七カ国の戦士が勢揃い。いよいよ開戦! 奇跡か?ズンドコか?“公開検証”にすべての答えがある!
セネガル相撲普及に乗り出した安西伸一記者(元『格通』)が生セネガル戦士・ニャンと感動のご対面!
2月27日(金)午後2時より都内港区白金台の『八芳園』6階エタニティーで、『巌流島』の前日記者会見が行なわれた。
まず、松本天心・巌流島実行委員が、今回の「公開検証用ルール」を説明。今後は契約体重制を含めルールの改正もありうるとし、あくまで暫定的なルールであることが捕捉された。
高さ60センチの四角形の場に、直径8メートルの円形に俵(たわら)をしいた場所の中を試合場とし、試合場は「闘技場」と称される。読み上げられたルールは、すでにこのホームページでも公開されているとおり。
続いて、大会に出場する各選手が順に会見場の壇上に登場。対戦する選手のツーショット写真撮影が終わると、順に着席し、各選手がオファーを受けた理由、試合への意気込みを語った。
そして、巌流島実行委員会を代表し、旭道山和泰・大相撲代表が挨拶。
「皆さん、こんにちは。本当にお忙しい中、そして明日試合がある前日に、こんなにお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。主催者、そして大会実行委員会の代表として、旭道山と申します、今日、ホントにここで見ていると、久しぶりに血が踊るのがわかりました。
選手とは私とは言いたくないです。戦士としてとして闘う顔を見てると、気が充満してます。私も力士としてやってましたけど、武士、力士、“士”っていうのは本当に“志”を持った人間です。
巌流島っていうのは日本古来の、本当の伝統ある闘いです。それを引き継ぐためには選手としてじゃなくて、私は“戦人(いくさびと)”、闘う人間として、やってほしいと思います。
でも今日、思うことがありまして。やっぱり第1回目というのは、みんな何をやるんだろう、どういうことをやるんだろう、そしてみんな半信半疑で、こう遠くから見てるんだろうと思います。私も第1回、CSのフジテレビで番組やってるときに、まあ集まってくれ、なんかちょっとやろうかな、どうするんだろう、そういう感じで流れるみたいな感じの最初、雰囲気もありました。1時間目は。2時間目は、だんだん白熱してきて、新しいものを作るんだっていう意識が出てきました。3時間目や4時間目になると、俺たちは絶対これを立ち上げて成功させるんだと。
巌流島、いい名前です。そして世界に発信できる、日本初のルール。ホント、何が起こるかわかりません。リングのサイド、ロープもありませんし、私の思っていた、相撲の世界の土俵の形をしていますけど、あそこは4メートル50センチです。それを8メートルに広げてるから。こんなに広げていいのか。そして、ロープがありませんから、前に行くしかありません。闘うしかありません。ファイトが見れる。かといって、寝技でなんか長く膠着状態が起きる、そういう面白み、ないものはないです。
立ち技一発勝負、そして私も一番思ったのは、頭からぶちかましできる。ヘディングとか後頭部とかはありませんけど。何でもありというわけじゃないけど、品格、力量、そしてルールを守る。それがやっぱり戦士としてのルールだと思っています。その美学を今回受け継ぐ方が、初めて、戦士として立つと。
みんな、何をやるんだろう、どうなるんだろう。ワクワクしてるんだけど不安がある。いま横にいる平さん、ジャッジする側ですけど、審判でも、どうやってジャッジをしていいかわからない。何が起きるかわからない。このわからない、ハプニングが起きる、どうなるかわからないっていう、その大会を、第1回目を、あしたおこないます。
ですけど、1回目は、確かに、花火があがります。それを2回3回と継続するために、そして育てるためには、皆様のご尽力が必要です。やっぱり皆さんのひとりひとりの熱い情熱、そしてメディアの宣伝、そして戦士の本当のファイト。それの闘う姿を見て、やっぱり日本古来の美学、伝統、そして生きざま、そして闘い方、それを感じてほしいていうのが、巌流島ですんで。
皆さん、これから何が起きるかわかりませんけど、あしたはワクワクして。そして、それを望んで、最後まで大会しっかり見て。評価して。まあルールは暫定ですから。まだ変わります。私たち実行委員会が、ルールを改正したり、長い目で育てるためにも私は実行委員会の代表として皆さんにお願いしたいし、長い目で育てていただきたいと思います。戦士の応援、お願いします。今日はありがとうございました」
