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【9.2巌流島レポート】菊野が日本人選手の仇討ちに成功! 次回大会は年明けの1月3日に開催!

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1月、5月に続いて、今年3度目の開催となる舞浜アンフィシアター大会。舞浜駅から会場に向かうと、強くなってきた風が木の枝を揺らしている。台風15号が接近しており、予報では雨の可能性もあるという。これは「ADAUCHI」に嵐が訪れる予感なのか?

 

■第1試合 中島大志VS真王DATE

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巌流島3戦目の“達人幻想クラッシャー”中島と、初参戦の“インド王族武術代表”真王DATE(リアルキング・デイト)の対戦。こちらは仇討ちではなく特別試合だ。真王DATEはヌンチャクを持って入場。

1R、横蹴りで相手のヒザを蹴っていくDATEに対し、中島は前進し押しの一手。パンチで対応するDATEに、中島は腰投げを放って上に。中島はなおも突進して上になるが、DATEは相手の動きを利用して上下逆転するとパウンドを放つ。スタンドに戻ると、やはり前進の中島をいなしたDATEは近い距離からパンチを出しつつ、逆に押し出しを図るもこれは同体。DATEがヒザへの横蹴り、右ストレート、捕まえてのヒザ蹴りと打撃で攻勢を取ったところでラウンド終了。

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2R、やはり中島が前進し、開始早々から押し出しに成功。DATEに転落1。またすぐに中島が押し出すもこれは有効。DATEは突進を捕まえてのヒザ蹴り、右のパンチから腰投げで上を取り、頭部へパンチ。スタンドに戻ると今度は前進からもつれて中島が上になるが、DATEは下から中島の顔面にパンチを放っていく。ブレイク後、DATEが捕まえてヒザ蹴りを出すも中島が押し続けてDATEが2度目の転落。DATEがニールキックを放って寝た体勢になるが、労せずして上を取ったはずの中島が続行か戸惑っている内にDATEが蹴り出し、中島に転落1。残り時間が少なくなる中、中島がDATEのパンチにもめげず突進して転落、有効を取る。これで合わせて転落ポイント3となり、残り18秒で中島が合わせ一本勝利。中島はDATEの打撃で顔面をボコボコに腫らしながらの勝利だった。

 

■第2試合 種市純也VSクンタップ・チャロンチャイ

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本日の仇討ち1戦目は、巌流島で3連敗中のムエタイ代表クンタップが、連敗のきっかけとなった沖縄拳法空手への仇討ちをかけて菊野克紀の同門・種市純也と対峙。種市は入場時に沖縄拳法空手の型を披露。

1R、前に出る種市に対してクンタップは右ミドル。種市は蹴り足を掴んで寝かせる。ブレイク後、クンタップは右ハイから右のパンチをヒット。種市が前進すると際まで下がったクンタップは何と巴投げを狙う! しかしこれは惜しくも同体。クンタップの右ミドルを種市が取る展開が多く見られるが、逆にクンタップが上になってパウンドを放つ場面も。クンタップの右インローからの右ミドルを掴んだ種市はそのまま押し出し、クンタップに転落1。クンタップは右ストレート2発からヒザ蹴りとつないで、種市がヒザをつくと上からパンチを連打するが、これが後頭部に入り、クンタップに減点1が宣せられる。その後もクンタップのミドルを種市が掴むが、クンタップはそこから右ストレートを打ち、そのまま転落し同体。終盤に種市がパンチで押し出し、クンタップは2度目の転落。再び右ミドルを掴まれたクンタップが右ストレートを打ったところでラウンド終了。

2R、やはり先に出るのは種市。クンタップの左ミドルから組み合い、もつれて倒れるとクンタップはマウントに。逃げようとする種市をバックマウントで追うも大きなダメージは与えられずブレイク。種市は打撃を合わせ始め、クンタップの右ミドルに左ストレートという展開が2回。クンタップはヒザ蹴りから種市の首をフロントチョーク気味に取るも、そのまま押し出されてクンタップに転落1。逆に今度はクンタップが右ミドルから種市を落とし、種市に転落1。やや優勢になったクンタップは捕まえるとヒザ蹴りを連打。同体転落を挟み、右ミドルからパンチ連打、ヒザ蹴りと攻めたところで審判が試合を中断し、顔面負傷の種市にドクターチェックが入るが、再開。逆に種市は左ストレートを2発返す。

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3R、やはり前に出る種市に、クンタップは右ハイから右ミドルをヒット。種市は「来い来い」と挑発ポーズをしつつパンチで応戦すると、激しい打ち合いに。場内は一気にヒートアップしたが、2R途中から優勢だったクンタップが押し切ると、種市が転落。種市のダメージを見た主審が試合をストップし、クンタップが一本勝ち。クンタップは連敗脱出し、沖縄拳法空手への仇討ちに成功した。

