「間合い・呼吸・運足」 高久空手の靖仁が衝撃の一撃KOを繰り出せた理由
錬空武館高久道場の靖仁です。今回、巌流島に出場の機会を頂きましてありがとうございます。
また、対戦して頂きました左選手、本当にありがとうございました。
この場を借りて改めて御礼申し上げます。
さて今回の巌流島の闘いを改めて振り返りたいと思います。
試合まで10日間、正直なところ、このスパンでは調整も何もなく、自分がどこまでやれるのだろうかとその一点の想いに尽きました。
試合に向けては対人稽古で相対する意識を作ること、そして稽古の後はいつも通りの部位鍛錬と至ってシンプルな稽古ですが、そこに重点を置きました。
その中で常に意識しているのは間合いと呼吸と運足の三つ。今回の試合でもセコンドから頂いた指示は「間合い」と「呼吸」のみです。相手と適切な距離感で自分だけの間合いとタイミングを計るための呼吸、そして相手に察する事ができないような運足による間合い操作、それらを実現するために高久館長から教えて頂いた身体操作を常に意識しながら稽古を重ねてきました。
そして試合においては、平常心で臨み、その三つを実現する事。これが今回の試合のプランでした。
高久館長からも「落ち着いて試合をするように」と一言だけ試合が決まってからアドバイスを頂きました。
実は前もそうだったのですが、自分がトーナメント戦で勝ち上がっているものの、身体の軸が不安定で安定感のない時、館長からは「上に登っている気を腹に落としなさい」と一言だけ指示をいただいたこともありました。
おそらくスポーツの感覚からすれば、信じられないようなアバウトなアドバイスですが、自分にとってみれば一言だけれど、とても奥の深い言葉でした。あとは自分で考えて落とし込めば答えは見えて来る。
今回の試合に向けて、「落ち着いて試合をするように」とはどう言う意味か。それを考え抜いた結果が「焦らない」ことでした。
どうしても気持ちが前のめりになってしまえば、正しい姿勢で身体を使うことが出来ないため、中途半端な突きや蹴りになり、息も上がる。
そうしたら自分がやりたいことが何もできなくなってしまう。実は出来そうで出来ない一番難しいのが、僕にとって焦らないことでした。
今までは、勝ちたいという欲に負けて、焦って手足を繰り出し鍛えてきたものが半分も出ないことが多く、今回はそこを克服するのも課題だなと、再認識することが出来ました。
しかし、その大きな答えを実現するためにはどうすれば良いのか。
それを考えた結果、「焦らない」を実現するための材料となるのが間合い、呼吸、運足でした。
この三つ巴の一つでも欠けてしまえば全てが焦りに繋がり、全てが乱れてしまうため、ここにのみ課題を絞って挑みました。
そしてもう一つ。僕が今大会に向けて気付き実践した最大のことは「己は相手と共にある」ということ。
実はこの気づきがあったのは、試合の数日前に好きで何度も見返している塚原卜伝のドラマの中での一節の言葉がそれなんです。
奥義、一つの太刀を会得するに当たり、冒頭の言葉が僕にとってビビっときたというか、剣術の奥義を拳術に生かすことは出来ないものか、相手との調和をどう計るのか。
正直、24時間そのことを考えていたかもしれません。そして行き着いた答えが相手の太刀筋に合わせること。
いわば波動拳と呼ばれる左選手の突きに合わせる事。動き出しにのみ集中し、そこに自分の突きの軌道を合わせる事。
相手の力を借りて自分の拳を合わせること。
それが今回でいう左選手の波動拳に併せて放った最初の左フックによるカウンターでした。左選手の波動拳のくるタイミングに合わせる事ができ、ダウンさせることができたのですが、それで試合を終わらせることができなかったのは、まだまだ同調できていなかった証拠かと思います。
結果としては別の突きで倒すことができたのですが、まだまだ修行不足であることは否めません。最後の突きで右拳を骨折してしまいました。これも部位鍛錬が足りていないことや、焦りによる拳のポイントがわずかにズレたことによるものだと解釈しております。
闘うことで気付き得られた物を持ち帰り、また稽古に生かす。この過程が実は一番好きなのかもしれません。
若い頃は血気盛んで闘うことが好きでしたが、修行を重ねるに連れて、闘うことよりも試合をすることで何かに気付き得られ、それを克服するために、不足に気付くためにあえて闘いの場を求めているような気がします。
この巌流島の舞台を得て、初めて感じた感覚です。そのような舞台を用意いただいたことに、心から感謝しております。
これからも長く続く武術修行の道を高久館長の元、背中を追いかけ歩んでいきたいと思います。
またいつの日か、巌流島の舞台で武者修行をさせて頂きたく存じます。
改めまして谷川プロデューサー、柴田様、関係者のみなさま、心より感謝申し上げます。
押忍!
5.11巌流島の大会情報はコチラ⇒ 『世界武術王決定戦 2019 in MAIHAMA』