私にはかつての格闘技ブームの復興は無理! 新しい「武道」のコンセプトで勝負したい!
メイウェザーの件で久々にRIZINの(榊原バラ)さんと仕事をさせていただいた私ですが、大晦日、格闘技、視聴率ってことで、血も騒ぎ、とても楽しませてもらいました。
大晦日当日、メイウェザーが突然「富士山が見たい」とか、「銀座に買い物に出かけた」とか、「控室にケンタッキーを30人前用意してほしい」とか、そういうドタバタに「ああ、懐かしいなぁ。これが大晦日だよなぁ」と、一人で笑ってしまいました。
もちろん、主催者のバラさんは寿命が縮まる思いで、「谷川さん、いつになったらメイウェザーはホテルを出るの?」と、やきもきしていましたが。重ね重ね言いますが、本当にバラさんじゃなかったら、この一戦は実現できなかったでしょう。普通、潰れています。そういうわけで、久しぶりの格闘技会場でしたが、私は現場にいながら一切RIZINの試合は見られませんでした。
格闘技の復興に関しては、やはりバラさんじゃないと今のところは無理な気がします。本当は若いプロデューサーが出て来なければいけないんですが、それを育てられなかったのは我々の責任。というより、そういう新しいプロデューサーは、勝手に私やバラさんがやってきたことを見て身につけたファンから生まれるものでしょうけどね。私たちが猪木さんに学んだように。
私はUFCやONE FCのような外資のイベントよりも、バラさんのような日本人が育てて世界に発信するようなイベントを応援したい。だから、またバラさんから頼まれれば、パッキャオでも、何でも協力して「できないことを実現」したいと思っています。そういう気持ちなのも、私が格闘技に対しては卒業した気持ちでいるからです。
私にはかつて自分が作ってきたK-1やPRIDEのような格闘技ブームはとても無理。かなりやりきった思いもあるし、最後は多くの人に迷惑をかけたし。
巌流島を旗揚げする時に宣言したとおり、私の中ではK-1のようなキックボクシングではなく、PRIDEのようなMMAではないもの。その新しいジャンルの開拓こそ、格闘技復興に繋がるという信念があります。
歴史を紐解いても、戦後の力道山のプロレスブームから始まり、猪木さんの異種格闘技戦があり、UWF→K-1、PRIDEとブームが作られてきました。これらは時代によって、見せ方が違いますが、根本は「最強」をテーマとした異種格闘技戦にあります。
それを令和の時代を迎えて、新しい見せ方をする。そこに新しいブームが起こるんじゃないかと思っているのです。
それが「武術」「武道」というキーワードなのではないかと。「武術」とは、実戦でいかに自分の身を守り、相手に勝って生き残れるかという技術。現代風に言えば、ストリートファイトです。そこに精神性が加われば、「武道」となる。
平成までの格闘技界は記者会見などで、乱闘し、相手を罵ることでドラマを作っていました。しかし、巌流島は「親が子供に見せたい格闘技」を打ち出しており、礼に始まり、礼に終わる。記者会見で乱闘する必要はないし、むしろ対戦相手をリスペクトする。こうした「武道精神」を世界に発信する。武術も武道精神も奥が深く、ファンの皆さんと共に考える。そういうコンテンツをめざしています。
西洋文化はそもそも、ルールを設定することで人間社会を形成してきました。法律を作り、宗教にしても聖書にあるように戒律をしっかりと明記することで、それをお互いに守ることで豊かな人間社会を築こうと努力してきました。そのルールの中で、競い合うのが身近でいえばスポーツですね。
ところが、武道というのは、死に合い、殺し合いの中で磨き上げてきた技術と精神。ルールがなく、何でもありの世界の中で、どういう生き様を送るか、どういう死に樣を見せるか? ルールがなくても「お天道様が見ているから」ということで、自制心と道徳心を磨いてきた。ルールよりも「恥」の概念を重んじるなど、常に哲学しながら磨き上げてきたものです。
私は巌流島で、そういうことを伝えたいと考えています。イベントはあくまでも武道精神を伝えるプロモーション。ビッグイベントにこだわっているわけではなく、世界各地の見知らぬ武術を集めて、競わせる。国によって、流派によって、技術も精神も異なるから、それを紹介しながら武道を広めることが一番の使命だと考えているのです。
伝統空手、フルコンタクト空手、柔道、柔術、合気柔術、空道、日本拳法、沖縄拳法空手、倉本流武術、相撲、ボクシング、キックボクシング、ムエタイ、ミャンマーラウェイ、サンボ、レスリング、コマンドサンボ、ハンド・トゥ・ハンド、モンゴル相撲、セネガル相撲、ズール相撲、少林拳、散打、テコンドー、クラブマガ、システマ、MMA、CACC、ダンベ、喧嘩フットボール、カポエイラ、修斗、シュートボクシング、Uスタイル、パンクラシスト、蟷螂拳、太極拳、プロレス、シラット、喧嘩術などなど。
これまで巌流島には、多くの武術・流派を呼びました。既存のプロ格闘技興行は、MMAやキックボクシングのプロ選手ばかりですが、巌流島の視点は違います。これら今まで見たことのない格闘家・武術家を集め、巌流島という独自のルールで、全試合で異種格闘技戦を行い、武術を競技化する。
大げさに言えば、嘉納治五郎はこんな柔道を考えていたんじゃないか、大山倍達はこんな空手をやりたかったんじゃないかと妄想しながら、ファンの皆さんと作り上げたいと考えているのです。
そして、これら世界中の武術家を集めて、劇画の世界のような「世界最強武術王決定戦」を開きたいと考えています。来年は2020東京オリンピックの年。世界中からニッポンに注目が集まる中で、「世界最強武術王決定戦」の決勝トーナメントを開きたい。そんな目標を持っています。もちろん、それも武術や武道を世界に広めるためのプロモーションにすぎない。その使命があると巌流島は考えています。
突然ではありますが、そんな大きな夢の一歩を5月11日(土)、舞浜アンフィシアターで巌流島を再開します。今回は私も体験したことがないほどの準備期間の短さですが、MMAとは違う「巌流島とは何か」をお見せできるかと思います。ぜひ、会場に足を運んでください!
5.11巌流島の大会情報はコチラ⇒ 『世界武術王決定戦 2019 in MAIHAMA』