 

■第3試合 原翔大VS般若HASIMOTO

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前大会で初登場し、“陰キャラ王子”として人気を得た原。北井智大に勝利し「キックボクサーは喧嘩には強くない」と言い放ったことで、同じキックボクサーとして仇討ちに乗り出したのが、初参戦の般若HASIMOTOだ。試合前からSNSで火花を散らした両者がいよいよ闘技場で対峙する。

1R、般若のローに原は前蹴り。さらに道着の首元を掴んでヒザ蹴りを連打。般若はワンツーからボディを返す。原は組んで投げるも体勢が崩れ、般若が上に。スタンドに戻ると原の右ストレートがヒット。さらにタックルからテイクダウンするが、般若は下から抱え込んで追撃を許さない。その後、何度か同様の展開となり、スタンドで原がバックブローを見せたのと同時にラウンド終了。

2R、前に出てボディを放つ般若に対し、原は組んでテイクダウン。さらに前蹴りから首投げで寝かせるが、般若は体勢を入れ替えて上に。寝技でも双方パウンドにまで持ち込めない展開が続く中、中盤には上下入れ替わる中で原がマウントになりパウンドを連打。時間切れでスタンドに戻ると、般若はなおもパンチで出るが、原はこれをかわしてタックルからテイクダウン。終盤には原がパンチからヒザ蹴りを叩き込む。

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3Rも原がタックルからテイクダウンするが、般若はしっかりと抱え込んで展開させず。この試合最初の転落が同体となった後、原の右ハイがヒット。般若も原のパンチをかわして逆にパンチを入れる場面もあるものの、体格でも勝る原にたびたびテイクダウンを許してしまう。後半には原がスーパーマンパンチ、バックブローを見せて試合は終了。審判三者の支持を得た原が勝利し、般若を返り討ちにした。

 

■第4試合 シビサイ頌真VS楠ジャイロ

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ヘビー級の超新星として注目を集める倉本流武術のシビサイが、元ボクシングヘビー級東洋太平洋2位にして、前J-NETWORKヘビー級王者・楠ジャイロを迎え撃つ。楠は前回、無差別戦で小見川道大に敗れており連敗中。生き残りを懸ける意味で「巌流島」そのものへの仇討ちを期しての一戦となった。

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1R、楠がローを放つとシビサイは「効いてない」とアピール。突進する楠を見事な腰投げで一回転させると、そのままパウンドを連打。抵抗できない楠に主審が試合をストップ。超新星シビサイがわずか41秒で一本勝ちし、楠の仇討ちを斬って落とした。

 

■第5試合 近藤有己VS後藤龍治

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90年代以前からの格闘技ファンなら感涙ものの一戦が、巌流島で実現した。パンクラス生え抜きでPRIDEや戦極でも活躍、団体を代表する存在でもある近藤有己と、シュートボクシングやMAキックなど多くのリングで実績を残しK-1 MAX日本代表決定トーナメントで魔裟斗に敗れて3位という結果も残している後藤龍治の激突だ。

1R、初代タイガーマスクのようなステップから右ミドルを放っていく後藤。近藤はガードを上げ、ローやジャブを打ちながらプレッシャーをかけていく。ローの打ち合いから後藤の右ミドルを掴んだ近藤が左右のパンチを当て、組んで押し出すがこれは同体に。近藤のローに後藤はミドルを合わせる。中盤にも近藤が組みに行くが、これも同体に。ステップワークで距離を取ろうとする後藤を近藤が追う展開となり、近藤の左ストレートがヒットしたところでラウンド終了。

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2Rもローの応酬からスタート。近藤は距離を詰めると左右ストレート、左ミドル。パンチ、ローで応戦する後藤にインロー、接近すると右フック、距離を取ると前蹴りと波状攻撃を仕掛けていき、徐々に攻勢を取っていく。終盤には後藤の蹴り足を取ってそのまま押し出し、後藤に転落1。終盤、後藤は組んでのヒザを返していく。

3R、パンチで打開を図る後藤に、近藤は左ミドルを連発。さらに前蹴り、左ストレートをヒットし、そこからコンビネーションを叩き込んでいく。後藤もパンチを返し、終盤には打ち合いとなるが、その攻防の中でバランスを崩した後藤を押し出し、後藤に転落1。判定は3ー0で、近藤が勝利。戦前、「レジェンドと呼ばれたくない」と語っていた近藤が要所で打撃戦を制し、その存在感を示した。

 

