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【7.31巌流島レポート】菊野がムエタイ王者を4秒葬! 田村は“猪木アリ、40年目の検証”に挑み、5ラウンドKO負け

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7月31日(日)、東京・有明コロシアム。遅い梅雨明けのあとの、真夏の一日、有明で『巌流島WAY OF THE SAMURAI 公開検証FINAL』が行われた。過去3回大会の総決算。観衆は2595人と発表された。

闘技場を見ていると、前回大会では雲海の外側のヘリの内側に沿って置かれていた照明は、落ちてきた選手がケガをするので、今大会では設置されず、闘技場の下の部分に細長いライトが横に設置されているのに気がついた。ここなら選手がケガをすることはない。

大会に華を添える4人の巫女さんは、ラウンドガールも兼ねていたが、全く笑顔を見せず、表情を崩さない。これがクールで、大会の荘厳さ、神秘性を演出する役割を担っていた。

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まずはオープニングファイト第1試合(3分3R、80キロ契約)、巌流島ルール。

1R。降矢浩希(MMA)は佐藤竜平(ボクシング)と打ち合ったあと、すぐに首投げ一戦。そのまま首を離さず押さえ込んで、相手の顔やボディに重い左パンチの連打。主審の判断で試合は止まり、0分27秒、一方的なTKO勝ちを収めた。

ボクサーは、投げられて押さえ込まれて殴られたら、反撃の術はない。立って闘うのがボクシングだからだ。田村潔司と対戦するエルヴィス・モヨも、こうなるのか? 実際には、そうならなかったのだが……。

オープニングファイト第2試合(15分1本勝負)は、特別試合のジョイントロック・ルール。これは田村が考案したもので、道衣着用は任意。頭から落とす危険な投げ技は禁止。判定なしのグラップリングルールで、よほどひどい膠着でなければブレイクされないという、巌流島とは真逆のルールだ。

濱岸正幸(Uスタイル)と対戦したのは、プロレスではすでに引退している元バトラーツの澤宗紀。ランジェリー武藤という名でも活躍していた選手だ。

濱岸が倒し、サイドポジションで押さえ込むも、巧みに脱出。いったんは離れて両者立ち、中央で再開されたが、今度はすぐに濱岸がバックチョークの体勢に入り、そのまま横倒しになって絞め続け、2分6秒、澤がタップした。

開会式があり、いよいよ本戦スタート。試合は田村の試合を除いて3分3R、巌流島ルールだ。

カマキリ拳法VSクラブマガ王者!

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第1試合(75キロ契約)は瀬戸信介(蟷螂拳=とうろうけん)とナタレル・パリシ(クラブマガ/イスラエル)が対戦。クラブとは格闘、マガとは接近という意味だそうだ。つまり接近戦を制す護身術らしい。かたや瀬戸は今回は、近距離では蟷螂拳で、遠距離では通背拳(つうはいけん、テナガザル拳法)で闘うという。前回大会で岩倉豪(ブラジリアン柔術)に勝ったものの、実践型中国武術を表現できなかったからだ。

結論からいえば、この試合がこの日唯一の判定決着となった。結果は3-0で瀬戸の勝利。

1R、パリシの左右パンチが瀬戸に入ったが、続けて右ローを狙い、届かずクルッと1回転した直後、瀬戸が両手で突き押し、パリシは場外転落。さらにエプロンで組み合いになり、パリシが瀬戸の首を抱えようとした時、瀬戸が両手で押し出してパリシを場外転落させた。

2R、パンチを打ってきたパリシを瀬戸が両手で突き押し、パリシ転落。これがこのラウンドが始まって、わずか13秒のところだった。続いて組み合いになり、パリシは左ヒザ蹴りを入れるも、瀬戸が押して行き、同体転落。続いてパリシから組み合うも、瀬戸に押し出されて転落してしまった。ここで1分30秒が経過。このラウンド内であと1度押し出すか投げ落とせば、瀬戸の勝ちだったが、このあとパリシは左右のパンチ、右ローで応戦。特にパリシのパンチは的確で、瀬戸は表情には出さなかったものの、かなりダメージを受けていたはずだ。続いて同体転落のシーンが2度あったが、打撃のうまさはパリシが上だと言わざるを得ない。

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3R、パリシが右フックにきたところを瀬戸は押し出して、パリシが通算5度目の場外転落。でも巌流島のルールでは、1ラウンド内に3度の場外転落で負けとなるのがルールだ。パリシはまだ負けていない。だけどこうなると、ラウンド終了後の判定結果は明らかだった。

