急遽開催の5.11舞浜は「これぞ巌流島」という内容に! 来場者だけが見た大会の模様を詳細レポート!
4月に急きょ開催が決定しながら、フタを開けてみればこれまで以上に巌流島らしい、バラエティに富んだ対戦カードが並んだ令和一発目の今大会。土曜午後の舞浜アンフィシアターには、昨年9月以来の開催となる巌流島ワールドを待ちわびていたという表情のファンが集った。
オープニングファイト 巌流島ルール3分3R
○加藤諒(1R1分10秒、フロントチョーク)野澤エディ×
大会オープニングを飾るのはキッズファイト。小5にして実戦カラテ黒帯、柔術全日本大会3連覇など輝かしい実績を持つ野澤エディと、小6で数々の空手大会に優勝する加藤諒の激突となった。
1R、野澤が前に出ると加藤は足払いでこかし、がぶりからフロントチョーク。これがガッチリと極まってレフェリーが試合をストップ。年長で体格にも勝る加藤が、短時間で勝負を決めた。
ガチ甲冑戦エキシビション
試合に先立ち、甲冑と槍・刀などの武器を実際に身につけ、16世紀・戦国時代の戦い方を実践・研究する「日本甲冑合戦之会」の皆さんによる演武が披露された。
横山雅始代表の解説のもと、「3vs3団体戦」「解説演武」「一騎打ち」で進行。「エキシビション」とは言いつつも、鎧武者たちの攻防はまさに「ガチ」。槍で叩き、刀で突き、組み伏せて短刀を突きつける様子には場内から歓声が起こった。
横山代表がたびたび強調していたのは、「槍は叩くもの、刀は突くもの」という点。通常、逆と認識されがちだが、当時の戦場では長い槍を使って遠間の相手を叩き、刀はより近い間合いで鎧のつなぎ目を刺すものとして使われたという。また、刀は同時に「叩き伏せるための鉄の棒」としても使用された。演武では、実戦の中でのそうした使用法のバリエーションが示された。
武者同士がさらに接近すると、腕を取って崩し、寝かせて上を取るなど、現在のMMAに近い攻防に。ここでは柔術の技術が生かされるが、最終的には相手を制圧した上で短刀を抜き、首を斬る、突くなどしてとどめを刺す。
最後に行われた一騎打ちでは、「槍vs槍」「刀vs刀」のシチュエーションで3組が2番ずつ、計6番の勝負が行われた。「槍vs槍」ではのど元を突いて何発も叩いて勝ち、槍の攻防から飛び込んで短刀で斬って勝ちという決着に。
「刀vs刀」の1組目は、戦国時代でも3割を占めていたという女性武者同士の激突。これまで引き分け続きということで、今回は短い脇差しを使っての対戦となった。1番目は脇差しが首に当たり、赤方の勝ち。2番目はのど元を斬りつけて黒方の勝ちと、今回も痛み分けに。
そして3組目、通常の長い刀同士の対戦は、1番目は双方が斬り込んで相討ちに。2番目は激しい攻防の中、短刀で首を刺した赤方の勝利で終わった。熱く、また興味深い演武を披露した「日本甲冑合戦之会」の皆さんには、場内から大きな拍手が送られた。
第1試合 巌流島ルール3分3R
○今野淳(2R1分5秒、TKO)大ももち×
※大ももちが負傷により続行不能に。
ジャッキー・チェンの映画で一躍有名になった「酔拳」の使い手が巌流島初登場。対するはいまだ謎に包まれた部分も多い「ニャンニャン拳法」の大ももち。入場式にも千鳥足で現れた酔拳の今野淳は、幻の秘拳で勝利するのか?
