BLOMAGA巌流島ブロマガ

「レロが菊野に負けたのは兄貴のせい?」 魅力溢れるカポエイラ兄貴の試合後インタビュー

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

お題………大好評! 9・2巌流島ADAUCHIの総括と裏側

 

文◎高崎計三(フリーライター)
 

実は縁あって、9月2日の舞浜大会でオフィシャルの大会レポートを担当させていただいた。その原稿を送って、すっかり大役を果たしたつもりでいたら、今度はこのブロマガへの寄稿をご依頼いただいた。ありがたい限りである。んで何を書こうかといろいろ考えたが、試合については前述のレポートで書き尽くしてしまった感があるので、バックステージで印象に残ったこと(そして他の誰も触れないようなこと)を書いておこうと思う。

“カポエイラ兄貴”(今思いつきでつけた)マーカス・ヴィニシアス選手の試合後のコメントのことだ。

0913サムネ

ヴィニシアス兄貴は最後にインタビュースペースに現れたこともあって、20分以上しゃべりまくった。通訳さんが時折「そろそろ訳させて」と中断を挟まなければいけないほど、一つの質問に対して次から次へと言葉を繰り出した。ただ長いのではなく非常に理路整然としており、しかもところどころに「おっ!」と思わせるような表現を差し挟む。彼のカポエイラ観、MMA観がそこから垣間見えた。そのコメントを、順を追って見てみよう。

まず、インタビュースペースに登場するとすぐ「ちょっと気持ち悪い」と言い出し、席を立って流しで少し戻した兄貴。「大丈夫?」と心配されると、こう説明した。

「たぶんアドレナリンのせいだ。俺は試合前、意識的に緊張することはないんだが、無意識の領域でどんどん自分を高めている。そうして試合に臨むんだが、それが終わるとこうして気持ち悪くなることがあるんだ」

今回対戦したミケーレ・ベルギネリは前回、彼の弟マーカス・レロ・アウレリオと闘って勝った選手。そのため兄のヴィニシアスが仇討ちに乗り出したわけだが、その試合から研究したのかと聞かれると……。

4

「過去に生きるのではなく、過去から学んだことをどうやって現在に生かすかが大事なんだ。だから俺は過去にはこだわらない。過去の意味とは、それをどうやって現在に生かすか、そこにしかない」

こんな感じで、いちいち回答がちょっと哲学的なのである。さらに、ミケーレは試合後、「レロと闘って、カポエイラのスタイルは分かったと思っていたが、ヴィニシアスの今日の闘い方はまたそれとは違っていた」と答えた。そこを問われると、「伝統的なカポエイラの動きをすると読まれてしまうことは分かっていた。だから違う動きを取り入れたが、正直満足はしていない。理想的な闘い方ではなかったが、巌流島の闘いで勝つためにはそうせざるを得なかった」と答えた上で……。

「Moves are like money. 動きというのはお金に似ている。大きな動きをすると、それだけ多くのエネルギーを失ってしまうんだ。カポエイラの動きは派手で見映えがいいが、エネルギーをムダに消費してしまう。そういう動きはあまり好きではなく、効果的な動きだけしたいというのが本音だ」

ほら、何かいちいちカッコいいでしょ? こういうことを流れるようにペラペラと話すもんだから、思わず聞き入ってしまうのだ。さらに続けて、兄貴は話題になったコナー・マクレガーvsフロイド・メイウェザーJrの一戦を引き合いに出した。

「コナーとフロイドの闘いを見たかい? 試合中、コナーはMMAをやり、フロイドはボクシングをやった。だがMMAにはボクシングが含まれている。カポエイラも同じだ。カポエイラにはパンチもキックもヒザも飛び技もある。将来的には、カポエイラはさらに進化して、最も完成されたアートフォーム(芸術形態)になっている。10年後、20年後にMMAを学ぶ時には、柔道、ボクシング、柔術、レスリングだけでなく、カポエイラの習得も必須になっていることだろう」

その後のフレーズがまたしびれるものだった。
「In Capoeira, moves flow like water. カポエイラにおいては、動きは水のように流れる」

兄貴のカポエイラ論はまだ止まらない。このフレーズも印象的だった。「Capoeira is not move. Capoeira is the way to think and way to move body. カポエイラはただの動作ではない。カポエイラは思考方法であり、身体の動かし方の技術である」

その後、「カポエイラはアートフォームである。こうして話しているのにも、カポエイラで身に付けた考え方が生かされているんだ」と締めくくった兄貴は、菊野克紀戦で負傷して負けた弟のことを聞かれると、「来日前の俺との練習でヒザを痛めていたんだ」と告白。どのように負傷したのかを聞かれた彼は「知りたい? じゃあこっちで」とイスから立ち上がり、質問した記者と向かい合って実演し始めた。

それによればレロが出したローを兄貴が返した際に蹴りがヒザに入ってしまったようなのだが、その動きがまた通常のキックボクシング等にはないもので「ほう」と思わされると同時に、「ん? 結局レロが負けたのはアナタのせい? 何でこんな自慢げに解説してんの?」との疑問も。まあそこもカポエイラの思考なのかもしれない。

ここまででもう30分近く。ようやく彼のコメントタイムが終わり、周辺にいた記者全員と握手を交わすと部屋を退出……しない。今度は立ったまま、自分がいかに日本に来たかったか、来られてうれしかったかを語り始め、あるきっかけで(プライベートのことだからハッキリとは書かないが、おそらく皆さんの想像通り)日本語が上達しているんだが、女性に教わると女性っぽい話し方になっちゃうから、それを指摘されて困ってるんだというような話を、また身振り手振りプラス声マネまで加えてしゃべることしゃべること。

勝ったうれしさもあったのだろうが、とにかく話し好きだったヴィニシアス兄貴。ここまで書いてきたように、たくさん話すだけでなくてその中身は深く、表現の仕方も興味深い。最後に実演した技術も加え、カポエイラの技術的、思想的な深さと幅広さをこれでもかと披露し、興味を持たせてくれたヴィニシアス兄貴。

会場を出るのは遅くなったが、自分の中で一気に大注目ファイターに躍り出たのだった。いやぁ、もっと根掘り葉掘り聞いてみたいぞ。

 

9・2巌流島のレポートはコチラ⇒
『ADAUCHI 2017 in MAIHAMA』