■第6試合 マーカス・ヴィニシアスVSミケーレ・ベルギネリ

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昨年10月大会に続いて登場の“喧嘩フットボール代表”ミケーレ。前回、カポエイラのマーカス・レロ・アウレリオを下して注目を浴びたが、弟の仇討ちに兄のマーカス・ヴィニシアスが名乗りを上げた。前回大会で初参戦し、実力者の鈴木信達を鮮やかな1R KOで仕留めたヴィニシアスは弟の仇を討ってカポエイラの威信を取り戻すことができるか。ある意味、今大会で最も正統的な「仇討ち」の一戦となった。

1R、パンチで前進するミケーレに組んでテイクダウンしたヴィニシアスはマウントに。パウンドを1発入れたところで自ら立ち上がったヴィニシアスは、ミケーレに「来いよ」とスタンド勝負をアピール。立ち上がったミケーレがパンチに行くと、ヴィニシアスは押し出し。ミケーレに転落1。前進するミケーレにヴィニシアスはカポエイラのフットワークを使って対応していたが、追うミケーレの右ストレートがヒット。なおも後退したヴィニシアスはバランスを崩して転落。ヴィニシアスに転落1でイーブンに。その後ヴィニシアスは前進を繰り返し、転落1を奪うとさらに有効も取り、ミケーレを追い詰める。やや疲れの見えるミケーレに右ハイをヒットさせたヴィニシアスは道着を掴んでヒザを連打するとミケーレはたまらずうずくまり、そこにパウンドを連打したところで主審が試合をストップ。見事、ヴィニシアスが弟の仇討ちに成功した。

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試合後、ミケーレは「それほど効いてはいなかった。ちょっとストップが早かった」と不満を漏らしたが、ヴィニシアスは「弟の試合で研究されているのは分かったので、カポエイラの伝統的な動きではなく、いろいろな動きを織り交ぜる練習をしていた。やりづらくはあったが、それが勝因だったと思う。カポエイラには全ての動きが含まれていて、それが水のように流れる。カポエイラこそが究極だ」と誇らしげに語った。

 

■第7試合 ロッキー川村VS関根“シュレック”秀樹

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今大会でも最も注目を集めた異色対決。パンクラス王者で、“ロッキー”に変身後はプロレスのリングを含む様々な舞台で活躍している川村と、全てが規格外のシュレック。展開の読めない闘いだ。入場から、まるで闘技場がフィラデルフィアになったかのような佇まいのロッキーには場内から声援が集まる。なお、この試合は寝技30秒の特別ルールで行われた。

1R、フットワークを使うロッキーにシュレックが突進するも、ロッキーはかわす。ロッキーはテーピングが巻かれたシュレックのヒザにローからパンチ。シュレックはパンチに負けず接近すると道着の前エリを掴み、引き倒すように寝かせる。ブレイクになると足をかけて浴びせ倒し、バックからパンチ。ロッキーは掴まれないように距離を取ろうとするが、シュレックはしゃにむに前進して前エリや合わせの部分を掴むと投げてテイクダウンし、サイドから鉄槌気味のパウンドを連打。ロッキーは立ち上がるも再び寝かされ、マウントからバックに行くとボディに強烈なヒザを入れる。ブレイクになったところでラウンド終了。

2R、シュレックのパワーを身をもって味わったロッキーはフットワークで距離を取り、ローでヒットアンドアウェイを図るが、それでもシュレックは前進して合わせを掴む。ロッキーはその体勢のままパンチを入れて抵抗するが、シュレックは引き倒して寝かせ、引きずるように移動しパウンド。シュレックの掴みにロッキーがパンチで抵抗する展開が何度か見られるも、最終的にシュレックは背負い投げで寝かせ、サイドから抱えるようにしてパウンド。終盤、スタンドでロッキーは前蹴り。シュレックは蹴り足を掴むが、ロッキーがヒザ蹴りを入れたところでラウンド終了。

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3Rになるとシュレックが先にタックルを仕掛けるが、ロッキーは切って逆にパウンド。もう一度シュレックはタックルに行くが、ロッキーは切って寝かせる。2Rまでの攻勢でシュレックに疲れが見える。それでもシュレックは右フックを振り、突進するがロッキーはかわす。パンチで出たロッキーは体勢を崩したシュレックを場外に落とし、この試合初めての転落をゲット。シュレックが掴みに来るとロッキーはヒザを入れ、逆転勝利の可能性に客席は大沸き。ロッキーはさらにヒザ蹴り、パンチと攻めるが、シュレックは最後の力で掴みに行くと引き倒し、ここで試合終了。