1R、開始早々に大ももちは前進し、ポーズを取って挑発。今野は闘技場の際まで下がって酒を飲む動作で期待を抱かせる。今野はタックルに行くが、大ももちは切り返してマウントを取り、パンチ。ブレイク後、今野は走って逃げる。武術では反則にはならないが、彼のしっかりした足取りには「酔っ払ってないよ!」というツッコミも。2分過ぎ、再び酒を飲む動作の今野に大ももちが突進するが、今野が切り返して大ももちが転落。今野も遅れて落ちたため、有効が取られた。
2R、今度は今野が突進。もろ差しからテイクダウンして上になるも、ブレイク。大ももちはパンチからヒザ蹴りを入れ、組むが今野は振り落として大ももちが転落。一度は闘技場に上がってきた大ももちだったが、足がつったとのことでうずくまってしまい、続行不可能に。今野の勝利となったが、酔拳の真髄は次回以降にお預けとなった。
第2試合 巌流島ルール3分3R
○小龍DATE(判定3-0)冨岡雅人×
今大会の開催発表と同時に話題を呼んだのが、“ボディガード”冨岡の初参戦。要人を危険から守るために身につけた格闘術は、闘技場でも威力を発揮するのか? 対戦相手となったのはインド王族武術を標榜するチームDATEの一員で、ブルース・リーを尊敬する小龍 DATE(ブルース・デイト)。異色すぎる対決の行方は?
1R、先に出たのは小龍。半身からの蹴りを上中下と打ち分ける。冨岡も蹴りで応戦するが、小龍は蹴り足を掴んで組むと際で突き落とし、冨岡が転落。その後は蹴りを繰り出す小龍、組みにいく冨岡という展開が続く。中盤には抱っこ状態になった冨岡を小龍が際まで運び、転落を狙う場面も。
2Rも、スイッチしながら蹴りを見せる小龍に冨岡が組みにいくという展開。しかし中盤にはパンチの交換もあり、小龍がヒザ連打を入れると冨岡は消耗した様子を見せる。終盤には冨岡のバックキックに合わせて組んだ小龍がまた冨岡を転落させ、左右のパンチも入れてゴング。
3R開始前、冨岡は右足を負傷し、ドクターチェック。これは問題なしとなったが、闘技場に上がった冨岡は息が上がっており、消耗は激しい様子。冨岡はカカト落としやパンチを見せるなどもしたが、最終ラウンドでも動きの落ちない小龍がテイクダウンするなど優位に進める中で試合終了。ジャッジは3名とも小龍を支持し、小龍の判定勝ちに終わった。
第3試合 巌流島ルール3分3R
○クンタップ・チャロンチャイ(3R2分7秒、一本)伊藤澄哉×
※転落3回
「益荒男」「飛車角」といった地下格闘技大会で17戦全勝15KOという実績を持つ“喧嘩師”伊藤澄哉が初参戦。“天才ムエタイ少女”伊藤紗弥の実兄でもある彼に対するのは、巌流島のレギュラーとして毎回、会場を沸かせるクンタップ・チャロンチャイ。地下格闘技王者とムエタイ王者、巌流島の闘技場で輝くのはどちらだ!?
1R、お互い中央に進み出ての攻防に。クンタップはローから左ミドルを入れ、伊藤もスイッチしながら左ミドル。伊藤がクンタップのミドルを掴んでミドルを返すと、クンタップはそれを掴むやそのまま押していき、伊藤を転落させる。クンタップが伊藤の蹴りをかわせば、伊藤はまたミドルを掴んだ状態で飛んできたパンチをよける。終盤には伊藤が大振りのフックを見せるが、これは当たらず。
2R、伊藤はまたミドルを掴むと右のパンチを当て、さらにロー。また、右ストレートやカウンターの右フックを当てる。そしてまたミドルを掴んで前進、クンタップを転落させる。さらにミドルを掴んで出るが際でグラウンドに。伊藤はそのまま押し込み、クンタップは2度目の転落。終盤には伊藤が右フックを当て、クンタップが尻餅をついた状態からしがみついてきたところを際まで運んで落とすも、これは同体に。
3R、伊藤が右のパンチから組んだところをクンタップは振り落とし、伊藤が転落。右ストレート、左フックを当てる伊藤に、クンタップは組んでヒザ蹴り、アッパーを当て、突き落として伊藤が2度目の転落。クンタップはさらにパンチ、ヒザから組むと振り回して転落させ、転落3回で勝利を掴んだ。
第4試合 巌流島ルール3分3R
○靖仁(1R2分7秒、一本)左禅丸
※パンチによるKO
日本拳法の使い手・左禅丸はトライアウトを経て、これが連続参戦の3大会目。しかしまだ勝ち星がなく、ここで初白星を挙げたいところ。対するは極真の流れを汲む高久空手の靖仁。日本拳法と空手の戦いは、激烈な打撃戦となるのか?
