貴賢神、鈴川真一、海鵬。力士の参戦はあるか？

「ヤッさん(安田忠夫)を探せ！」

そう言ったのは、令和猪木軍の総監督・小川直也だった。

安田忠夫といえば、2001年の大晦日、最初の格闘技版『INOKI BOM-BA-YE』のメインで、当時K-1の強さの象徴を担っていたジェロム・レ・バンナと対戦。元々、猪木軍の大将は藤田和之が務める予定だったが、負傷欠場で猪木軍はメインがいなくなるという大ピンチを迎えた。そんな興行的にも絶体絶命の中、選ばれたのがギャンブルで大借金を背負い、嫁も娘も全財産も失った「平成の借金王」安田忠夫だった。この人選にファン・関係者も落胆し、猪木軍vsK-1軍の勝負論は一気に薄れた。

しかし、誰もがバンナ圧勝を予想する中、安田がまさかの大金星。涙の勝利に当時中学生だった別れた娘を肩車し、お茶の間に感動を与えた。TBSの平均視聴率は、紅白歌合戦の裏番組の記録を塗り替える15％近くをとり、その後10年間、大晦日の格闘技の歴史を作るきっかけとなった最大の立役者である。

バンナ戦勝利後、数年間は人気絶頂、まさに安田バブルは続き、遂には新日本プロレスのIWGPチャンピオンにまで昇りつめた。人生大逆転！　しかし、やり直せる大事な時期でもギャンブル依存症は治らず、バンナ戦で得た名声とお金、復活の人生劇場はまたもどん底に逆戻り。2005年には新日本プロレスを解雇されることになった。その後はZERO-ONEといったプロレス団体にフリーで上がるものの、一時は練炭自殺を図ったというニュースも流れて、その転落ぶりに驚かされた。

その安田忠夫は今、何をしているか？　実行委員会で探し回ったところ、遂に安田の居場所を突き止めた。なんと、引退後はロシアン・パブの用心棒→老人介護→タイやカンボジアで料理屋・雀荘の管理人と職を転々とし、今は警備会社で働いているという。

猪木さんのお通夜や告別式にも姿を見せなかった安田。深夜の工事現場でガードマン姿で立っている、一際目立った巨漢を発見。

「安田さんですよねぇ？」と声をかけると、そこには期待通りの姿の安田忠夫の姿があった。仕事終わりに、近くにあった「はま寿司」でたらふく食べてもらうことを条件に、話も聞くことができた。

猪木さんのこと、あれから何をしてて、どう人生がまた転落していったか。今の仕事、あの時肩車した娘が今では4児の母親になったことなど、話好きの安田は相変わらず味のある話しぶりとお茶目な表情を見せる。今でもギャンブルはやめられず、今はスマホで競艇にハマっており、一日働いてはそのお金全てを競艇に賭けるので、その日暮らしの生活は続いているという。

そのインタビューは近々YouTube「最後の闘魂チャンネル」で公開するとして、12・28の猪木追悼『INOKI BON-BA-YE×巌流島』の話を説明すると、安田は「小川に言っておいてよ。令和猪木軍・相撲部を作れ！と。なんか今、クスリで相撲をクビになった若麒麟(鈴川真一)とか、貴ナントカ(おそらく貴賢神)という若い奴がいるじゃない？　ああいう奴にオレみたいに猪木ボンバイエで人生変えてもらいたいね。あと、同じ一門で巌流島に出ていた海鵬とか。格闘技で一発、オレみたいに人生を逆転してほしいよぉ。オレでよかったら、セコンドに付くよ」とやる気を見せた。

「ただ若麒麟は好きじゃないな。前にテレビ(TBS)でガチ相撲やった時、あいつ、オレを電車道で押し出してさぁ。年寄り相手にそんなことすんじゃねぇ。まず四つに組め、と思ったもん」

「貴ナントカは総合に出てるの？　RIZIN出て2連敗？　ますます人生逆転かけて闘えばドラマになるじゃない？　まぁ、でも逆転してもまたオレみたいに人生転がり落ちると思うけどさ。ふふふふふふ」

来年で還暦。そう微笑む笑顔に、前歯はなかった。

「はま寿司」で信じられないほど食べた後、チャリンコにまたがってくわえタバコし、「明日も7時から仕事だから」と、夜の街に消えていった。期待を裏切らない、安田人生劇場のそれから。

果たして、令和猪木軍・安田枠に入る相撲取りは現れるのだろうか？　乞うご期待！

12.28チケット情報⇒ 『INOKI BOM-BA-YE×巌流島in両国』