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武道リスペクトとは何か? アリ猪木40周年「天使になった田村潔司」

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文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

 

マット界の歴史は常に革新的なプロモーションに対し、保守的なスタンスを取り続けてきた。既得権が壊されるのは怖いことだ。巌流島の斬新な和風の異種格闘技戦に旧来のファンは拒否反応を示すが、新たな世代の台頭によりやがてそれが一つのジャンルとして形成されていくものである。巌流島は『道場マッチ』大会含めて全部を見てきたが、記者の注目は誰が勝ったとかではなく、お客さんの反響だ。世界標準のMMAルールに固執する頑固な格闘技マニアの冷ややかな視線に悔しい思いをしてきたが、7・31有明コロシアムは想定以上に集客があったと自分は感じたし、重要なのはお客さんがおおむね満足して帰路についたことに他ならない。

未知数だからこそ巌流島は面白い。これに乗らずして、すでに40億ドルでフェティータ兄弟が売り抜けたUFCに象徴される”権威”を崇めても、新たな潮流を見逃してしまう。競技性追求のあまり薬物検査を外部機関USADAにゆだねて、ブロック・レスナーがマーク・ハントに勝利した7・9『UFC 200』の結果はノーコンテストになるらしい。しかし、陽性反応が出た抜き打ち検査は6月28日なのに、試合は行われている。もう一人のメインイベントだった元・絶対王者ジョン・ジョーンズの失格騒動で揺れた『UFC 200』なのに、主催者の数々の疑惑を追及し出したらキリがない。

サムネ

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注目のアリ猪木40周年記念試合。がんじがらめルール伝説をガチンコ競技でなぞったらどうなるか? レスラーがタックル禁止、ミドルとハイキックはOKだけどローキックもダメとなると、全力で殴って構わないボクサーのパンチがどうしても当たってしまう。田村は毎回ダウンで10カウントが数えられる巌流島では異色の光景に。最後はダウンを重ねて5R32秒、うずくまってしまった。

事前の煽りビデオでは当時下っ端だった藤原喜明が登場。「アリキックの練習は2,3日しかやってない」の取り繕い台詞がしらじらしい。週刊ファイトの井上譲二記者がすっぱ抜いた通り、2ヶ月前の姫路大会から猪木はアリキックの練習を始めていた。やはりアリ側が猪木の攻撃として許したから当たったのであって、田村の寝転がってのアリキックは一発も当たらなかった。猪木は15Rで合計64発当てたのにだ。

文化人プロレスファンの恥ずかしい内容のアリ猪木検証本から別冊宝島や専門誌編集のくだらない便乗本、UFC記者の書いた大笑いの英語の長編駄作以下、プロレスファンの99.99%と全く異なる0.01%の少数意見を記者は一貫して繰り返してきたが、やはり真実は御覧の通りだった。総合格闘技でも「猪木アリ状態」はありうる展開ではあるものの、アリキックが奇麗に命中したことなど数えるほどしかない。アリ猪木の暗黒の舞踏会から40年、「世紀の一戦」の歴史的意義は不滅だがパンドラの箱を開けてしまった以上、コールドケースが40年後に蒸し返される時が来た。

ケツ決めプロレスとガチンコ競技MMAの区別も理解もなかった1976年、新間寿営業本部長(当時)は「バックドロップやドロップキック、卍固めが使えたら・・・」と、今の時代からすると失笑もののコメントを残している。すったもんだの挙句に合意したのは、お互いが協力して遂行するプロレス展開にしないこと。前哨戦のゴリラ・モンスーン戦でアリが受けたエアプレン・スピンのようなプロレス技は一切なしという誓約と、両英雄の名誉を守るケツだけであり、文章にした最終ルールなど実際はなかった。ボクシング記者の追求や野毛道場前での張り込みもあり、モンスーン戦のようなリハーサルも出来ない。地上波放送での「八百長なのか、真剣勝負なのか」のズバリの質問に「真剣勝負です!」と答えた手前、アリはひたすらキックを受け続けた。それしかなかったからだ。

“がんじがらめ”だったのは、本当はどっちだったのか? 「アリが天使だった」ということだ。そして今回、このルールを受けて惨敗した田村潔司が天使になるという予想だにしなかった最後の真実の扉が開かれる。つまり、田村は再び「世紀の凡戦」にすることも出来たのに、ガードをかいくぐって命中するボクサーのパンチを受け続けた。アントニオ猪木を継ぐプロレスラーとして、未知への挑戦を体感すべく田村は何度も立ち上がった。なんという壮絶な叙事詩の帰結であろうか。事実は小説より奇なりと言われるが、はかま姿のレフェリーがTKOを告げてからもしばらくずっと横たわっていた田村様は神々しかった。

余韻のインパクト絶大の公開検証だった。体重差を問題視する向きもあったが、チャンピオン経験者なら同じ階級でも結果は変わらない。念のため断言しておく。

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スポンサー王・菊野克則メイン秒殺勝利!

メインイベント開始前、菊野克紀に賭けられた大相撲のような賞金スポンサーの行列には誰もがビックリだ。試合は沖縄拳法の菊野が、わずか4秒で元ムエタイ王者を秒殺。メインの重責を果たしている。暴走王・星風が負けてしまったり、ミャンマー・ラウェイ王者で知名度のあるトゥントゥンミンも、ルールが違うとはいえ黒星になるなど、主催者の期待を裏切る結果もまた巌流島の醍醐味なのだろう。当ブロマガ欄にて、「今度は和楽器バンドが見たい」と記したが、各局アーティストが異なりNHKは安室奈美恵も、テレビ東京系リオ五輪中継テーマソングに和楽器バンドが採用されている。少数意見がある日突然オモテの世界に出てきた例かも知れない。音楽ネタを続けるなら、BABYMETALと巌流島は旧来のファンには踏み絵になっている共通項がある。鋼鉄神ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォード(64)がBABYMETALと奇跡のコラボを成就させてもなお、ゼッタイに認めようとしない頑固一徹の自称マニア層がイチバンやっかいだ。引き続き新日本プロレス木谷高明会長もスポンサー協力してくれた7・31巌流島。ブシロード会長も「マニアがジャンルを滅ぼす」と警告していたのを思い出す。なにも考えずに有明コロシアムに集ったお客さんは大いに楽しんでいた。それが全てである。

あくまで十人十色の趣味の世界であり、好き嫌いは承知のこと。なにも改宗を迫ってはいない。しかし、メタル界の象徴天皇であるロブ・ハルフォードの生前退位が噂される今、王位継承の儀式によって音楽専門誌として地球上で最大の発行部数を誇る“権威”のBURRN!が聖魔剣を突き刺され、存在の意義すら問われた現実の抹消は不可能だ。食わず嫌いや偏見があってはならない。新しい異種格闘技・巌流島は、「格闘技の原点」とも神格化されてきたアリ猪木の踏み絵をも飲み込んだ。日本が、いや世界のマット界は新章に突入したのである。

海鵬に勝ったコンゴのバレーボール選手ガブリエル、負けたけどカルチョ・ストーリコ(格闘フットボール)幻想を爆発させたイタリアのミッシェル・ベルギネリと、新たなキャラも駒が揃ってきた巌流島。日本発の格闘技は、もっと注目されてしかるべきだろう。そのベルギネリ、両腕の刺青は“Respect others” “Respect yourself”だった。武道とは他人を敬うことから始まる。色んな意見があって構わないが、すべてをまずリスペクトすべきなのだ。

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