、菊野選手が何をするかわからないという気持ちになります。そうすると、しっかり見極めようという、後手に回ります。
きちんと対応して殴りにきた小見川選手ですが、「殴らせた」というのが本当のところです。
ここで初めて菊野選手は先手を取れることとなり、小見川選手を「動かす」ことができるようになりました。
続いて、小見川選手は本来の戦略を思い出したように、左右に頭を振り、ピーカブースタイルでガードをしながら連打を繰り出していきました。
ここで試合を振り返ってみるとわかるのですが、菊野選手が頭を左右に動かしながら打撃を打ってくる小見川選手に対し、動きながら、下がりながら、どんどん軽く打撃を当てていっていくのです。
これは二つの要素があります。まずは半身で動くということ、これにより、菊野選手の一歩は、小見川選手の三歩分にもなるので、ちょっと軽く半身を切ってる程度でも、菊野選手にとっては簡単に距離が作れ、小見川選手には物凄く遠く感じているのです。
続いて、「動くミット」の練習をさせているということ。
世界一のミット持ち、藤田さんにお願いしてミットを動かしながら、そこに手を合わせて当てる練習をさせています。ミットというと普通は気持ちよくパンパン当てる練習をしたり、コンビネーションの練習をしていますが、私はそれをあまり効果がないことを知っています。重要なことは動くものに合わせる練習であり、持ち手が打ち手にちょうど合わせてくれるミットには意味はありません。ちなみにこれは三、の対処になります。
最後は選択反応反射のトレーニング。
赤と青のボールを同時に二個投げ、投げる側が「赤」と言えば、赤を避けて青を手で弾く、そういう小脳自体を鍛えるトレーニングなどをコアズで行なっています。
重要なことは反射神経ではなく、選択反応反射。その瞬間に何を行えば最適になるのか? その速度を高める練習です。
このトレーニングには視野の使い方も変化するという意味があります。
菊野は私が与えたかった「神の目」を手に入れたのです。
これらにより、小見川選手の頭を振って連打で打ち込んできても、簡単に見極められ、かつ打撃を返すことが可能となりました。
そして二、では菊野自身が投げられたくない、むしろ投げ返したいという思いがあったので、道着を掴む技術から、沖縄拳法の投げを行うことで、柔道にはない投げの対処法を教えました。それにより、菊野自身も恐怖心が消えていきました。
試合開始後、小見川選手の掴みから投げが行われましたが見事に技を潰し、殴りにいきました。その後、再開した直後、菊野はプレッシャーをかけにいくように前に入っていきました。
私はその瞬間、こう思ってはいけないかもしれませんが、「勝った!」と思いました。
その直後、前にプレッシャーをかけられた小見川選手が、ちょっと引いた菊野選手に吸い込まれるように踏み込んでいき、左を合わせた菊野選手の一撃で小見川選手は倒れました。
試合後、『週刊ファイト』の記事には、小見川選手がインタビューでこう語っていたと書かれていました。
「パンチ出しながら入って行って組めばと思っていたが、掴む前に(パンチを)貰ってしまった。正直、僕は結構打たれ強くて、顎も強いしKOされた事もないし、そこの自信もあった。左は全く見えなかったです。向こうは下がりながら打ってるんですよ。僕の力を彼が吸い取っている様な感じ。行ってる所をすっと入って来る様なパンチだった」
まさに狙い通りに相手は感じてくれたということだと、ホッとした。
また、菊野選手は試合後、こう語っていました。
「山城先生の研究能力、闘いに関する事は次元が違う。僕は先生に言われた通りに練習して、本番に臨もうという感じですね」
『週刊ファイト』より抜粋https://miruhon.net/87733
まあ、そう言われると嬉しいですね(^o^)。
最後は菊野選手のパウンドになりましたが、ちょうどセコンド席からよく見えたのですが、とても美しかった。相手を気遣いながら、勝利を得ながら、審判の反応を確認しながら。良い男たちの良い戦いの結末にふさわしい景色でした。
試合後、菊野選手に私はこう語りました。「あの、パウンドの姿、良かったよ。きっとみんなが語り継いでくれる伝説になるよ」。
今、あの最後の姿は菊野選手にとっても、小見川選手にとっても伝説となって語り継がれ始めたのではないでしょうか。
試合直前のギリギリまで何をできるか? 何をすべきか? そう問い続けて、菊野選手に勝利をもたらすことができた私は、少し疲れましたが、遅い正月を楽しんでいます。
でもすぐ次はテコンドーの全日本大会対策なんですよねー。
また頭フル回転の日々です。