天晴れ、酔拳野郎! 1Rは逃げて、インターバルで酒(水)を飲み、 急に前に出る作戦だった!
酔拳野郎・今野淳選手vs大ももち選手を振り返る
今回、この試合のマッチメイクを任され、大ももち選手を推薦させていただいたものの、まともに闘えば現在の酔拳野郎では勝ち目がないと思ってました。
身長、体重、フィジカル、リーチ、経験、スキルどれをとっても大ももち選手が上回っていた。何より私自身が巌流島稽古会などで大ももち選手と手合わせしてそう思った。
一方、酔拳野郎は昨年まで試合もしたことがなかった素人に産毛が生えた程度の奴だった。
なので今回はまず練習するにあたり、今の酔拳野郎に出来ることと出来ないことを整理整頓して、その上で中国武術・酔拳の術理を活かして勝つことをテーマにしました。
酔拳は元々は完全なる究極の虚の武術。
ふらふらユラユラと自分の軸と存在を消し、酔っ払ったフリをして人を打ったり刺したりする。おおよそ日本の武道の発想では人道的にもまずない発想である。
日本の武士道とは死ぬことと見つけたりというように、負け戦でも逃げずに闘い、潔く散るのが美徳みたいな感がある。
中国武術は負けるくらいなら逃げる。そして機を見て相手の虚をついて攻める。そんな技や概念がたくさんある。この話が始まると一冊の書籍ができるくらいの話になるので、また別の機会にするとして。
まあ元々はそんな酔拳だから、巌流島のルールの中でヨーイドンで始めて使えるも何もないワケ。すでに酔拳と言ってる段階で、もはやネタバレしてて虚を突くも何もないワケで(笑)。
そこで酔拳の術理を巌流島でいかに活かせるかがポイントであった。前置きが長くなってしまったが、ここからが今回の酔拳野郎・今野淳選手vs大ももち選手の作戦及び解説です。
まず1Rは逃げるように指示を出し練習した。この逃げるというのはボクシングでいうアウトボクシングみたいな高等な事ではなく、単に鬼ごっこみたいに逃げろと。これは相手の虚をつくのと酔拳野郎の精神を安定させるためにやった。
いきなり巌流島の大舞台で格闘技をやってしまうと、ガムシャラな殴り合いになり地力で勝る大ももち選手にやられてしまう。そこで1Rは格闘技の試合じゃないよ、これは鬼ごっこだと思えよ、と。
なーんだ鬼ごっこか、だったら怖くない、とこうなるワケですよ。相手は格闘技で来る、でもこっちは鬼ごっこをしてるだけ(笑)。
普通の格闘技の試合だったら、注意か警告を受けるレベルだが巌流島ならそれもあり。逃げると相手はどうなるかというと、舞台中央で来いよ来いよと挑発してくる。だがそれでも攻めずにその時こそ、杯を飲み干す酔拳を魅せろと。するとニャンニャン拳法も必ずエンターテイナーとしてパフォーマンスをする、そしたら会場も盛り上がる。
そしてまた鬼ごっこが始まり、もし捕まって組まれたら変に頑張って堪えて体力を消耗するより、自分から倒れて15秒ずっと組み付いていればいいし、倒れぎわに身体を翻せば上を取れる可能性もある(自分から倒れるのも酔拳の術理)。この作戦が見事にハマり1Rが終了した。
2Rの作戦はジャッキー・チェンの『酔拳2』を観た方ならお分りだろうが、クライマックスでのジャッキーのラストファイトで、工業用アルコールを飲んで狂ったように前に出て攻撃していくというのをやった。もちろん工業用アルコールではないが(笑)。
映画と同じような竹筒に水を入れてインターバル中にそれを飲み、イメージと気持ちを作った。酔拳野郎はもともと『酔拳2』を観て憧れ酔拳を始めた。まさに自分が一番好きなシーンであり、一番自分を強くできるイメージをしやすいものだ。中国武術では「心」「意」「気」がある。心から意念を導き、気力を出すことでパワーが出る。まさに酔拳野郎にはおあつらえ向きの設定だった。
技自体は単純でただノーガードで早歩きで前に出てパンチを打ちまくるだけ。こんな事をすると相手のカウンターパンチは大丈夫なのか?と思ってしまうが、これが意外に大丈夫なのである。
例えば、ミット打ちする選手とミット持ちをするトレーナーで考えてみてほしい。どんな強打を持ってる選手でもミット持ちのトレーナーがヘタだったり、急に離れたりくっついたりすると、気持ちよくパンチが打てず強打も成立しない筈だ。
だから『酔拳2』のラストファイトのように、狂ったように前に出て攻撃を仕掛けると相手は虚を突かれ、後ろに下がるパンチを出しても、さっきのミット打ちとミット持ちの理論でいくと強打は成立しないので、殴られても効かない。そこで土俵際まで退がったところを押し出し。今回は運良く相手が転落したさいに脚を痛めて酔拳野郎のTKO勝ちとなった。
言うは易しだが、この作戦を実行した酔拳野郎は弟子ながら天晴れである。だが、まだまだ修行が足りないので、我々のカンフーロードはまだ続く。
5.11巌流島の大会情報はコチラ⇒ 『世界武術王決定戦 2019 in MAIHAMA』