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「カポエイラを体験してみて、初めてその凄さが分かった!」空手バカ一代のロマン第2章、菊野克紀はカポエイラにどう立ち向かうか?

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日本人全敗の外国人の絶対的エース、カポエイラ・マスター、マーカス・レロ・アウレリオ。カポエイラはダンスではなく、理にかなった護身術であり、実戦でも十分通用することを証明したレロに対し、菊野克紀はどう立ち向かうのか? 静の菊野に対して、動のレロ。菊野にとって、これも無差別級の闘いであり、スピードも回転力も圧力も相手が上。絶体絶命の闘いを迎えて、その心境を聞いてみた。

沖縄拳法空手の突きは当たれば倒れる! 種市が腹をくくれば勝機はある

 

————前回のジミー・アンブリッツ戦でスネを裂傷し、そのあと練習中に足の甲を骨折してしまったわけですけど、回復具合は?

菊野 もう9割くらい戻ってます。

————もう動くのは問題ない?

菊野 そうですね。普通にスパーリングはできるようになっています。でも蹴るのはまだ怖いので、様子を見ながらやってます。

————負傷してしまったときの心境は?

菊野 骨折に関しては、極度に疲れていたわけでもないし、何かミスをしたわけでもないし、気がついたら折れていたんですよね。でも何か意味があるケガなんだろうなとは思いました。その意味をずっと考えてます。

————疲労骨折ということではない?

菊野 その可能性もありますよね。

————少し休んだほうがいいというサインだったのかもしれないですよね。

菊野 はい。そういうことなのかもしれないし、色々なことを考え直せということなのかもしれないし。

————このケガが治ったら何をしようとかは考えた?

菊野 ひとついえるのは巌流島を盛り上げたいということですね。

————では9月の大会までには治ってくれという気持ちで。

菊野 う〜ん、もう治る治らないは関係ないです。これまでも必ずしも万全の状態で試合ができていたわけではないので、治る治らないに限らず試合はするんです。そして勝つこと、いや勝つというか、そこに向かっていく姿勢だけは変わらないです。

————今回の対戦相手は、外国人エース格であるカポエイラのマーカス・レロ・アウレリオということで、厳しい闘いになると思われます。

菊野 試合に関しては迷いはないです。レロという相手に対しては色々と考えることはありますけど。今日もカポエイラの先生と練習させてもらって、感じて、そのうえでどう闘うかっていうのを一生懸命考えてる段階です。山城先生(沖拳会)からもレロ対策をいただいて、それを必死に稽古しています。試合に対してはやるべきことをやっているので迷いはないです。

————やるべきことをやっていれば自ずと結果は出る?

菊野 出たらいいですね(笑)。結果はコントロールできないものなので、自分はやるべきことをやるだけです。

 

カポエイラマスター・レロの空を切り裂くような変則後ろ回し蹴り

カポエイラマスター・レロの空を切り裂くような変則後ろ回し蹴り

 

————カポエイラの印象というのは?

菊野 前は音楽に合わせて踊っているイメージだったんですけど、東京のカポエイラ教室に行ってみたら、そこの先生が明らかに強くてですね。日本の方なんですけど、見た瞬間にこの人は強いってわかる人で。闘う人であって、ダンスの人じゃないっていうのがすぐにわかったんです。格闘技というよりも護身術、武術というか。その先生は格闘家ではないし、好戦的ではないですけど、降りかかる火の粉はいつでも払うという覚悟を持っている人です。カポエイラでも弱いとバカにされるみたいで、やはり強くなくてはいけないという気持ちを持っている。カポエイラの踊りのような動きも、実はすごく理に適っているんですよね。カポエイラの頭を遠ざけて蹴る動きなんて、こっちからは攻撃のしようがないわけです。守るべき顔を遠ざけて、防御力の高いお尻のほうを敵に向けて攻めてくるわけで、これはカウンターの取りようがない。さらにそれを利用したテイクダウンも多用してくる。足を引っかけて倒したりして、テイクダウンもすごくうまい。その先生に会って、カポエイラの印象がすごく変わりましたね。あくまで闘うための術だなと知りました。

————カポエイラは足技の印象が強いが、それだけではないと。

菊野 色んなことをしてきますね。元々そこにあるのはやっぱり武術なんですよ。弱かったら死ぬんです。だから、そこにはたくさんの闘いの知恵が詰めこまれている。形が変わっていくものもあるけれど、ちゃんと残している人たちもいて、レロは闘うカポエイラ側の人ですよね。強いですよ。

————レロと対峙するには距離感が重要になりますよね?