旭道山氏の挨拶の後は質疑応答が行われた。
まずはセネガル相撲のアブドゥーラ・ニャンに、「日本の相撲は見たことがあるか? その印象は? セネガル相撲と違う点は?」と質問。
ニャン「日本の相撲は何回もテレビで見たことがあります。テクニックはたぶん似ていると思うけど、まずマワシの形が違う。マワシが違えば色々違ってくる」
また質問で、「組み合う前にセネガル相撲のプロは、素手のパンチで殴り合っている。顔面パンチがある競技では、現在ボクシンググローブとともにオープンフィンガーグローブが世界基準になっているが、本当は今回も素手で殴れるルールで闘いたかったのか?」と問われたが…。
ニャン「セネガル相撲にはインパクト(顔面パンチあり)と、インパクトなしの、二つのカテゴリがありますが、両方経験してるので。今回は色々テクニックを使うために、毎日毎日努力してきました」(会見後、改めて「素手で顔面パンチが打てるルールで闘いたかったか」と聞いたが、「グローブをしなければならないなら、グローブをします」というのが、ウォルフ語の通訳からやっと聞き出した答えだった)
続いてミノワマンへは「今回の試合のテーマは?」と質問。
ミノワマン「今回はすべてが新しいことばかりですので。新しいスタートですので、テーマは“新鮮”です」
続けて「普段は裸体で格闘技をしているが、道着を着ると、道着をつかまれて体をコントロールされることになる。慣れない闘いで不利になるのでは?」と聞かれると、こう答えた。
ミノワマン「僕もつかみますので、僕にも有利な点があると思います。相手もつかむし、僕自身もつかめるっていう。お互いがつかめますんで、つかまえる方が不利ではなく、つかむ方……アレ?ン???(つかむ、つかまれるで頭が混乱するミノワマン) お互いにチャンスがある気がします。だから、道着を着てるからって(お互い着てるのだから)つかんだ方が有利っていうわけでもないと思います」
また、「いま登壇されている戦士たちは、非常に個性的な(お国柄や競技を反映した)コスチュームで出てこられたが、アメリカンフットボールの選手が普段の試合の恰好で出るわけにはいかないとして、普段通りのコスチュームで試合に挑むというルールは、考えられなかったのか?」と質問。
松本実行委員「異種格闘技戦的な発想だと思うんですけども、今後、実験的なルールで、自分のコスチューム、道着を着た試合を組んでみることは可能だと思います。ただ『巌流島』全体の競技としては、『巌流島』のオリジナルの統一した道着を、今回は着用してやってみようということになっております」
旭道山実行委員「補足ですけど。先ほど素手でのパンチの話が出ましたが、私は実は提案した人間です。私も素手でやってましたから。でも素手でやると、やるかやられるか、取るか取られるか。素手の試合になりますけど、取るか取られるかの試合になったときに、ワンデートーナメント、1回戦、2回戦、3回戦にあがったら、それを致命傷にしちゃいけない部分がありますので、そこの部分で。本当は私も『素手でやってください』って言ったんですけど、妥協した部分です。だから皆さんも今回、第1回ですけど、2回、3回というふうに続いていくものですので、そこを理解していただければうれしいと思います」
このあとはルールに関する質問。松本実行委員が回答。
質問で、「ダウンあるいは柔道の一本に相当する投げを受けた場合、ポイント減点される」ということだが、ではレスリングのソリ投げや飛行機投げ、スープレックス等ではどうなるのか、と聞かれ、「大きなムーブの中で(威力をもって)投げられれば、ポイントの対象となる」。
また、ラウンドごとに採点し、決着がつかなかった場合は3R終了した時点で、合計点数で勝敗が決まる。ドロー裁定の場合、1R延長され、最後はマストシステムが採用される。技などの明確な減点ポイントだけではドローも起こりうるが、3人のジャッジによる印象点もあるので、そこで決着をつけることはできる、というのが実行委員会側の考えだとわかった。
さらに、相手の技をかわして、さばき続けたり、俊敏に走って相手との距離をとり続けたりする戦士は、それが相手を疲れさせる作戦であったとしても消極的とみなされるのか、という点については、「攻防のポジションの状態だとレフェリーが判断すれば、それは消極性ではない。でも明らかに相手の攻撃を嫌がって逃げ回っていれば消極ポイントがつく。さばくだけではダメ。お互い攻撃をしろ、というルールになっているので」という回答だった。
