【7.31巌流島・直前インタビュー②】ナタネル・パリシ(クラブマガ)/ボルドバートル・オンダラル(モンゴル相撲)/クンタップ・チャンロイチャイ(ムエタイ)
■ ナタネル・パリシ(クラブマガ/イスラエル)
「兵役でガザ地区やレバノンの戦場に赴きました」
————クラブマガ戦士のパリシ選手ですが、普段はどんな活動をされているのでしょうか?
パリシ 自身のジムを持っていて、クラブマガの教官をしています。これから兵役に向かう生徒たちにクラブマガを教えているんです。
————プロとしての試合は今回が初めてですよね?
パリシ はい。アマチュアでは、ボクシング、キックボクシング、柔術のチャンピオンになっています。それと兵役中に軍隊内で開催するクラブマガ・トーナメントで2度、チャンピオンになりました。
————クラブマガ・トーナメントは、どんなルールで行われるんでしょうか?
パリシ 歩いているときに後ろから襲撃された場合や、座っているときにナイフで襲われたときなど、様々なシチュエーションを設定して、いかに素早く、効果的に対応できるかを競います。自分の身を守れず、刺されたと判断されたら負けです。そこですでに死んでいるからです。MMAのような白兵戦もやりますが、時間をかけて、距離を取って闘うということはしません。実戦での白兵戦は接近した状態でやるものであって、その場合は短期決戦が絶対だからです。なので一瞬で勝負を決め合う闘いを展開します。私はシチュエーションの闘いと、白兵戦の両方のクラブマガ・トーナメントで優勝しました。
————前回大会ではクラブマガからジャッキー・ゴーシュ選手が参戦しましたが、彼の試合は見ましたか?
パリシ はい、ジャッキーは練習仲間です。彼は非常にアグレッシブな闘いをしていました。実戦をもとにしているクラブマガでは、短期決戦が重要な戦略になりますので、あの闘い方はとてもクラブマガ的だと思いながら見ました。
————他にもクラブマガの闘い方の特徴はありますか?
パリシ クラブマガでは攻撃を避けながら、同時に攻めないといけません。そのために素早さと正確な動きが必要になります。でなければ、ストリートでは撃たれたり、刺されたりして終わりです。
————得意な技は?
パリシ 打撃とディフェンス、つまり実戦にもとづいた接近戦が得意です。
————他の格闘技にはない強みはなんでしょうか?
パリシ 金的蹴りです。
————強みは反則技ということですか。巌流島ルール内で使えそうな急所攻撃はありますか?
パリシ 巌流島のルールでは皆、安易に道着を掴みにいきますが、クラブマガでそれをしたら腕を極められて、折られることもあります。着衣の掴みは重大なダメージになりえます。
————折ると言いますが、躊躇なく折れますか?
パリシ もちろん折れます。こちらが折らなければ、自分が折られるんです。それが戦場のルールです。
————イスラエル人にとってクラブマガはどういうものでしょうか?
パリシ 事件や紛争が多いイスラエルで生き残っていくための術です。そういう意味では“Way of Life(生き方)”ともいえます。
————対戦相手の瀬戸信介のことはご存知ですか?
パリシ 巌流島の試合を見ました。軽やかなカンフーファイターという印象です。
————カンフーの印象は?
パリシ 私もブルース・リーの大ファンです。速くて、賢くて、憧れのファイターです。カンフーファイターと闘えるのは光栄です。
————クラブマガの技術体系にはカンフーの動きも取り入れられていますか?
パリシ いえ、カンフーよりも空手の要素が取り入れられています。
————戦場に出たことはあるのでしょうか?
パリシ 兵役でガザ地区やレバノンの戦場に赴きました。
————まさに実戦を経験しているわけですね。当日はどんな試合を見せたいですか?
