GANRYUJIMA BLOG巌流島ブログ

最後の金メダル~オリンピックと日本人

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8月29日(月)のブロマガ………お題「日本人とオリンピック」

文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

 

203連勝15年間無敗の吉田沙保里が銀メダルに終わり泣き続けた。パンツ一丁で怒りまくったモンゴルのコーチなんか、巌流島の暴走・星風を思い浮かべるのが当ブロマガ欄を読んで下さる皆さまの習性かもしれない。また、レバノンの柔道選手は反則負けに激高したが、1時間後畳に戻って「礼」をして武道を守った。リオ五輪からファイト業界が学ぶことは何か? そちらの掘り下げは週刊ファイト本誌を購入していただくとして、今回のお題は「オリンピックと日本人」である。

オリンピックほど、日本人を観察するには絶好の教材もない。まず国内中継が異常に日本人選手中心なことや、吉田沙保里が良い例だが、負けたら「申し訳ない」のオンパレード! 日本を背負い過ぎなのも他国との比較では極めて異例なのを象徴している。筆者は合計17年、主にニューヨークで生活してきて、たまたま現在東京に住んでいる異邦人だ。現地で人種のるつぼと一緒に暮らしてきたタイプになる。外から日本を眺める習慣がついてしまうと、日本人の思い込みが世界から見たら奇異なことが多々ある。

恐らく日本人は、「わが国ほど言論が自由で、なんにせよ賛成も反対意見にも、異質の考察にもアクセス出来ている」と勘違いしている国民もない。ブランド志向とも重なるがNHKを見て、朝日新聞を読んでいたら普通なのか? ジャンル問わず権威の大手媒体が●●だと論説してるから、それが正しいのか?

サムネ

業界人なら「コイツは総合向き、彼はプロレス転向いけそう」とか、どうしてもスカウト目線で見てしまうから、日本選手ばかりの国内中継だと公平にどうだったのかがわからなくなる。金メダルが外人だと勝利者インタビューはカット。勝とうが負けようが日本人選手のコメントしか紹介されない。とにかくNHKが自分には合わない。腹が立ってきて、音声だけ音楽に変えてしまう。期間途中からは、なるべく鈴華ゆう子with和楽器バンドをテーマ曲に採用したテレビ東京かFNNに変えて、仕事に関係ある競技なら結局は勝手知ったる米NBC中継をネットで見た。「お住まいの地域では見れません」との建前表示になるが、やり方を知っていれば難しくない。そうでもしないと、全体像がわからないからだ。

MiyuYamamoto

史上最多のメダル数に浮かれる日本だが、これは単一民族国家だからこそ。わかりやすい格闘技の例だと、山本美憂が五輪目指してカナダの市民権を狙ったが、叶わなかったのでRIZIN参戦になったのが記憶に新しい。マラソンの猫ひろしはカンボジア代表として139位、完走している。アメリカなんか、もっと世界中から人材を集めてきた。道理でダントツに1位のハズだ。

英語サイトで五輪を追いかけると、日本では一行も出てこない話題がいかに多いことか。英国ウェールズなんか、自治意識が強いから、人数で割ったメダル獲得数だと(比較的小柄な)ウェールズ人最強なんだそうだ。その計算式には、英国代表だけでなく、恰好はアメリカ枠だがウェールズ出身も全部含まれてのランキングらしい。山本美憂が出てれば違ったかもにせよ、日本にはこういうメダル計算の発想はない。

NBC中継は米国選手を実況で追うにせよ、なんせ多民族国家である。金メダルが外国籍だからと勝者インタビューに出さなかったりしたら、抗議の嵐になってしまうから比較的公平なのだ。また、それぞれの選手の生き様ストーリーをうまく紹介するから、よりドラマが感動に繋がる番組構成が素晴らしい。卓球が良い例だが、日本語実況では中国人選手なんか単なるヒールとしてしか紹介されないお約束なのか。ここに日本人とオリンピックは、グローバル・スタンダードからは特殊である土壌がある。

プロレス者なら、芸術点のある競技に関心が向くものだ。シンクロ女子は2000年のシドニー五輪がKARATEをテーマにしたのでわざわざ待機して見たら、フロリダ産パワーメタルKamelotの合成曲が日本デュオ組テクニカル・ルーティーンに採用されていた。冬季五輪で羽生結弦がゲーリー・ムアーを使って完璧に舞って以来、隠れメタル大国ブラジルなのであちこちの会場でシンフォニック・メタル系が採用されたことをご存じだろうか。ところがNHKの実況は「おぉ、速い曲です」って、お前らアホか! 芸術点を採用する競技はなにを選んだかとか、そのアーティストについて紹介するべきである。リオはサンバという頭の古いNHKの実況には激怒した。音楽だけではない、ブラジルは柔術というのも無視されまくった現実がある。

MIKIKO

SeeYouInTokyo2020

誰が0.01秒速かったとかの競技には興味のない音楽ファン、あるいはエンタメ志向組なら五輪の関心は、開会式と閉会式のショーかも知れない。北京オリンピック、閉会式に呼ばれたのはジミー・ペイジで、次がロンドンという強烈な印象を残した。そして4年前の閉会式はTHE WHOがトリを飾っている。

リオ五輪閉会式の総合演出はMIKIKO先生、音楽の中田ヤスタカと、拡張現実ARの真鍋大度は広島出身Perfumeのステージでお馴染み。8分間の尺で先端テクノロジーを駆使した東京をアピールした。エンディングは”SEE YOU IN TOKYO”の文字に富士山、そして紅月-アカツキ-である。隠されたメッセージに気付かれた方は少なくない。これはBABYMETALなのだ。若い日本の鼓動を伝える次世代を象徴していた。吉田沙保里は銀に終わったが、日本の誇るエンタメ界のトップクリエイターたちは最後に金を穫ったのだ。

 

▼週刊ファイト8月25日号吉田沙保里(銀)巌流島G1裏検証キラーカン渕正信NOSAWA元子曙

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