打撃で相手にダメージを負わせたのは、明らかにパリシだったが、KOを奪うまでには至らず、瀬戸は場外への落とし方がうまかった。クラブマガは接近格闘術だというが、それが試技のように鮮やかに通用するのは、自分より明らかに力の劣る相手だ。でもそれは、どんな格闘技にも言えること。実戦で簡単に技がかかって勝てる相手は、自分よりはるかに力が劣る相手だ。中国拳法にしても、蟷螂拳と通背拳を合わせた動きで相手に防御の姿勢を取らせたり、突き押しの場面で通背拳の効果は見えたものの、それでダウンを取ったりKOに至るシーンまでは見られなかった。自分の格闘技が自在に通じる瞬間があるとすれば、相手が疲れた時、相手にスキが生じた時だろう。いずれ巌流島の闘いもMMAの闘い方に近くなり、その中で巌流島ルールに通用する独自の技術体系が発見され、それが浸透していく気がする。でも、そうなると、どの試合も似てきてしまう。そうさせないためには、選手が背負ってくる各競技の個性を試合で活かせるルール作りが必要だろう。

巌流島のある山口県から、毛利元就の末裔が参戦!

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第2試合(73キロ契約)では毛利昭彦(MMA)と岩丸祐太郎(フルコンタクト空手、伝統空手)が対戦。

ボクサー同様、空手家もグラウンドで押さえ込まれたら、そこからの闘い方がないのだから、闘いようがない。そうなる前のスタンド状態の時、手技、足技の打撃で倒せればいいのだが。あるいはグラウンドでも上の体勢を取れれば、そこから殴れるので勝てるのだが。そもそも空手は、組みつけばブレイクになるので、そこからの技術体系を学ぶことはない。空手の選手が巌流島で闘うためには、組まれたあとどう闘うかをよく練習してくる必要がある。相手との力の差があれば、一撃で倒せるのだろうが…。そんな格闘家はそうそうプロの大会に出てはこない。

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1Rで岩丸がマウントを取るシーンもあったが、すぐに毛利に取り返されている。岩丸は首を抱えて、場外に向けて投げも放ったが、同体転落となった。空手以外の闘い方も岩丸が研究しているのがわかるが、2Rではグラウンド状態でパンチ連打を食らい、再び倒されマウントパンチ連打。寝技制限の残り時間はあと2秒だったが、主審が試合を止め、1分32秒、TKOによる毛利の一本勝ちとなった。

喧嘩フットボール初上陸! 対戦相手はモンゴル相撲王者!

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第3試合(83キロ契約)は、ミシェル・ベルギネリ(カルチョ・ストーリコ=喧嘩フットボール、イタリア)とボルドバートル・オンドラル(モンゴル相撲、モンゴル)が対戦。

なんといっても注目はベルギネリだ。カルチョ・ストーリコとはラグビーのような球技だが、1対1ならベアナックルで喧嘩をしていいという競技の選手で、ローマ時代の後期に発祥。元は外敵から自分の町を守るための実践訓練にもなっていたのだという。約10年前、初めて試合映像をNHKのBSで見た時には、この試合に出ている男達はどうかしている!と目をむいたものだが、まさかその選手を生で見る機会が訪れるとは! 身長は176センチ、年齢は43歳だという。かたやオンドラルは、第2回大会に続き2度目の参戦。

結果は1R2分24秒、オンドラルがTKOで一本勝ち。亀の体勢になったベルギネリの右わき腹に、右パンチを3発入れたところで、主審が試合を止めた。

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まず同体転落、ベルギネリが転落した後、オンドラルがベルギネリにハーフマウント。ベルギネリはオンドラルの右足にしがみついて起きあがろうとするが、その際、左わき腹に右パンチを3発食らい、それもダメージになったようだ。立って右パンチで反撃するが、オンドラルもパンチで反撃。ここでベルギネリは闘技場中央で突然、亀の体勢になり、両腕で自分の顔と頭を抱え込んた。ベルギネリとしては防御を固めて15秒待ち、「スタンドで再開後、反撃を狙うつもりだった」そうだが、これでは反撃の意志なし、戦意喪失と主審にとられても、いたしかたない。ベルギネリは「ルールを熟知していなかった」と試合後に語ったが、亀の体勢で殴られ続けて反撃しなければ、現代のMMAでもTKO負けに取られる。MMAのプロキャリアもあるのに、この言い分には首をかしげてしまう。現代のプロ格闘技の世界では、防御だけに徹して攻撃する意志を見せなければ、コーションがかかるし、途中でTKOを取られることもあるのが常識だからだ。ベルギネリは「パンチはきいていなかった」というが、何かダメージがなければ亀になるはずがない。それとも初めてモンゴル相撲の選手と組み合って、力負けしてスタミナをロスしたのだろうか。もっとカルチョ・ストーリコの選手の、闘う姿が見たかったが…。

大相撲 vs バレーボール! 異色の異種格闘技戦が実現!

