カラコダ主張!「ボクサーに公平なルールは二つ! ローキックとタックルを禁止することだ!」
プロレスvsボクシング、二つの格闘技が闘う場合、「公平な異種格闘技戦ルールは何か?」。田村潔司と闘うボクサー、エルヴィス・モヨのトレーナーであるスティーブ・カラコダに話を聞いてみた。マイク・ベルナルドやヤン・ザ・ジャイアント・ノルキアを育て、日本の格闘技を熟知している名伯楽カラコダは、この一戦をどう考えているのだろうか?
————今回の田村潔司選手との異種格闘技戦について、お聞きいたします。
カラコダ まず初めに今回、巌流島の大会に出るのは、私が愛する日本でのイベント、しかもMr. タニカワがプロデュースするイベントだからだ。マイク(・ベルナルド)やヤン(・ザ・ジャイアント・ノルキア)、フランソワ(・ボタ)、息子ヴァージル(・カラコダ)と、本当に多くのアフリカの選手がお世話になったが、彼のプロモートするイベントは世界一面白いということは、世界中のプロモーターが評価していることだ。一体、どれほどの面白いマッチメイクを実現してくれたことか。また声をかけられ、彼と仕事ができることは、とても幸せなことだ。ヤンは「オレにも出番がくるかも?」と、はりきって今日も朝から6キロも走り出したよ(笑)。
————残念ながらノルキア選手の出番は今回、なさそうです(笑)。ところで、今回は異種格闘技戦という特別ルールで、プロレスラーとボクサーが闘います。スティーブさんは40年前の猪木vsアリ戦を見てますか?
カラコダ もちろん、南アフリカでも、あの偉大なボクサー、アリがプロレスラーと闘うということで大きな話題になったし、見ているよ。ただし、当時も今もルールはよく分からん。イノキは何が反則になって、ああいう戦い方をしたのか? そういう疑問は残っておる。全然、かみ合ってなかったじゃないか。
————-今回は基本的に、その猪木vsアリ戦のルールがベースになるそうですが、まだルールも決まっていません。ボクサー側として、「公平」に闘うなら、どんなルールを主張しますか?
カラコダ ちょっと待て。まず初めに言っておきたいのは、40年前のボクサーと今のボクサーは全く違う。40年前はK-1もなかったし、MMAもなかった。ムエタイも世界的に見れば、知っている人が少ないくらいだった。イノキも、アリも、どうやって闘っていいのか、わからない時代だっただろう。しかし、今のボクサーがボクシングしか知らないと思ったら、大間違い。情報的にMMAのような試合になったら、どういう闘いをしなきゃいけないかが誰でも頭にインプットされておる。しかも、MMAのような試合にチャレンジしたり、トレーニングをしているボクサーもたくさんいる。モヨはそんなボクサーの一人だ。彼には少ないがMMAの試合経験もある。だから、私はMMAの試合でもタムラには負けないと思っておるよ。タムラは経験はあるが、モヨの方が若いバリバリの現役だし、20キロも重いからな。タムラの年齢で、このような闘いにチャレンジするということにとても敬意を払うよ。そんなタムラに触発されて、ヤンも激しいスパーリングを始めたんだが………。
————-ノルキアの出番はありません!(笑)
カラコダ わっははは。そうか、彼のためにも、しばらくそのことを言うのはやめておこう。
————-モヨ選手は寝技にも対応できると。
カラコダ キミたちは、ボクサーは倒されたら終わり、と思っているかもしれないが、そんなファンは今回、驚くはずだ。アリの時代のボクサーと、今のボクサーの違いを目の当たりにすることになるだろう。
————-というと、ボクサーが不利なわけではないと。
カラコダ モヨはそんなヤワなボクサーじゃないことを忠告しておこう。ただ、一般論として言えるのは、ボクシングは相手にパンチしてKOするファイトだ。だから、そのボクサーの持ち味を生かすには、次の二つは要注意だ。一つはローキックを蹴られること。もう一つは低くタックルされることだ。この二つがある限り、ボクサーはボクサーの持ち味であるパンチがなかなか打てなくなる。だから、あえて言うとボクサー側の条件は二つ。「ローキック禁止」「タックル禁止」。この二つがあれば、ボクサーは思い切ってパンチを打つことができる。これで寝技がなければ完璧だが、まぁ、そこはあまり欲を言っても仕方ないし、アリのようにゴネたりはしないよ(笑)。
……………………ボクサーを殺すには、ローキックとタックルですか?
カラコダ 大抵のボクサーが主張するのはそこだろう。ただ、何度も言うようだが、今のボクサーはアリのように、全くローキックの避け方すら知らないファイターはいない。また、自分でも攻撃もできる。そういうトレーニングは積んでいくつもりだ。アリはイノキが寝ている時、足を捕まえようとしたり、子供のようなキックをしていただろ? あそこは踏みつけに行ったり、マウントをとって上からパンチするべきだ。モヨにはそれができる。
……………………アリは猪木さんの飛び蹴りを見て、立ってのあらゆるキックを禁止したようですが。
カラコダ その当時、アリはボクシング以外知らなかったから、怖かったんだろう。しかし、ボクシングはそもそも上半身を殴り合うスポーツだ。ローキック以外、上半身の攻撃は自分で防ぐべきだろう。それはイノキがかわいそうだな。
————-自信ありそうですね。うわぁ、なんか田村選手がヤバいことがよ〜く伝わってきました。
カラコダ アリはもちろん偉大なボクサーだが、今回のことでファンにいかにボクサーが進化しているかをお見せできるだろう。タムラがイノキと同じ戦法をとってきたら、彼は大きな後悔をすることになるだろう。