ブラックマンバ、ムゲンドーとお金の話
お題………9・2巌流島・舞浜大会の見所
9.2巌流島でインドの毒蛇ことブラックマンバが日本戦線復帰を果たす。ブラックマンバが日本で試合をするのは実に2008年以来。時の流れは早いものでほぼ10年ぶりだ。マンバ復帰の報を聞いた日本のファンからの反応も上々。日本人ファイターを苦しめてきた危険な毒蛇っぷりをまた見せてほしい。
私は巌流島の海外選手ブッキング担当として、これまで喧嘩サッカー、クラブマガ、カンフートーア、コシティなど世界中の未知の格闘家から、アンドレ・ジダ、ジミー・アンブリッツさんらレジェンド戦士、K-1・PRIDE後の時代にUFCで頭角を現したケビン・ソウザなど、様々な選手なブッキングしてきた。
「アンブリッツさんやマンバさんが巌流島に参戦したらどんな反応になるかなぁ」「ジダとか好きな人けっこういるよなぁ」「巌流島にUFCでバリバリやってたソウザが来たら驚くかなぁ」などと想像しながら仕事を進めるのは、ブッキング担当者の醍醐味だ。
最近でいうと、謎のムゲンドーキックボクシングからUFCデビューした武道家ガロア・ボファンド。「巌流島向きの選手が現れた!」というファン発信のネット上での騒ぎを目にした谷川プロデューサーがさっそく、「この選手おもしろい! ガロア・ボファンドを獲得せよ!」と私に指令をよこした。
獲得しろったってUFCとの契約があるだろうよ(苦笑)と思いながらも、もしかしたらUFCとは単発契約だったということもないとはいえない。ということですぐにボファンドにコンタクトを取ってみた。
結論からいうと、ボファンドはやはりUFCとの契約上の縛りがあり、巌流島には参戦できないとのことだった。ただ、いかにも日本の格闘技、カルチャーが大好きそうな彼だけに「巌流島は初めて知ったがすごく面白そう。機会があれば出てみたい」と非常に好感触な反応をいただいた。いずれぜひ巌流島で見てみたい選手だ。
現状、ボファンドは呼べないが、彼のマネージャーにムゲンドーキックボクシングから他の刺客を巌流島に送りこむようお願いしておいた。その回答は「何人か心当たりがある」というものだったので、期待しがら続報を待ちたい。
また、ボファンドのような伝統派的なマーシャルアーツ系の選手が、なんとなくで現代MMAに流れてしまわないよう、巌流島も手を打たねばと思う。世界中の武道家・武術家が「無理してMMAという競技に自らを妥協・拘束させなくとも、巌流島という理想の武闘の舞台があるんだ」と知ってもらえるよう、英語対応の海外向け選手発掘ウェブページの作成が急務だねと、谷川氏と話をした。
そしてまた、これらの夢を語るときに必要となるのがずばり『金』だ。ブッキング担当の立場から言わせてもらうと、もっと予算があれば、もっとたくさんの夢を実現できるのになぁと、歯がゆい思いをさせられることが多い。
仮にボファンドをはじめとしたムゲンドーキック勢と、いざ現実的な交渉をしようということになり、条件、要はファイトマネーを提示したときに、UFCの相場を基準にして「え!? 悪いけどその額では無理だよ!」となったらそれで終わりなのだ。いくら先方とよい関係を築いて、巌流島の魅力を最大限伝えて引きつけても、金額面でまったく折り合いがつかないとなれば、さすがにお手上げだ。
正直、これまでも金銭面で折り合わずあきらめたというケースは決して少ない。あの選手を日本に連れてきたら絶対に業界が盛り上がるのに……。
いざ幻想系、モンスター系を発掘して、交渉までこぎつけても、金銭面で釣り合いがとれないとなると話が頓挫する。幻想系の人たちは、ガチの格闘技の検証の場で醜態をさらせばすべてを失うリスクを負っている。そのリスクに見合うだけの担保になるファイトマネーとなれば必然的に高額になる。ここでもいくら夢を叶えたいと思っても、金がなければ無理ゲーということになってしまう。
個人的には、哀しみの巨神兵セーム・シュルトや一撃フランシスコ・フィリョ、拳獣サム・グレコあたりを巌流島で見てみたいなぁと思う。シュルトなど巌流島であれば、今度こそベビーターンできるかもしれない。それくらい巌流島は価値観を一変させる。
しかし、日本格闘技ブーム時代のギャラの相場が染みついているこの世代の選手と、ファイトマネーの部分で擦り合わせをするのは容易ではないだろう。現状の日本格闘技業界の相場では、そのハードルは高い。
以前の日本格闘技ブームの頃は、テレビ格闘技の時代だった。大企業がスポンサーにつき、テレビ局と連動して、莫大なバジェットが動いた。それで格闘技シーンが回った。しかし、現在はテレビ格闘技のシステムでは業界が成立していない。
時代環境が変わっているのに思考・手法だけ昔のままでは、そこに致命的な矛盾が生じる。
ではどこから予算をひねり出せばいいのか。クラウドファンディング等と同じく、皆さんから力をお借りし、夢を実現していくシステムが今は必要だ。
大会チケット、グッズ、サイトの有料動画。これらの購入を通して、巌流島に力を与えていただきたい。
元気玉のようにオラに力をわけてもらわないことには闘うことができない。
野球、サッカー、舞台、映画、何でもそうであるように「お金を落としてもらう」ことなしには、ファンの要望も夢も叶えようがない。お金の話ばかりして申し訳ないが、これが現実の話だ。
巌流島はコンテンツとして無限の可能性を秘めていると信じている。あくまでもしもの話だが、巌流島がこの世から消滅してしまったら、悲しみ途方に暮れるのは、何より巌流島を愛する我々自身だ。
巌流島を愛するすべての人は、ぜひ来たる9月2日に千葉・舞浜アンフィシアターにお集まりいただき、巌流島の未来を作る力を分け与えてほしい。心からそう願う。
9・2巌流島の大会情報はコチラ⇒
『巌流島 ADAUCHI 2017 in MAIHAMA』