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第4試合(フリーウェイト)は海鵬(大相撲・元小結)とガブリエル(バレーボール、コンゴ)の一騎打ち。

突き押しでバレーボールの選手に負けるはずがないと思っていた海鵬だが、ガブリエルは土俵際でカニのように横に逃げるステップがうまく、とらえきれない。これはバレーボールの動きなのだろうか。海鵬は177センチ、ガブリエルは193センチ。足が長く、素早いガブリエルは、海鵬がまっすぐ突進するとササササッと横に逃げていく。

試合開始直後、ガブリエルは左の跳びヒザ蹴りを敢行。体を横にした海鵬の道衣に右ヒザが当たったが、海鵬は突き押し。これが同体転落となり、右ほほが腫れた海鵬は直後に1度は転落を成功させたものの、右目尻の上を切ってドクターチェック。そのあとは、突き押ししようとして前のめりに倒れる海鵬に、ガブリエルがバックマウントを取る体勢となり、海鵬の右顔面に右パンチ5発、左パンチ2発。まだまだ決定的ダメージを与えるパンチには、ほど遠かったが、海鵬は明確に自分の腕で顔面を防御する動きも見せなかったので、主審は試合をストップ。1分25秒、TKOによるガブリエルの一本勝ちとなった。

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海鵬は「15秒我慢して、スタンドに戻って闘うつもりだった」と試合後に答えたが、これも、巌流島のジャッジの基準がここにあるのなら、仕方ない。押し出しのために体重増を心がけた海鵬は、スタミナに難があったか。逆にちょうどいい体重で闘えたガブリエルは、いいところだけを見せて勝てた。まさに快勝だった。

地上最も過激な格闘技ミャンマー・ラウェイの英雄、初参戦! 対戦相手は柔道ユースオリンピック代表

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第5試合(80キロ契約)は、トゥントゥンミン(ミャンマーラウェイ、ミャンマー)対ダリル・ロクク(コンゴ)。

ロククは8月7日、ディファ有明で行われる、ヒジ打ち有りの金網総合格闘技の大会『グラチャン』にルクク・ダリの名で出場。佐々木克義との対戦が決まっているが、コンゴから来日予定だったディディヤー・ニェンべが、ビザの関係で来日出来ず、大会前々日の深夜にボビー・オロゴンの推薦で急きょ出場が決まった選手だ。キックボクシングの選手と発表されたが、実は柔道の選手で、ユースオリンピックで2010年、ダリル・ロクク・ヌガンボモの名前で混合団体に出場、金メダルを獲得している。

1R、ロククはわずか12秒経過の時点で、押し出して転落を奪う。続いてトゥントゥンミンの左ローの蹴り足を掴んで倒し、がぶってパンチ。そのあと押し出されたが、同体転落となる。そしてトゥントゥンミンが押し出しを狙うが、ロククが相手の道衣を両手で掴み、振り回すようにして逆にトゥントゥンミンを場外に落とした。道衣を掴む握力、上腕の力の強さは、ジャケット格闘技の柔道を学んだ者ならではのものだろう。最後はエプロンでロククがサイドポジションに近い状態から、11発の顔面パンチを落とし、主審が試合をストップ。

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トゥントゥンミンは顔面をガードしようとしておらず、決着後もすぐに上体を起こしたので、おそらくこのパンチはさほどトゥントゥンミンにとってはきいていなかっただろう。でも、これが現代競技としての試合の“止めどころ”なのだから仕方がない。『パウンドでの主審のストップは、よほどのことがない限りなし。本人のタップアウトかセコンドのタオル投入以外では、試合は止めない』というルールになれば、また全然、決着は変わってくると思えるのだが。頭突き、ヒジ打ち有りで、グローブをせずバンテージを巻いた拳で殴り合う、“地球上で最も危険な打撃格闘技”が売りのミャンマーラウェイだったが、組み技格闘技出身のMMA選手に、巌流島ルールで完敗。初めてのルールで勝つのは、もちろん大変だが、相手にとっても初めてのルールだったので、負けたことに言い訳は出来ない。

猪木 VS アリ戦ルール、40年目の公開検証

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第6試合(3分5R、フリーウェイト)は、猪木vsアリ戦をベースにした特別ルール。田村潔司(U‐FILE CAMP)とエルヴィス・モヨ(ボクシング、ジンバブエ)が対戦した。