さて、『巌流島』の前日会見を取材した。登壇してくる戦士は、ある者はその競技のコスチューム、ある者は民族衣装を身にまとい、実に国際色豊かだった。日本も含め、7カ国の戦士たちが集まった。
まずは各戦士たちのお国柄豊かな、各競技のコスチュームを、写真でぜひ堪能してほしい。とくにセネガル相撲。よくぞ、このコスチュームを日本に持って来てくれた! 素晴らしいぞ! セネガル相撲のYouTubeを見まくった者としては、出てきただけで、本場の太鼓(ウォルフ語の名称は「タマ」)を激しく叩く音が聞こえてくるようだった。
各選手のコメントでは、“実戦的ではなく、これは踊りだ”とも称されてしまうカポエイラのマーカス・レロ・アウレリオが、余裕の態度だったのに対し、ゆ〜っくり動く太極拳の山岸正史は、控え目な態度に見えたのが印象に残った。
しかしながらこのホームページでも公開されているが、山岸は総合格闘技の菊野克紀選手の推薦を受けている。関係者もスパーリングを見て、これは行ける!と思ってエントリーを果たしたわけだから、これは期待をせざるをえない。なのに、なぜこんなに控え目なのか!? 当日、激しくもユラリと闘う姿を見て、そのギャップに驚くことになるのかもしれない。
カポエイラに関しては、ぼくはブラジルで練習風景をみたことがあるが、若い指導者が、予想のつかない動きで蹴りを出しているのを見た。でも、それを相手に当ててみせてくれはしなかった。カポエイラのムーブはそもそも、互いが当たることなく、体を回転させていくもの。アウレリオがカポエイラ以外、どんな格闘技で鍛えているのかは、気になるところだ。
ルールに関しては、かなり練りこんで作られている印象。実によくできていた。穴がなかなか、見当たらない。
ぼくはUFCを第1回から61回まで現場で見続け、アメリカの他にもブラジル、カナダなどでノールールの試合を見てきた。オランダのキックボクシングや、タイでムエタイも見てきたし、国内でプロボクシングの取材もしてきたので、格闘技の中でどういう状況が危険なのか、ケガをするのか、死に至るのか、一般のかたよりはかなりくわしいと自負している。
重箱の隅をつつくような質問をしてみたが(ルールに関する質問は、すべてぼくだった)、明解な回答をいただいた。
ただ、どうしてもこだわりたいのは、素手か否か、という点。
ミャンマーの伝統的格闘技、ミャンマーラウェイでは、拳にサポーターを巻いた状態でグローブをせずに殴りあっている。日本の大相撲は、顔面パンチこそないが、巨漢が突っ張りで顔面をブッ叩いている。
現代社会に通用する“見栄え”という点で、顔面パンチありにするには、攻撃する側になんらかのものが拳をおおうことは必要なのだろう。顔面パンチありとして、素手か、オープンフィンガーグローブか、ボクシンググローブかを、各選手が選択できる、というルールも荒唐無稽だろうか。
セネガル相撲のプロでは、組み合う前に素手のパンチで殴り合っている。でもこれはパンチで倒すということではなく、あくまで優位に組み合うために出している打撃、という側面が強い。
ただ、旭道山実行委員が「素手でのパンチの話が出ましたが、私は実は提案した人間です」と発言したのには、本当に驚いた。素手での闘いを望んだ委員が一人でもいたことがわかって、『巌流島』には多様性のある実行委員が集まっていることを実感した。
さあ、一夜明ければ開戦だ!
リポート/安西伸一(元「格闘技通信」グレイシー担当)
<公式計量の結果>
マーカス・レロ・アウレリオ 85.7kg
アブドゥーラ・ニャン 94.2kg
星風 115.8kg
和久憲三 99.5kg
ミノワマン 85.5kg
ウーラーハン 111.4kg
ブライアン・ドゥウェス104.6kg
カーメン・ゲオルギエフ 102.2kg
森川修次 110kg
三浦康彰 88.5kg
渡辺一久 64.9kg
グゥオ・チェン 63.8kg
山岸正史 81.3kg
岩丸祐太郎 72.5kg
(—)
(—)
(ボクシング/日本)
(少林拳/中国)
(—)
(—)
(—)
(—)
(太極拳/日本)
(空手/日本)
(キック/オランダ)
(コンバット・サンボ/ブルガリア)
(プロレス/日本)
(散打/中国)
(相撲/モンゴル)
(アメリカンフットボール/日本)
(カポエイラ/ブラジル)
(セネガル相撲/セネガル)
(柔道/日本)
(空手/日本)