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繰り返し見る試合、遡って気になる選手の試合映像を探す環境の変化~9・2『仇討ち』からの出発

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お題………大好評!  92巌流島ADAUCHIの総括と裏側

文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

 

英国出身のクリストファー・ノーランの新作『ダンケルク』公開に合わせて、洋画専門チャンネルなどで監督の旧作が放送されている。世間的には『バットマン ビギンズ』からの三部作で知られ、プロレス者にはイリュージョニストのライバル対決を軸とした『プレステージ』が必見作になろう。

出世作が2000年の『メメント』であり、のちの夢と現実の境界線がわからなくなる独特の映像展開手法の原点になる。この作品では、エンディングから時系列を逆向きに編集してあるが、最初に見た際によく理解できない、難解であると大半の客に言われるなら、高評価してはいけないのではないかとのジレンマがある。筆者は時系列をリバースしたバージョンとの2枚組市販DVDも購入、繰り返して楽しんでいるから、映画館よりテレビで観る数の方が圧倒的な現実や、ネット検索すればネタバレ解説のサイトが多数ある時代環境の変化を思えば、ノーラン監督の手法はアリではなかろうか。但し、無料ネットのネタバレ解説ではわからないことも多く、やはりプロの有料版解説にたどり着くことも少なくない。週刊ファイトもまた、ネタバレ解説を批判されがちだが、通常のネット詮索では出てこないスクープの洪水なのだから、底なし沼を深く楽しみたいなら購入してから意見して欲しい。

サムネ

92『仇討ち』~事前の本欄ブロマガ原稿でも、注目はロッキー川村だと活字にしておいたが、結果こそ負けてしまったが、観客が感情移入して応援していた構図がハイライトに思えた。ゴリラのような大きな手と強靭な肉体を持つ柔術家のシュレック関根が、一回りどころか二回り以上小さなロッキーの道着を掴んで振り回すのだから、さすがに重力には逆らえない。道着着用の特色がある巌流島、まして道着掴みはありというルールに加えて、無差別級の闘いということもあって、序盤はシュレックがポイントを取ったと判断されたのは仕方がない。但し、シュレックは半月板靭帯を断裂して2カ月前にヒザの手術をしたばかり。川村のローキックが効いてきていることもあり、後半明らかにスタミナ切れを起こしてしまう。

3R、初見のお客さんも少なくないと推定される会場で、ロッキー声援がどんどん強くなる。道着を掴まれず、体重差で倒されさえしなければ、当たりだしたパンチでKO勝利もあると一般客も思い描きだしたのではなかろうか。わかりやすい試合というのも重要である。なにしろ、試合前には生卵を飲み込むが、おぇーと表情を作るボクサー・キャラのロッキー川村が煽りVで紹介されていた。

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しかし巌流島競技は、寝技時間制限を含む打撃系に有利な、相撲の押し出しが加味されたMMAの変形ルールなんである。まして、33Rとややテレビを意識した短い時間設定なのだ。最後のラウンドは明らかに川村だったし、川村に付けた審判もいたが、結果は判定2-1で「気持ちはUインター代表」とファンだったことを明かしていたシュレック関根の手が上がった。リングスの前田日明がトロフィーを持って記念撮影に納まっている。

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大衆は、必ずしも最強を決める勝負を求めてはいない。つい先日になる、フロイド・メイウェザーvs.コナー・マクレガー戦がわかりやすい例だ。元6階級王者にして、現在はプロモーションを主催するオスカー・デラホーヤは、当初から「ただ金儲けのためだけに行われる試合」、「明らかなミスマッチであり、ファンはこの試合を見ないでほしい」とまで苦言を呈していた。しかし、ギャラ額がメイウェザー3億ドル(約330億円)、マクレガーが1億ドル(110億円)と見積もられていて、ビジネスとしてはマット界史上最高額の世紀の一戦だった記憶が新しい。

それでもデラホーヤは、「あれは詐欺だ」と息巻いた。「ある報道によれば」と断ってはいるが、「メイウェザーは10ラウンドで勝利することに金を賭けていた」、「みんな騙されたんだ」とも発言している。メイウェザーはプロレス用語のキャリーを実行して、引き延ばしたんだという見方に他ならない。超ベテランの王者が、アマ試合すら経験したことのない本物のデビュー戦選手を相手にするのだから、専門家の予想する4,5,6,7Rにはラッシュをかけなかったという読みだ。

根拠がないわけではない。ボクシングの場合、よく「xRで仕留める」とか煽りで吼えるのがお約束だが、なかにはセコンドのち密な計画がそれで、まさに予告通りのRで倒す試合が結構多い。そうでなければ、あるいは毎度事前の予告KOラウンドが外れてばかりなら、そんな「xRで仕留める」煽りはいい加減に止めようとなっているハズである。ベテランが格下相手をキャリーすることは現実にあるし、表にこそ出来ないが、勝敗までは八百長できないから、ラウンドに賭けることは実際にあるらしい。

巌流島は、武道エンターテインメントである。例えばMMAの世界ランカーを呼ぼうという発想にはない。それは結構なことなのだ。UFCのジョン・ジョーンズが二度目の薬物陽性反応がバレて、選手生命が絶たれたとまで騒動になっているが、競技主義の行きつく先がああなることは目に見えていた。だから、破廉恥なまでに無差別級でイイじゃないかという発想が許されるのだろうが、ロッキー川村のように、相手に道着が武器にされてしまい、掴まれて投げられるというのには、考えさせられてしまった。相撲経験者が比較的有利なルールとか吹聴されてきた巌流島であるが、道着に慣れた武道家に向いている確認は大きかったと思う。

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事前のブロマガでも触れたことが、ロッキー川村然りで、個人の様々な風評に対するリベンジが今大会の特徴だった。第二試合、無理やり菊野の沖縄拳法空手だからと仇討ちカードにされたムエタイの強豪クンタップがわかりやすい。種市純也を、右フックからの押し出しで一本となったが、ようやくこの巌流島ルールにリベンジを遂げたことになる。顔面を大きくはらし、白い道着が血で染まった種市も善戦、記憶に残るカードだった。

ロッキー川村vs.シュレック関根も、ロッキーというキャラを演じることでプロレス界でも活躍している川村亮の、自身を格闘技界に再アピールする仇討ち戦で間違いなかった。結果こそ残念だったが、本大会の事前の煽り段階では主役をこなしてくれていた。

幸いなことに、巌流島は動画が公開されている。クンタップの過去の試合を遡って検証することもあれば、ロッキー川村という新キャラに興味を持ち、映像を探すファンも少なくないと思う。格闘技の試合はえてして、勝った、負けたがわかれば興味が終わってしまいがちだが、武道エンターテインメントの巌流島は、クリストファー・ノーラン監督の映画のように、繰り返して見てしまう楽しみがある。92『仇討ち』は、今後のリベンジの続きを期待させる出発点であった。

9・2巌流島のレポートはコチラ⇒
『ADAUCHI 2017 in MAIHAMA』

 

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