GANRYUJIMA BLOG巌流島ブログ

今までの大会で一番面白かった「公開検証Final」。特にモヨの作戦は見事だった!

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8月10日(水)のブロマガ………お題「7.31巌流島・有明大会の感想」

文◎安西伸一(フリーライター)

文◎安西伸一(フリーライター)

 

巌流島の最後の公開検証が終わった。これまで4大会見てきた中で正直、一番面白かった。「まあ、昔馴染みの谷川がかかわってるイベントだから、応援してやらなきゃな」という程度で見始めた巌流島の第1回大会は、僕の中では響くものは小さかった。「面白かった」と言ってる人もいたけど、顔を覗き込んでみたいぐらいだった。本気で、これが面白いと思っているのか。だとしたら僕は世界で、本当に本当に面白い格闘技イベントをたくさん見てきたことになる。この程度で面白いなんて、口が裂けても言えない。

でも、2回、3回と試合の事例が増えていくことで、試合の質がだんだん上がっていき、巌流島というルールで競い合う方法が、選手も見る方もわかりかけてきている気がする。

完全にわかってしまうと、それはそれで面白さは行き詰ってしまうのだが、いまが過渡期で、もしかしたら巌流島は一番面白い時期に入りかけているのかもしれない。

例えば海鵬は、前回出場の時の敗退の経験を踏まえ、作戦を持って勝負に臨んだはずなのに、バレーボール出身のガブリエルが、海鵬の押し出しを軽やかにかわして、海鵬の突進は空転。相撲の土俵の中で、ここまで逃げる相手はいなかったのだろう。そうだ、巌流島には、組んで闘うことを美徳とする精神はないのだ。ガブリエルの作戦は見事だった。

そして、巌流島ルールとは全く関係ないのだが、猪木vsアリ実現40年を機に行われた、田村潔司とエルヴィス・モヨの一騎打ちには、考えさせられることが多かった。そもそも個人的には、猪木vsアリ戦をまるで神棚に祭り上げるような風潮には反発していたので、猪木vsアリ戦のルールを検証する意味がどこにあるのか、さっぱりわからなかったのだが、試合が始まってみると、田村には策がないのか!? と思えるほど自分の闘いが田村にできていなかったので、びっくりした。

どうも、モヨが田村の想定より動いてこなかったので、田村としてはあてがはずれたようなのだ。モヨは大きな体で田村の前に立ちはだかり、ほとんどステップワークを使わず、動かず、常にパンチを出せる状態でありながら、省エネスタイルを貫いている。

こういう緊迫した闘いになると、先に動いた方にスキができかねない。なにも策を練らず田村が試合に出てくるはずもないので、ここまでお手上げ状態だったのは、相手の攻撃に対してカウンターで決める何か、相手の攻撃に合わせて攻め込む何かを、考えていたのだとしか思えない。

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モヨはMMAでも8戦して6勝のキャリアがあり、アリと同じボクサーだという見方はできないが、モヨの闘いぶりは見事だった。おそらくモヨの相手がヒクソン・グレイシーだったら、動かないモヨにちょっかいを出し、パンチのラッシュをかけさせるか、相手をムダに動かせてスキを作り、すかさず胴タックルにいって密着。自分の片足を相手の片足にかけて、ゆっくり倒していたような気がする。(もっとも寝技に時間制限があるルールだったら、ヒクソンが出るはずもないが。)

でもモヨ側としたら、組みつかれるとしたら、倒されるとしたら、どういう事例があるのか。そういうことは想定済みだったのだろう。相手に組みつかれない位置にいること。そしてパンチの防御を専門に練習していない相手には、プロボクサーのパンチは絶対に当たるので、自信をもっていくこと。チャンスが来るまでは決して深追いはしないこと。闘っている時、モヨの心は、この3つで占められていたのではないか。

また、大きなボクシンググローブで殴ってくるパンチを、細い素手でガードするのは大変だ。モヨは拳を痛めることなく、グローブをはめた手で脳が揺れるパンチを打ってきた。

1R最後に田村からダウンを奪ったパンチは、左で打つと見せかけたモーションをほぼ同時に見せての右ストレートで、田村は後方に大きく吹っとんでいた。この一撃は相当きいたはずだが、それでも田村は立ち上がった。それ以後ラウンドは進み、結果は田村のレフェリーストップ負けだったが、試合は5Rまでおよんだ。

もっと田村は何かできるはずだと思っていた。でもこの試合を見る限り、相手となるプロボクサーの方が体格が大きく、さらにつかまるまいと慎重で、その上MMAの技術をある程度知っているとなると、ヘビー級のプロボクシング経験者は相当手ごわいと言わざるをえない。

だけどローキックなし、下からのタックルなし、寝技制限あり、という、ボクシング側に配慮したルールだったのだ。これが解禁されたら…。この制限をボクシング側が望む限り、ボクシング側が最初から白旗を挙げているようにしか、ぼくには思えないのだ。