菊野 そうですね。彼と蹴りやカポエイラの勝負をしても勝てるわけがないので、それ以外の勝負をしないといけないですよね。ケビン・ソウザにしてもジミー・アンブリッツにしても、自分よりはるかにリーチの長い選手たちとやってきたので、リーチ差の攻略法はだいぶ理解しています。あとはレロの回転系の蹴りやスピードっていうのは、僕がまだ体験してないものだと思うので、それに対する恐怖はあります。彼は僕の試合を見て、対策を練ってくるでしょうから、そこをまた超えなきゃいけないっていう。はっきりいって怖いですよね(苦笑)。

————構図としては菊野さんが“静”で、レロが“動”というイメージ。静が一瞬の隙を見つけて倒しにいくような。

菊野 ただ、静の中にも動があるんですよ。レロも動の中で集中して相手に合わせているはず。いわゆる見て、待っているだけの静は役に立たないんです。静に見えて、止まっていても心の中はワーって動いてる状態。逆に動の中でも心はすっと止まっている状態。そういう絶妙でハイレベルな好勝負になると思います。

————レロはカポエイラ一族の誇りを持っているので、カポエイラで勝ちたいと思っているでしょう。菊野さんはやはり沖縄拳法空手で勝ちたい?

菊野 僕が勝とうと思うと、自然と沖縄拳法空手になります。レロも同じで、強く闘おうと思えば、自然とカポエイラになるはず。そういうもの同士がぶつかるのは、すごく面白いですよね。僕がカポエイラを人生で初めて練習して、体験してみて、すごく面白いですし、そのカポエイラの本物の戦士と闘えるなんて、他の格闘家の方々は味わえないんですよ。これはねぇ、楽しいですよ(笑)。もうストII(ストリートファイターII)の世界ですよね。

———レロは父親がカポエイラの師匠で、母も兄も姉も妹もみんなカポエイラをやっている、まさにカポエイラ一族。カポエイラの威信をかけてこの闘いに臨むと思います。

菊野 その強さはありますよね。他のジャンルで活躍されてる方々も、子供の頃から始めているケースが多いですよね。自分も子供に空手を教えることがあるんですけど、日々ものすごく変化するんですよ。ものすごく伸びる。それをずっと続けていると化け物が生まれるんですよね。

————菊野さんはその化け物に対して沖縄拳法空手で立ち向かうと。

菊野 はい。楽しみにしていてください。

 

沖拳会の同期であり盟友の菊野克紀と種市純也

沖拳会の同期であり盟友の菊野克紀と種市純也

 

————今大会には沖拳会で同門の種市純也選手も参戦し、ムエタイのクンタップ・チャロンチャイ選手と対戦します。

菊野 クンタップ選手と沖拳会の試合をオファーをされて、僕と同期の種市ならいけると思い、本人に聞いたところ、悩んだ末にやると言ってくれました。正直、めちゃくちゃ厳しい闘いですよ。歴戦の猛者のクンタップ選手に対して、種市はプロデビュー戦ですからね。だけど彼の沖縄拳法空手の技術は高いものがありますし、体も強い。あとは腹を決めてやれば勝ち目はあるんじゃないかと思って彼を推薦しました。

————勝ち目はある?

菊野 我々沖拳会の突きは当たれば倒せるんですよ。それを当てるだけの闘いができるかどうか。極端な話が沖拳会の選手は武器を持っているようなものなので、あとはそれを当てるだけの心と技術を使えるかどうか。それを彼が腹を決めていけるかどうかですね。

————沖縄拳法空手の強さを証明する闘いになりますよね?

菊野 それを彼は今ものすごくプレッシャーに感じていると思います。でも彼はそのリスクを背負ってやると言ったし、山城先生も「やってこい!」と言ってくれました。行くほうも送り出すほうもすごい。彼が負けたとしても、それは恥じることではないので、仲間としていいメンタルで臨んでくれたらいいなと思ってます。

————では最後に菊野選手のレロ戦に向けた意気込みを。

菊野 「空手vsカポエイラ」を単純に楽しんでもらいたいです。きっと僕も相手のレロも怖いんですよね。背負ってるものもあるし、単純に怖い。それに覚悟を決めて向かっていく姿を見て、みなさんに勇気や元気をもらってほしいです。

 

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