判定はラウンドごとなら確実に1、2を取ったシュレックだが、巌流島では全体の流れを見てのジャッジ。終盤に追い詰めたロッキーは自信満々に手を挙げるが、1人目はシュレックに1票。2人目はロッキーに入ったが、3人目はシュレック。2Rまでの攻勢が評価され、シュレックが激闘を制した。

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試合後のロッキーは「俺が弱かっただけだぜ」とコメント。シュレックのパウンドは「列車にキスされたみたいだったぜ」とその威力に驚いていた。終盤の攻勢については「でも、アイツの目は最後まで死んでなかったぜ」とシュレックを評価。

一方のシュレックは、6月にヒザを負傷して手術し、ほとんどぶっつけ本番のような状態で試合に臨んだことを告白。「踏ん張りもきかないので、1Rに決められなかったら勝てないと思っていました。でも、柔術の先生がセコンドについてくれたし、煽りVでも“警察最強”と言われていて、警察時代の知り合いもたくさん応援に来てくれていたので、その中で負けることはできませんでした」と、気力の勝利であったことを吐露。ロッキーについては「どれだけパウンドを受けても、目が死んでなかったのは彼の方」とこちらも評価。なおシビサイ頌真がこの日の試合後コメントでシュレックとの対戦を希望していたが、「素晴らしい選手ですが、対戦は時期尚早。お互いにもっと上に行って、注目される状況でやりたいですね。まずは日本人がジミー・アンブリッツを倒して、日本最強と言われるようにならないと」とコメントした。

 

■第8試合 菊野克紀VSマーカス・レロ・アウレリオ

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今大会のメインイベントも、“ミスター巌流島”菊野が登場。カポエイラの動きを最大限に生かしたファイトで注目を集めるレロとの対戦となった。レロは前日計量で何と94.3kg。通常は80kg前後で闘っているが、無差別級契約であることを生かし、ヘビー級の身体を作り上げてきた。これまでレロに全敗の日本人勢の仇討ちを期して臨む菊野との体重差は17kg。前回に続き2戦連続で体重差を克服しなければならなくなった菊野は、果たして仇討ちに成功できるのか?

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1R、いつものように摺り足で前進する菊野。レロは最初からカポエイラのスピンキックを連発して牽制するが、レロがさらに突進してくると菊野はキワで巴投げを繰り出し、レロを転落させる。レロは前蹴りを放つが、距離を詰めた菊野はパンチからの押し出しでレロに転落2。戻ったレロはカポエイラ式のスピンキックを繰り出すが、倒れこむと起き上がれない。ヒザを痛がって苦しんでおり、その様子を見た主審が試合をストップ。菊野が一本勝ちで仇討ちに成功した。

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試合後、TV解説席にいた小見川道大がマイクを持って闘技場に。「勝利に勇気をもらいました。素晴らしい闘いでした。今回のテーマは仇討ちということで、次、僕と闘ってください」と対戦要求。これに応えた菊野は「大好きな小見川先輩と、また最高にいい試合をしたいと思います」と即座に受諾。場内は大いに沸いた。菊野はその後、「今回も試合をするのは怖かった。カポエイラと闘うなんて、まずあり得ないと思います。でも僕は闘うことで子供たちに勇気を見せたい。背中を見せたい。今日は自分の子供も会場に連れてきました。皆さんもぜひ次はお子さんを連れてきてください。格闘技は確かにバイオレンスですが、だからこそ伝えられるものがある。この巌流島の素晴らしさをもっと広められるように、もっと多くの人たちに勇気を見せられるように頑張ります!」と熱いマイクで締めくくった。

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試合後、菊野はインタビュースペースで「試合中は一切、レロの顔を見なかったんです。顔を見るとプレッシャーで前に出られなくなる。山城先生からも『躊躇するな』と言われていて、間合いや的確に当てることを第一に闘いました。だから自爆させることができたんだと思います」とコメント。

菊野の仇討ち成功で幕を閉じた今回の大会は、小見川の対戦要求でまた新たなドラマを生むことになった。両者の対戦は、この日正式発表された次回大会、2018年1月3日、同所で実現する可能性が高い。今度は小見川にとっての仇討ちとなる。また今大会で仇討ちに成功した選手、返り討ちに遭った選手は、新たなテーマを見つけることだろう。返り討ちされても、諦めずに再び仇討ちの機会が巡ってくるのを待つ者もいることだろう。今回提示された「仇討ち」というテーマは今後、巌流島の大きなキーワードになってきそうだ。その意味で、今回は巌流島の歴史の中でも重要な大会となった。

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全て終了して会場の外に出ると、すでに風は収まり、雨の予報もどこかに行ってしまっていた。菊野をはじめ、仇討ちに成功した者たちの晴れ晴れとした思いが、嵐を吹き飛ばしてしまったかのようだった。