ローキックと下半身へのタックルは、ボクシング側の要望もあり、禁止された。ボクサーにとって、足はステップワークを取る重要な体の部位だが、組みつかれたり攻撃されることはない。つまり、下半身への攻撃を禁止してくれないと、ボクサーは自分の闘いが出来ないということだ。この要望をボクシング側が出した時点で、ボクシングだけでは組み技の選手には異種格闘技戦には勝てない、とボクシング側が自ら白旗を挙げたようなものである。しかも寝技は30秒限定で、ロープブレイクもある(実際には巌流島の闘技場にはロープはないのだが)。ボクサーは相手が攻撃手段に制限を設けてくれないと、異種格闘技戦では対等には闘えないのだ。

しかも田村は180センチ、84.2キロ。モヨは185センチ、115.6キロ。体重差は31.6キロもあった。猪木vsアリの2人がこんなに体重差があったなんて話は、聞いたことがない。そもそもグローブをはめての手技の打撃のみという、攻撃が限定されたボクサーにとって、異種格闘家と闘うことは不利このうえなく、異種格闘技戦をする意味がボクサーにとってあるのか、ボクサーはボクシングルール内で勝つこと以外、どんな意味があるのか、疑問だったのだが、モヨは総合格闘技でも8戦して6勝しているキャリアがあった。これではますます、モハメド・アリとは比較できない。猪木vsアリ戦がおこなわれた40年前は、プロボクサーがボクシング以外の格闘技を学ぶことなどない時代だったからだ。

1R、ヘビー級のモヨのパンチは重く、速く、素手の田村では、ボクシンググローブで打ち込まれるモヨのパンチから顔面・頭部を守りきれない。モヨはステップを使わず、堂々と間合いを計りながら田村の正面に対峙している。右パンチを右胸に食らい、身をかがめて苦しんだ田村は、ラウンド終了4秒前、右ストレートでダウン。10カウント以内に立てたが、こんなにキレイなストレートをもらっているようでは、田村の大ピンチは明白だった。

2R、田村は左ミドルを出していくが、モヨは右ヒジでブロック。田村が顔面をガードする両手の間から、モヨは簡単に左ジャブをヒットさせる。田村は右掌底を当てたが、当たっただけ。そのうち田村はダメージで、目が泳いでいるように見えた。これはオープンフィンガーグローブで殴られたダメージとは明らかに違う。ボクシンググローブ特有の、脳が揺れるパンチによるダメージだ。

3R、田村は低いタックルに行きかけたが、これは自身で反則と気づいたようで、相手に組みついてはいない。田村は右ボディブローを食らって、グラリ。ここでモヨはラッシュをかけなかったので、田村は救われた。でもモヨの優勢は続く。ダメージを蓄積させる田村。もう平直行レフェリーがTKOを取っておかしくない状況だったが、残り2秒のところで田村がガードの上から右フックを3発浴び、スタンディングダウン。田村は闘う意志を示し、試合は終わらなかったが、いよいよ田村は追い詰められた。

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4R、田村は座り込むようにしながら右ローキックを放つも届かない。田村は座った状態でにじり寄ったが、相手が蹴っても届かない距離にいるので、田村もむだに蹴ってはいかない。しゃがんだ状態からのローキックはルールで田村に許されており、猪木にも許されていたのだが、自然と猪木のように田村がしゃがんだ体勢になったのは驚いた。モヨもパウンドを狙って飛び込んでくることもしない。起き上った田村は再度、倒れこみながら右ローキックを放ったが、もはや力なく、モヨにダメージは感じられなかった。また腰をマットにつけたまま、にじりよる田村。モヨは左パンチを出して牽制。立ちあがる田村。田村の左ミドルをモヨは左のグローブでキャッチすると、右ストレート一閃。田村は右ヒザをつき、ダウンを取られる。この時点でモヨはピンピンしていた。レフェリーが試合を止めないなら、なぜ田村陣営のセコンドはタオルを投入しないのか。一方的な展開。ボクシンググローブで殴られ、揺れる脳のダメージの怖さ。しかも相手はヘビー級。ここは誰かの判断で試合が終わってもいい状況だった。それでも闘う田村。左ハイを入れたが力なく、モヨは楽々両手でキャッチし、逆に左フックで田村が倒れ込んだ。でもレフェリーはダウンを取らず、この日3度目の猪木vsアリ状態になった。そしてラウンド終了直前、ガードの上からパンチのラッシュを浴び、田村は足をもつれさせダウン。倒れ込みはしなかったものの、これがこの試合4度目のダウン。

