「勝村周一郎、加藤清尚のセコンドにビビる」 種市純也が語る菊野 vs 小見川戦の裏話!
お題………大反響! 1・3巌流島を総括する
1・3大会の感想または裏話がほしいと巌流島スタッフの柴田さんから連絡があった。
「大会の感想でもいいし、裏話でもいいし、何かお願いします」と。 何を書こうか、頭を抱えているうちに締め切りが近くなる。 作家の気分が少し味わえた(笑)。
実は、僕は小見川先生(以降・小見川選手)に3年くらい組技を習っていた時期がある。 セコンドの勝村周一郎会長は、僕が会員になっているリバーサルジム横浜グランドスラムの代表だ。 ここにも5年くらいお世話になっている。 ちなみに沖縄拳法は6年くらい。
小見川選手・勝村代表・山城先生・菊野選手を知っている立場からの裏話を書こうと思う。
●まず、小見川選手について
柔道で全日本強化A指定選手にもなっている一流のアスリート。 柔道の現役時代はオリンピックを3連覇した野村選手を投げたこともある。また、そのボクシングテクニックはプロボクサーの6・8回戦のボクサー達と互角の闘いをし(スパー動画を見せていただいた)、シュートボクシングでは日本大会で準優勝している。
外国人に普通に殴り勝つ強靭なフィジカルをもち、MMAの試合では腕が折れても闘い抜いたという強靭な精神力も持ち合わせている。また、今回相手セコンドについている僕に、試合前後普通に声をかけてくれるナイスガイでもある。
●勝村代表
あの堀口恭二選手の連勝を止め、日本人で唯一黒星をつけた上田選手に初黒星をつけた修斗元世界王者。 また、砂辺光久選手のパンクラス3階級制覇&2011年11月からMMA負けなしを裏から支えている作戦プランナー&メインセコンドでもある。勝村代表の作戦プランで有名な話が砂辺選手の試合で、最初の2ラウンド相手に取らせて疲れさせて、後半3ランウンドで取り返すというのがある。通常の選手orセコンドをやってみると、そんなリスキーな作戦は立てられないと思う。 そんな大胆な作戦プランを作る頭脳も持ち合わせている。また、東日本大震災の復興支援を現地で行い続けている、リアルタイガーマスクでもある。
●この二人に加え空道・大道塾のレジェンド加藤清尚先生もセコンドに加えていた。これは道着ありの打撃をこの試合に向けて新しいパターンで取り入れたのかと推測できた。事実、結果的には不発に終わったが、小見川選手の打撃~背負いは非常にスムーズだった。
小見川選手・勝村代表・加藤先生。寒気がするほど豪華すぎる布陣だ。
これを見て一番顔色が悪くなっていたのは、菊野陣営では山城ヘッドコーチだ。 実は、山城先生は勝村代表のことをかなり警戒していた。
前述した砂辺光久選手は、沖縄を代表するMMAファイターだ。 山城先生は沖縄の人なので、やはり沖縄から選手が出てきた事がうれしかったのだと思う。 砂辺選手のことをデビュー当時から注目していたそうだ。 その砂辺選手の躍進を支えている作戦プランナーが相手の陣営にいるということで、かなり警戒していた。
事実、控室で支給されたお弁当を一口食べて、「だめだ。口の中がぱさぱさして食べられない」 と言いながら、相手チームのアップを食い入るように見ていた。
リングチェック(土俵チェック?)では、小見川選手は普段あまり使わない前蹴りを多用していた。それを見て、山城先生はすかさず前蹴りを仕掛けられた時のパターンを練習させていた。「もしかしたら、前蹴り~組みつくようにパンチからの投げを狙っているもかもしれない」。実は試合の準備期間中にもこれに近い対策は立てて、菊野選手に稽古を指示していた。「相手陣営は、菊野が前回投げられたことから、打撃からの投げをパターンに必ず入れてくる」 と。それに前蹴りが加わったと考えればいい。
ただ、前蹴りのパターンが、相手陣営がフェイクでやったのかもしれない。正直、向こうのセコンド陣ではそのくらいのことはやらせると思う。また、控室近くのウォーミングアップスペースでは、お互いが見える位置になってしまった。ただ、幸いお互いの声は聞こえないくらい離れていた。そこで山城先生はフェイクのコンビネーションも菊野選手にやらせていた。もしかしたら、前述の部分も併せてお互いの陣営がそうだったのかもしれない。油断はできない。腹の底の探り合い。水面下での闘い。今思い出しても、周りの人間でも本当に胃が痛くなるくらいのプレッシャーだった。 闘っている菊野選手は、もちろんそれ以上だったと思う。
また、今回の試合時間自体は、結果として57秒という時間で終わっているが、2016年の巌流島アジア武術大会では、小見川選手は外国人選手二人を一撃KOで倒している。 オープンフィンガー・グローブでのKOの仕方を実践できる技術とパワーを持っている。菊野&小見川両選手の打撃を貰ったことがある僕としては(スゲー痛い)、先に当てたほうが勝つというのは身をもって十二分に想像できた(イイネジャネーヨ)。 それは、メインセコンドを務めている勝村&山城両セコンドも同じだったと思う。
それだけに今回の試合はお互いの陣営が繊細になっていたと思う。現実、あの日のことは僕もあまり思い出せない。朝食にパンを一つ食べて、それ以外は帰宅しても何も食べないで寝てしまった。
試合前の菊野選手はいつも通りというか、ものすごく緊張していた。
彼を見ていると、どんなに強くなっても緊張はするのだと分かる。
いや、強さとは自分の弱さから逃げない事なのかもしれない。評論家ではなくプレイヤーで成長し続ける事が強さなのだと思う。
今回の詳しい作戦の内容や戦っていた時の感覚などは、選手や作戦プランナーたちが、言える範囲で引き続き解説してくれると思います。
次回以降に掲載される山城先生のブロマガを楽しみにしていてください。