いざ、リアル・グラップラー刃牙の世界へ。菊野、小見川が選んだのは超ヘビー級の実力者たちだった
お題………5・6巌流島・舞浜大会、ここに注目!
世界中から集めた猛者たちをオファーするも、彼らの答は「もっと強いやつとやりたい」であった
今週、5.6巌流島・舞浜アンフィシアター大会のカードが発表された。全7試合とコンパクトながら、期待の若手から経験豊富な実力者まで揃っていて、無駄なく実に巧みに配置されたカードだなと思う。谷川貞治氏のマッチメイキングはK-1やPRIDEを経て、何気にいま円熟期に入っているのかもしれない。
そんな谷川さんから2月下旬に連絡が入った。「菊野くんが無差別級の試合をしたがってるんだよねぇ〜。誰か、いいのいないかなぁ?」。
僕は思いつくまま、往年のヘビー級格闘家の名前を挙げていった。すると谷川さんは「いやぁ、めちゃくちゃ体重差があるうえに強い格闘家じゃさすがに勝てないよ。それじゃ危ないしさ」と言う。
選手の安全はできるかぎり担保しなければいけない。谷川さんからのリクエストは、“大きくて迫力があるけど格闘技経験の少ないやつ”だった。
そこで世界中のプロモーターとコンタクトを取り、巌流島の無差別級の舞台に映える猛者を探した。そこで僕がピックアップし、谷川さんも大いに気に入ったのが、以下のミュータントのような3人の怪物であった。
まずはギリシャのストロングマン・コンテスト王者。試合経験はないが、キックボクシングやMMAの練習は積んでおり、人間をなぎ倒すようなパンチ、キックを放つ。
そして“イランのハルク”の異名を持つ謎の巨人。ネットでは世界中で話題になっているちょっとした有名人だ。重量挙げやボディビルをやっていて格闘技経験はなし。その実力は良くも悪くも未知数。
3人目は、ブラジルのシュートボクセ秘蔵モンスター。試合経験はMMA一戦のみだが、ヴァンダレイ・シウバやアンドレ・ジダらと一緒に練習してきたというシュートボクセの超“大型”新人だ。
いずれも巌流島の無差別級マッチでメインをはるのにふさわしいインパクト絶大なスーパーヘビー級の男たちである。
しかし、我々が自信満々でオファーしたこの3人に対して、菊野選手はその“グラップラー刃牙的世界観”には大いに興味を示したものの、結果的に対戦相手には選ばなかった。いずれも見た目のインパクトはあるが、格闘技界では素人。その素人に勝つことに、もうひとつ意味を見出だせないというのだ。
谷川さんが担保したかった「格闘技経験の少なさ」。それこそが菊野選手にとっては受け入れがたい点だというのである。グラップラー刃牙的漫画の世界でありながら、かつ同時に格闘家としてもちゃんと強い選手とやりたい、というのが菊野選手の要望だった。
そこで谷川さんは改めて経験豊富なヘビー級格闘家たちを提示。そうして選ばれたのがジミー・アンブリッツだ。140kgと菊野選手の倍ある屈強な肉体を誇り、無差別級の相手として迫力十分。そのうえ、米MMA団体の元ヘビー級王者という確かな実績も併せ持つ。
菊野選手とほぼ同じタイミングで無差別級への挑戦を表明していた小見川選手にも、格闘技経験の少ない大型選手との対戦を提案したが、こちらもまた「弱い相手とはやりたくない」と、キックボクシングのヘビー級王者であるジャイロ楠選手を選択した。ジャイロ選手は、ボクシング経験もあり、同じヘビー級ファイターでも恐れる危険なハードパンチャーである。
体重差が倍ある大男であれば、その時点で“弱い”ということはなく、むしろ危険な相手だと思うのだが…… 武道家の考えることはある意味、常軌を逸している。北米を中心とするMMAから格闘技キャリアをスタートした選手には、決して理解できない発想だろう。そういえば米国の格闘技ファンが、ツイッターでこの試合を「Crazy matchup」と表現していた。まさにクレイジーな闘いである。
“無差別級”という格闘技ならではの、いや、武道ならではの概念が、「武道エンターテインメント」を標榜する巌流島の舞台ではどんな意味を持つのか。過去の格闘技界のいわゆる“モンスター路線”が、巌流島という世界観ではどんな化学反応を起こし、どんな形態へと変わるのか。
正直、見るのが怖い部分もあるが、巌流島の武道家たちの生き様をしっかりとこの目に焼きつけたい。今回の巌流島も絶対に見逃せない壮大な“公開検証”になる。
追伸。個人的には、このたび紹介した“ミュータント3兄弟”の勇姿もまた、いずれ巌流島で見られるようにと、わりと本気で願っているのである(笑)
5・6巌流島の大会情報はコチラ⇒
『WAY OF THE SAMURAI 2017 in MAIHAMA』