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田村劣勢は明白のまま5Rとなり、パンチの圧力で倒れ込んだ田村に対し、モヨはついにスタンド状態から右パンチを5発打ちおろした。MMAで見られるような光景だ。離れたモヨ。レフェリーは田村に立つようにうながすが、田村はよつんばいの体勢になるのがやっと。0分32秒、ここでレフェリーは試合をストップし、TKOでモヨの勝利となった。

ゴングが鳴った直後、モヨがよつんばいの田村にサッとかけより、大丈夫かと声をかけていた。モヨも試合をしていて、相手のダメージを考えると怖いぐらいだったのだろう。田村は一度のテイクダウンも奪えず、組みついて攻勢になるシーンもなく、体重差のある相手にワンサイドゲームの状態のまま殴られ、試合後は病院に直行した。ほかの試合のストップは早めだったのに、なぜかこの試合だけはストップが遅かった。田村の状態が心配される。

ただ、あれから40年たった現在の格闘技界の状況の中で、猪木vsアリ戦からを検証するというという意味は、あったように思う。驚きや発見が、確かにあったからだ。

暴走大相撲・モンゴルカ士 VS 空道・世界王者!

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第7試合(フリーウエイト)は星風(大相撲・元十両、モンゴル)対エブゲニー・シャロマエフ(空道、ロシア)。

シャロマエフは、大道塾の北斗旗2014年世界大会で優勝している。星風は181センチ、119.4キロ。シャロマエフは188センチ、95.4キロ。体重差は24キロ。試合は1R、1分36秒で決着。主審のストップによるTKOでシャロマエフが勝った。

星風がまず転落を取ったが、続いて組み合いになるとシャロマエフが巧みにサイドマウントを取る。15秒ルールでブレイクとなり、続くスタンドでの組み合いでは、前に出てくる星風の勢いを利用して、なんと右手で相手の帯を掴んだシャロマエフが、振り回すように投げて星風を倒してしまう。これで転落しかけた星風だがエプロンにとどまる。ところがシャロマエフはすぐにマウントを取り、右パンチ2発、左パンチ5発、右パンチ2発。星風は両手で自分の顔面と頭部を防御していたが、無抵抗と主審に判断され、試合は止められた。

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試合後の星風に、あの位置だったらマウントを取られても場外に落ちて逃れることもできたのではと聞くと、「相撲出身者として、意地でも自分から土俵の外へは出られなかった。15秒耐えてスタンドからの再開を狙ったんだけど」とコメント。それでもTKO負けという裁定には納得していて、「勝ったら何も学べないけれど、負けたらそこから学ぶことができる」と、すがすがしい表情を見せた。星風は相手が、もっと蹴ってくると思っていたようで、蹴り足を掴んで倒すことを考えていたようだが、MMAの世界でも、蹴るということは片足で立つことになり、簡単にテイクダウンを許すことになりかねないので、軽々しく出してくる選手はいない。でもこれで、星風もワンランク成長することだろう。今回も暴走するのか注目されていた星風だが、びっくりするほどすがすがしく、好印象を残した。

菊野克紀、見参! 初のムエタイ挑戦!

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第8試合(70キロ契約)はメインイベント。菊野克紀(沖縄拳法空手)とクンタップ・チャロンチャイ(ムエタイ、タイ)の一騎打ち。試合は巌流島史上、最短タイムで決着。1R0分04秒。わずか4秒で試合は終わった。

試合開始直後、初参戦の菊野が小走りに闘技場の中央に進む。そして右足で強く前蹴り。やや遅れてクンタップの右ミドルが入ったが、クンタップが蹴り足を戻している間に右フックのモーションに入った菊野。クンタップはすぐに右パンチで反応したが、菊野は意識して自分の頭を左にスライドさせていて、クンタップのパンチは全く当たらなかった。菊野の右フックを左のテンプルに受けたクンタップは、前のめりに昏倒。主審はすぐに試合を止めた。

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最初から最後まで、どの試合も格闘技マニアなら話し込みたくなる見所があり、ユニークなキャリアを持つ選手達の登場が、大会を大いに盛り上げた。前回大会では評判を下げたアフリカ勢だったが、今大会では2人とも大活躍し、ボビー・オロゴンも大興奮。そして最後の菊野のワンパンチはラッキーパンチではなく、自分の頭をスライドさせての、防御と攻めが一体となった一撃だったのが素晴らしかった。個人的な感想になるが、これまでの4大会の中では一番面白く、きちんと検証を重ねながら巌流島は着実に、足場を固めて伸びてきたと感じている。

次回大会は10月末。体重別のトーナメントをスタートさせ、その次は大晦日か新年早々の開催を考えているそうだ。

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