「一回も場外に落ちたくないし、巴投げは食らいたくない!」 菊野克紀は攻撃力が倍増している!
約1年2ヶ月ぶりに再戦する菊野克紀 vs 小見川道大の巌流島エース対決! こんなにも武術的で、レベルの高い「空手vs柔道」の異種格闘技戦は未だかつて見たことがないが、再戦はどんな闘いになり、何が勝負の分かれ目となるのか? 攻撃力が倍増しているという、菊野克紀に聞いてみた。
テコンドーで勝つには、リラックスしていないといけない。それは武術的でもある
——テコンドーの東日本制覇、おめでとうございます。お忙しいそうですね。
菊野 少しだけキャパをオーバーしている感じありますね(笑)。でも楽しいですよ。自分の夢に、ヒーローに向かって近づいているのを感じますので。それは楽しいですね。なりたい自分に近づいていくのは。
——巌流島を制し、テコンドーを制し、これからはどこに向かっていくんでしょうか?
菊野 僕の目標は変わってないです。ヒーローというものに向かうための巌流島なんですよ。僕は「ヒーロー」って武道精神の究極だと思うんです。かっこいい生き方がヒーローだと思っているので。武道精神の発信が巌流島なので、この巌流島を盛り上げることが、僕のヒーローへの道なんです。巌流島を盛り上げるために、テコンドーに挑戦し、それがまたヒーローへ繋がる。そういう相乗効果ですね。
——今回は小見川道大選手と対戦します。前回の試合を振り返って、勝因は何でしたか?
菊野 勝因……。う~ん……。小見川先輩と闘う前に、トーナメントの二回戦で苦戦したことがよかったですかね。
——苦戦したことがよかった?
菊野 僕のほうが追い詰められていたと思うんですよ。闘いにおいてメンタルというのはすごく重要で、追い詰められることでより集中して臨めたのはあったかもしれないですね。
——綺麗に勝っていくよりむしろよかった?
菊野 結果論ではあるんですけど。あえて挙げるとすれば、そこですかね。
——小見川選手は前戦で「間合いを制された」と言っていました。そういう意識はありました?
菊野 僕はそこに集中しているので。結果的に小見川先輩のパンチを喰らわなかったのと、僕のパンチを当てられたというのは、間合いを制することができたのかなと思います。
——小見川選手は柔道家ですが、どういう間合いが必要なのでしょうか?
菊野 僕の間合いに入ったら倒すぞっていう間合いを発信できたのと、向こうがそれを感じ取ってくれたんだと思います。「やばい」っていう感覚が。僕はそれだけの鍛錬を積んでいますし、それだけの集中ができたので。実際に僕の間合いに入ったら倒せる空間を作れたんですよ。
——それは前から同じ闘い方で?
菊野 そうです。基本的にやっていることは一緒です。
——もし崩されるとしたら、どういうことが起きるんでしょう?
菊野 闘いって、呼吸を吸って吐いて、その瞬間にも僕の戦闘力は変わるんですよね。ちょっとビビったり、ちょっと何かに気を取られただけで、お互い瞬間的に戦闘力は変わるんです。いかに相手の弱いときに、自分の強いところを当てるかというので決着はつくんです。
——前回はそれがうまくできたわけですね。
菊野 うまく噛み合って、相手の弱いところを作れて、自分の強いところを当てられた。
——前回は小見川選手の巴投げを喰らってしまいましたけど、対策は考えていますか?
菊野 あれは先に僕が落とされたのでね。もう悔しいっていうレベルじゃないですよね。負けた気がするくらいのものであって。試合というルールの中では勝ったけど、実戦であれば僕があそこで死んでいたわけですよ。それはすごく悔しいですね。悔しいし、そのための対策をしなきゃいけないです。場外には一回も落ちたくない。小見川先輩は場外に落ちたことないですよね。僕は落ちたくないんですよ。場外には車が走っている、あるいは階段があるというイメージでやっているので、落ちたくないんですよね。あの時は前に行くという気持ちを利用されて投げられました。
——柔道家が着を持ったときのコントロールする力って並大抵のものじゃないですよね?
菊野 その中でも小見川先輩はとてつもないものがありますよね。世界のトップレベルの柔道家ですし、総合格闘技としてもトップレベルの方ですので。小見川先輩に対して、不用意に前に行くのは危険です。沖縄空手も本当はそうなんですよね。体重を乗せるんじゃなくて、揃えるんですよ。揃えたら、あんな風に巴投げで投げられちゃうことはないんです。ガーっと前に乗ってしまったから、小見川さんに投げられてしまったわけで。僕がきちんと沖縄空手をすれば、ああはならないです。次は投げられないです。
——テコンドー挑戦に関しては、試合をしてみて何か変わった部分ってありますか?
菊野 テコンドーはすごく攻撃が早くて、蹴るのと同時にそれを守らないといけない。なので体が緊張している状態だと間に合わないんです。蹴りも間に合わないし、受けも間に合わない。もっともっとリラックスして、心も体も自由な状態を作らないといけないですね。いつでも自由自在な状態じゃないと対応できない。それってまさに武術であって、すごく活かせていると感じます。あとポイントゲームは駆け引きがすごく重要なんです。喰らってでも倒すというよりは、ポイントを取ることに集中しているので、相手に打たせて打ち返すとか、間合いや戦略の部分がシビアなんですよね。そこもすごく勉強になります。あと圧倒的に蹴りの練習量が多いので、今までの突きに蹴りが入ることで、突きがより活き、そこからまた蹴りにいける。そうして進化を加えることで、また倍強くなれると思います。
——さらに強くなっている実感がある?
菊野 はい。明らかに強くなっています。
——改めて、小見川選手との試合はどんな闘いになるでしょうか?
菊野 相手は腹を決めてくるでしょうね。普通じゃ考えられないような心と体で来るでしょう。勝つための準備をしてくるでしょうし、その上をいかないといけない。新しい菊野克紀でいかないと。テコンドーをやっていることで、また新しい菊野克紀を見せられるでしょうし。そのうえで、めちゃくちゃ気持ちのいい試合をしたいですね。
——師匠の山城美智先生とは、これまで「神の手」といった秘策を作ってきましたが今回は?
菊野 山城先生と次の試合の戦略を練るのは、これからです。現時点で僕の材料はすごく増えているので、それをまた先生と擦り合わせて、小見川先輩対策を練るという状態ですね。
——言える範囲で、どういう試合になると思いますか?
菊野 いずれにせよ攻撃的なものになると思います。僕は攻撃するものが倍になっていますので、より攻撃的で予測不能なことができると思っています。
——2018年はどんな年にしたいですか?
菊野 毎回のことですけど、挑戦ですね。ずっと挑戦。今回も小見川さんという人への挑戦ですし。一回勝った相手への挑戦という部分で、ちょっと緩みそうな自分がいて、それが怖くて、そんな自分にまた挑戦しないといけないです。テコンドーでオリンピック挑戦というのもありますので、そこに繋がるいい状態を作りたいと思いますし。
——そういう意味では1月3日の小見川戦は本当に大事になりますね。
菊野 人生が変わっていくかは僕次第なのでね。自分次第でどうにでもなると思っているので。
——では、大会当日を楽しみに待っています!