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自己嫌悪の地獄で苦しんでいた? 生まれ変わった菊野が7.31巌流島で新たな世界に飛びこむ!

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6月にDEEPに参戦し、日本の舞台に復帰した菊野克紀。今度は「7.31巌流島・有明コロシアム大会」のメインイベントで、ムエタイ世界王者のクンタップ・チャンロイチャイと対戦する。日本、米国のトップMMA団体を渡り歩いてきた菊野は、巌流島という未開拓の地でいったいどんな闘いを見せるか? 原点に立ち返った菊野が“克己心”で巌流島に飛びこむ。

IMG_1351(サムネ)

————まずは6月の「DEEP 76」での勝利、おめでとうございます。

菊野 ありがとうございます。この1年半、勝ち星がなく、試合自体9ヵ月ぶりでした。今後のことを思うと、本当に負けられない試合でした。負けることを考えると、恐ろしかったです。

————結果的には相手につけいる隙を与えずに完勝しました。

菊野 UFCでの連敗の教訓が活きたというか、結果を考えて、負けることを考えてしまって動けないという悪循環に陥らないように意識しました。とにかくビビらないことだけに集中して、試合に臨んだんです。

————UFCでの連敗のとき、実は菊野さんのコンディションは非常に良かったと聞きました。

菊野 もうこれ以上ないっていうくらいベストな状態を作りました

————そのベスト・コンディションで負けた理由がメンタルではないかと?

菊野 そうだと思いますね。自信があって逆に余裕ができてしまい、ああさせない、こうさせちゃいけない、こうはなりたくないと考え過ぎてしまい、結果、後手後手になり、相手に先手を取られて負けるという悪循環でした。勝ちたいがゆえに攻められないという矛盾した状態になっていたんです。

————6月の試合ではその課題を克服できたわけですね?

菊野 そうですね。もちろん負けるのは怖いんですけど、あえてそれを考えずに闘うというのを実行できました。

6月に行われた「DEEP 76」に参戦した菊野選手。 2ラウンドTKOにより日本復帰戦を勝利で飾った6月に行われた「DEEP 76」に参戦した菊野選手。2ラウンドTKOにより日本復帰戦を勝利で飾った

 

———— そんなふうに変われたきっかけは?

菊野 それはもう地獄を見ましたからねぇ。最高のコンディションにも関わらず、メンタルの部分で自分をコントロールできずに、不甲斐ない負け方をするという。あのときは、さすがに自己嫌悪の連続で苦しみました……。

————今は精神的な変化を感じられているんですね。

菊野 未来のことを考えると、今に集中できなくなるんですよね。今やるべきことは攻めること。そして、攻める前にやることがビビらないこと。自分に克つから攻められて、攻めるから勝てるわけじゃないですか。その順番をもう一度、最初からやらなきゃいけないと気づけたんです。

————UFCにいた頃は後のことばかり考えていた?

菊野 はい。それでもイケイケでうまくいったときもあったんですけど、一度負けを味わっちゃうと、“負け”のイメージを吹っ切れなくなってしまって。相手が強かった弱かったではないんですよね。それは僕がコントロールできることではないので。僕自身ができるのは自分に“克つ”ということだけですから。ただ、あの苦しみがあったから今の良い状態があるのも確かなので、すべてを肯定して進むしかないですね。

————今は練習はどこでやられているんですか?

菊野 色んなところに出稽古に行ってお世話になってます。

————現在はフリーで活動されてますね。

菊野 はい。自分で考えて、自分で選び、自分でケツを拭く環境に自分を置くことで、また強くなれると思ったんです。誰のせいにもできないので大変な部分もありますけど、そこには納得がありますし、心地よいものがあります。

ビビることが僕にとっての恥。とにかくビビらないでいく

————7.31巌流島ではムエタイの世界王者と対戦します。ムエタイの選手と闘うのは初めてですよね?

菊野 ムエタイは初めてですね。正直言うと、怖いです。どれだけ強いんだろうかとか、ヒザ蹴りが突き刺さったら痛いんだろうなぁ、骨を折られるんじゃないかとか。

————総合格闘技を経験してきたという意味では、菊野選手のほうが経験値は上かと思うのですが。

菊野 そこにはアドバンテージがあるとは思います。ただ、コンディションがいいのに負けてしまった経験もあるわけで、あくまで自分に克つことに集中して臨みたいと思います。相手が強いとか、ルールがどうだとかはあまり考えないで臨みたいです。もし今日、試合することになっても闘えるくらいの気持ちでいたいんです。僕は競技に特化した考え方とは、あまり相容れないんですよね。やっぱり武術的な考え方が好きなんです。UFCはそれこそ“競技”のみの世界観なので、自分らしくできないところもあったかなと思います。まぁ、言い訳じみたことを言う気はないですが。あそこは競技としては、確かに世界一の舞台だと思うので。

————巌流島でのデビューに向けて、自分自身が楽しみにしているのはどんな部分ですか?

菊野 僕は“巌流島”というもの自体にとても興味を持っています。新しい価値観や新しいルール、武道精神の発信といったものに。その世界観の一翼を担えるのは嬉しいことです。

————巌流島のルールの印象は?

菊野 初めてのルールですからね。道着を着て空手以外の試合をすることもないですし、押し出しもありますし、どうなるんですかねぇ。

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————自身の中でテーマは設けていますか? ムエタイ選手に蹴り勝ってやろうとか、寝技で攻略しようとか。

菊野 それはないです。それをしちゃうとまた、あれをやってやろう、これはされないようにしようとか考えて、ダメになっちゃうので。自身のテーマに固執して、自由に動けなくなってしまうんです。蹴りで攻めていこうとも思わないし、相手のヒザ蹴りを食らわないようにしようと意識もしない。それでビビっちゃうと下がってしまうので。練習でヒザ蹴りのディフェンスを体に染みこませて、試合ではもう何も考えないで、自由に動くようにしたいんです。

————とにかくビビらないでいくと。

菊野 そうですね。武士の闘いも同じで、生き死にを考えちゃうと動けなくなる。死にたくないと考えるといけなくなる。勝ち負けも同じですよね。負けたくないと考えたら、いけなくなります。そうなると大事なのは、恥かどうかだけ、どう生きたいかということだけになると思うんです。ビビることが僕にとっての恥なので、とにかくビビらないでいきます。

————少しのメンタルの差で物事は変わってきますか?

菊野 ほんの少しの差で大きく変わってきますよね。前回のDEEPの試合も、僕の精神状態がちょっとだけ違って、変に欲を出していたら、結果はまったく違うものになった可能性もあります。

————相手が強い弱いということでもないんですね?

菊野 相手が強いとか考えた時点で、自分が弱くなっちゃうんですよね。自分が100%の力を出して負けたんなら、それは仕方がないので。たぶん今まで勝ってる試合って、そういうふうに吹っ切れてる状態だったと思うんです。もともと僕が格闘技を始めたのは、ビビる自分を変えたかったから。その初心に帰るということです。