1R、左のローに対し、靖仁は強い右インローを返す。左が出ると靖仁は左フック。さらに左フックを当てると、左はダウン。靖仁は後ろから追撃し頭部にパンチを打ち下ろすが、左は何とか立ち上がる。靖仁は右ミドル。一度距離を取ると、靖仁は右ストレート、右ボディから右ストレート。これがアゴをきれいにとらえ、左は尻餅をつくようにダウン。レフェリーがすぐに試合を止め、靖仁の鮮烈な一本勝ちに終わった。
第5試合 巌流島ルール3分3R
○星風(1R2分25秒、一本)舞杞維沙耶×
※転落3回
豪快なぶちかましを武器に、旗揚げ当初から巌流島の名物選手となっている“暴走モンゴリアン力士”星風に対するは、“歌舞伎町最強ホスト”舞杞維沙耶(まき・いざや)! 舞杞は高校時代に県大会優勝などの実績を持つ柔道の猛者で、ホストたちによる格闘技イベント「宴」では20戦19勝の戦績を挙げている。最強ホストが星風の突進を止めるのか、それとも?
1R、星風はいきなり突進すると舞杞は倒れ、そのまま転落。星風はまた前進して組むが、受け止めた舞杞は投げを試みる。しかし星風は構わず寄り切り、舞杞は2度目の転落。一気に勝負を決めたい星風は緩急を付けて前進しぶちかますが、組んだ状態で倒れ、ブレイクに。
さらに組むと、舞杞が投げて上になり、マウントからパンチを打つが、時間切れでスタンドに。星風はなおも突進、際でヒザをついて押し込むが、舞杞に続いて落ちてしまい、同体に。なおも右パンチを放って組んだ星風は突き落としで舞杞を転落させ、3度目の転落で一本勝ちを収めた。
第6試合 巌流島特別ルール(寝技30秒あり)3分3R
○西浦ウィッキー聡生(2R0分25秒、TKO)鈴木琢仁×
※マウントパンチ連打でレフェリーがストップ
昨年9月の全日本武術選手権トーナメントでは決勝まで進出したが、奥田啓介の前に涙を呑んだウィッキー。当初、同じトーナメントの準決勝でやはり奥田に敗れた原翔大との対戦が予定されていたが、原の負傷欠場により、関根“シュレック”秀樹の推薦する柔術家・鈴木琢仁との対戦となった。ウィッキーの独特な打撃スタイルが優るか、鈴木の柔術が優るか!?
1R、鈴木は低い構えから、手を突いてのバレリーキックを繰り出して沸かせる。その後も出入りを生かしつつ、パンチから再度バレリーキック。ウィッキーはパンチから飛び込み転落を狙うが同体に。果敢にパンチを繰り出す鈴木に、ウィッキーはハイキックから右フック。
2R開始とともに、鈴木は声を出して気合いを入れる。しかしウィッキーは回り込んで右フックを一発! これで鈴木が倒れるとマウントを取り、パウンドを連打。レフェリーが試合をストップし、ウィッキーが鮮やかな勝利をもぎ取った。
第7試合 巌流島ルール3分3R
○ロッキー川村(判定3-0)チェ・ホンマン×
K-1で大活躍した韓国の大巨人チェ・ホンマンが巌流島初見参! 218cmの圧倒的な巨体で、韓国相撲・シルムで天下壮士となったときと同様、巌流島を制圧してしまうのか? そんなホンマンに対するのはロッキー川村。一昨年9月以来2度目の参戦となるが、ホンマンを「ロッキー3」で対峙したサンダーリップス(ハルク・ホーガンが演じた)に見立てて燃える。まさに異次元対決!