パリシ それは今は言えません。当日の楽しみにしておきましょう。
■ ボルドバートル・オンダラル(モンゴル相撲/モンゴル)
「モンゴル人には“青い狼の精神”があります」
————2回目の参戦になりますね。
オンダラル 嬉しくて最高の気分です。
————前回は負けてしまいましたが。
オンダラル 初めての経験だったので、闘技場の広さ、使い方が把握できていませんでした。自分から下がって、自分から場外に出たりしてしまった。まだ闘技場に慣れていない感じでした。
————今回の作戦は?
オンダラル いまのところ、作戦はありません。相手がどういう選手なのか、どういうことを仕掛けてくるのか、やってみないとわからないので。もちろん、組んでしまえば自信はありますが。モンゴル相撲は立って闘うものなので、それでポイントを取っていきたい。グラウンドは限定15秒なので、それを利用して、基本はスタンドで勝負したいです。
————モンゴル相撲と巌流島の違いは?
オンダラル 闘技場の中で相手を倒しても、それが勝ちではないということです。3回押し出したり、KOかギブアップを取らないと。でもお客さんの前に立つ以上、面白い闘いにはするつもりです。今度は闘技場の外に相手を落として見せますよ。足技、手を使った技、組んでからの投げ技。その時に合わせて有効な技を出していきます。
————モンゴル相撲を闘う人の心とは?
オンダラル 高い精神力を持って闘うということもあるけれど、「お前が俺の母親を殺したのか! 負けるもんか!」という気持ちになって闘う人もいるって聞きます。モンゴルの民族は「相手には絶対負けない!」っていう強い気持ちでやっています。それがモンゴル人のDNAに入っているんじゃないですか?
————前回大会で星風選手が暴走しましたけれど、それについてはいかがですか?
オンダラル「同じ母から生まれた兄がやられた! 自分もやられてたまるか!」っていう気持ちはわかります。「兄弟揃って、負けてたまるか!」と思ったのでしょう。
————モンゴルの戦士には“青い狼の子供”という意識がある?
オンダラル モンゴルの男性はみな同じ。“青い狼の精神”があります。勇気があって、砂漠だろうが草原だろうが、どんな環境でも生きていける。優れた生き物です。
————相手のミシェル・ベルギネリの競技中の映像は見ていますか?
オンダラル 全く見ていません。
————モンゴル相撲の試合では、何を懸けて闘うのですか?
オンダラル 私は自分にどれだけの力があるのか。それを試すために闘っています。ほかの人はわからないけれど。
————モンゴル相撲道というか、プライドとは、どんなものでしょか?
オンダラル 思いやりのある人間になろうというのが基本です。弱い者を助ける。自慢してはいけない。そういう道徳的な気持ちを常に持っています。闘いではあるけれど、相撲であり、格闘技ではない。取り組みが終わったら、相手とは親友になる。闘いが終われば、互いに尊敬し合える。それが“モンゴル相撲道”です。
■ クンタップ・チャンロイチャイ(ムエタイ/タイ)
「三日月蹴りがきたら前蹴りで返します」
————今回の参戦にあたって、どういう心境ですか?
クンタップ 少し緊張しています。
————前回、いい勝ち方をしたのにですか?
クンタップ だって今回はメインイベントじゃないですか(苦笑)。それに相手の菊野(克紀)選手は強い。その菊野選手に勝たなきゃいけないんですから。彼は、今まで見たことのない前蹴り(三日月蹴り)の蹴り方をしてきます。でも、自分も前蹴りで返しますけど。キック、パンチには自信があります。
————いいパンチが前回は入りました。
クンタップ パンチより前蹴りの方が早く前に伸びてきます。菊野選手の前蹴りも早い。でも自分なら問題ないです。
————今の体重は?
クンタップ 75キロぐらい。契約体重は70キロだけど、今は暑いからすぐに落ちます。冬より暑い夏が好きです。ちゃんとボクシングも練習しています。やっぱり寝技は難しいですね。
————菊野選手の蹴り技は、ムエタイの蹴り方とはかなり違いますよね。
クンタップ 低くて、見えない所から蹴り足が来る。ムエタイはそれより高い所から来る。でも自分なら大丈夫。いい試合ができて、楽しい、面白い試合になればと思います。