1R、細かく足を使いながら「ベストキッド」でおなじみ「鶴のポーズ」などを見せ挑発するロッキーに、ホンマンは吠えて見せる。ロッキーは捕まらないようにサークリングしながら、下から右のオーバーハンドをヒットさせる。ホンマンは時折ローを出しつつ、ロッキーを追う。
2R、まずロッキーが前進。ホンマンはジャブを出しながら前へ。ロッキーはオーバーハンド、ローからジャンプしての左をヒット。ホンマンは手を出しつつロッキーを追うが、なかなか追い詰めることができない。
3R開始にあたり、レフェリーが両者に「もっとアグレッシブに戦うように」と指導。ロッキーはまたも右フックをヒット。ホンマンはロッキーを追いながら、イラついたか声を上げる。なおもロッキーは足を使いながら左右フック、ローをヒット。終盤にもジャンピングしてのパンチ、右フック、左ボディを当てる。
試合が終了すると、セコンドのところに行ったホンマンは促されても闘技場に戻らず、不満げな様子でそのまま帰ってしまった。1人で判定結果を聞くことになったロッキーが3-0で判定勝利。ロッキーは「エイドリアーン!」と勝利の雄叫び。
試合後のロッキーは「ホンマンを海底2万マイルに沈めることはできなかったが、俺は頑張ったぜ!」とコメントした。ホンマンはノーコメントだったが、谷川プロデューサーによれば、試合後も怒りが収まらなかった様子。「エキシビションに判定を付けられてしまったという印象のようです」と語った。
第8試合 巌流島ルール3分3R
○鈴川真一(2R1分29秒、一本)シビサイ頌真×
※転落3回
ここまで負けなし4連勝で、巌流島のエースとしての地位を築きつつあるシビサイ頌真。かたや、大相撲で十両まで進み、IGFなどのリングでも数々の激闘を経験してきた鈴川真一も、昨年は2大会ともに出場し連勝中。巌流島エースの座を懸けた戦いが、今始まる!
1R、開始とともに前進した鈴木は組んでなお突進し、シビサイを落とす。パンチを出すシビサイを気にせず前進する鈴川だが、ここは同体に。鈴川が蹴りを出すとシビサイは蹴りで応戦するが、そこをとらえた鈴川はそのまま押し込み、シビサイを2度目の転落に追い込む。さらに出た鈴木はもつれたところからバックマウントの体勢になり、そこから落とそうとするが自分も落ち、有効となる。勝負を決めるべく出た鈴川にシビサイは投げを決め、場外転落を狙うが同体に。続いて投げを狙ったシビサイだが投げ損ないグラウンドに。シビサイが上を取り返すも、もつれて同体転落。
2R、シビサイはまたも前進してきた鈴川に飛びかかると、組んでヒザ蹴りを連打。しかし鈴川はそこから押し、シビサイを転落させる。もう一度寄り切って2度目の転落に追い込んだ鈴川は、パンチから投げに来たシビサイをうっちゃるようにして落とし、勝利を決めた。
過去の試合でも猛威を振るった鈴川の押しに対し、パンチと投げで対応しようとしたシビサイだったが、それをものともせずに押し切った鈴川が勝利を掴んだ。試合後、「想定以上でした」と鈴川の力とテクニックを評価したシビサイに対し、鈴川は「これしかやってきてないですから。今日は星風も勝ちましたが、相撲の押しのテクニックは皆さんの想像以上だと思いますよ」と自信を見せた。
令和一発目の巌流島は、鈴川が“エース対決”を制して幕を閉じた。谷川プロデューサーは「3週間という時間のない中での開催でしたが、終わってみれば“これぞ巌流島”という内容になったと思います。ダメな選手は一人もいなかった」と、満足げに総括。
特に評価していたのは鈴川と靖仁の2選手で、「打撃、投げなどではシビサイ選手のほうが上のはず。でも一つだけ勝っている要素を使って勝ったところが素晴らしいし、それができるのが巌流島。その点では靖仁選手も素晴らしかった。彼は会見などでの発言も深いし、これからも出てもらいたい」とした。
谷川プロデューサーによれば、次回大会は「夏にはやりたいですね。8月頃には」。その上で、「本当は毎週でもやりたいんですよね」と仰天アイデアを披露した。「酔拳vs空手とか、YouTubeなどで毎週1試合ずつ公開して、大きな大会につなげるような形もいいですよね。その上で海外の選手も呼んで、『世界武術王決定戦』ができれば」と、今後の展開に期待を持たせる発言を残した。