格闘技とは「強さの測定」ではなく「幻想の測定」! 種市純也が教えてくれた新境地!
お題………1・3 巌流島の私的な見所とは?
1・3 巌流島のカード、いかがでしょうか?
SNS等で見る限り、かなりの反響なので本当に嬉しいです。私自身、菊野vs小見川、シビサイvsドゥウエス、シュレック関根vsアンブリッツ、シャロマイエフvsカルロス・トヨタなど、勝負論としてもどちらが勝つか分からないので、一格闘技ファンとして非常に楽しみにしています。
そして、今回は猪木イズムを継承する闘魂力士・鈴川真一選手の参戦! これについても狙いに行ったわけではなく、ごく自然な流れで参戦が決まりました。元々、菊野克紀選手がUWFスネークピット・ジャパンで練習するようになり、その流れで宮戸優光さんと交流が始まり、そのスネークピットに鈴川選手が練習に来ていることで、菊野選手から鈴川選手の話が来ました。私としてみれば、宮戸さんは古い知り合いだし、仕掛けのセンスは高く評価している人。久しぶりの再会だけでも嬉しかった。
前回の「ロッキー川村」は小見川道大選手の推薦、その流れで「近藤有己」の参戦。対戦相手の「後藤龍治」は魔裟斗の推薦。前々回の「鈴木信達」「吉田善行」「関根シュレック秀樹」、その前の「町田光」も、そんな感じで、自然と巌流島に集まってきた選手です。私自身、K-1時代のように「何が何でも取りにいく」という選手獲得ではなく、本当に自然と気がついたら出てくれていた、そんな感じなのが巌流島の特徴です。おそらく、選手の中にも「巌流島、面白そうだ」という気持ちを持ってくれているんだと思います。この流れは、いい風が吹いている証です。
私はそもそも今の現役選手をあまり知らないので、ロッキーも、信達さんも、町田光クンも試合すら見たことがありませんでした。でも、会ってみると、これがすごく魅力的だし、試合もいい。そもそも、菊野クンも小見川クンも、巌流島になって初めて触った人たちで、その魅力に引き込まれた感じ。ああ、こういう選手なら、全然光らせられるじゃないかと思った次第です。今はメディアの環境が良くない格闘技界ですが、K-1時代の環境なら魔裟斗とは言いませんが、菊野クンも小見川クンも凄くスターにできたと思っています。そのくらいの逸材です(その点はごめんなさい)。
今、正直に言って、格闘技界には視聴率を取れたり、大会場を満員にできるスターはいません。この業界はスターを産めばあっという間に見え方が変わってきますが、私の中では埋もれていた魅力ある選手を輝かせ、若い才能のあるスターを作り上げるしかないと思っています。そのためには、巌流島をいかに輝ける場にできるか? そして、K-1時代とは激変したメディアの環境にどう向きあっていくかということに尽きると思います。
何せ、K-1時代では視聴率が15%でもかなりの危機感が募りましたが、今や地上波のゴールデンでも普通に1桁視聴率の時代、それに加えて格闘技専門誌は無くなってしまうし、昔はスポーツ紙に載るのがステータスでしたが、それも危うくなっています。インターネットTVの時代と言われながらも、どこも途中で息切れし、2~3年で「今は○○がいい」というのも変わってきています。本当にその辺は難しい! そこは来年以降も大きな課題となりますが、巌流島自体は、埋もれていた魅力ある選手を輝かせることによって、どんどん面白くなってきていると思います。
さて、私自身、これまで格闘技界では様々な仕掛けをしてきました。MMAを中心に考えると分かりやすいですが、最初はプロレスラーに格闘技をやらせること。それがUWFであり、桜庭・田村の時代へと結実していきます。その次は、格闘家に異種格闘技戦をやらせること。簡単に言うと、猪木軍vs K-1のようにK-1ファイターにMMAをやらせること。その代表がミルコですね。次にオリンピック級のアマチュア・アスリートをプロのリングにあげること。吉田秀彦や石井慧、曙がそうですね。あるいはボビー・オロゴンのようにタレントに格闘技をやらせる。ボブ・ザップのようなモンスター路線が話題になった時代もあります。これらが何で受けたかというと「幻想」があったからです。力道山のプロレスの時代から、格闘技とは「幻想」を産むビジネスなのです。
しかし、それらは全てやり尽くしているので、今さらファンがそれに食いつき、時代を作れることはありえません。しかも、こういった路線は金もかかるし、ファイトマネーの高騰にもつながります。それで視聴率やお客さんを満員にできればいいのですが、過去にいいものを見ているだけに、それ以上のものをやるのはかなりシンドイ。その路線に幻想がなくなっているからです。では、どうするか?
その中で考えたのは、世界中の未知の武術を試合にあげることでした。巌流島を見た方なら理解していると思いますが、カポエイラやクラブマガ、セネガル相撲、ミャンマーラウェイ、喧嘩フットボール(カルチョ・ストーリコ)と、世界にはまだまだ多くの幻想溢れる武術・格闘技があります。今回も空道やシステマ、日本拳法、キャッチ・アズ・キャッチ・キャン、数見空手、インド王族武術など、幻想に溢れる武術が参戦してきます。だいたい、菊野クンが始めた沖縄拳法空手や師匠の山城師範は、格闘技慣れした私にとっても新鮮だし、幻想の塊です。
私は格闘技に幻想が必要ならば、「コレしかない」と始めたのが巌流島なのです。キックボクシングも、MMAも競技が進化すればするほど、幻想はなくなってきます。皆さんは、格闘技とは「強さの測定」が面白いと思うかもしれませんが、実は「幻想の測定」が一番面白いのです。それをどう表現するか? 競技が進んでいくと、極端にいうとキックだって、MMAだって「レミー・ボンヤスキー v レミー・ボンヤスキー」みたいになってしまいます(レミー、例えが悪くてごめんなさい)。それより、私は数見空手がどう闘うのか? 日本拳法の波動拳はどんな威力なのか? 沖縄拳法空手の神の手とは? システマの呼吸法とは? そういう幻想の方がよっぽど見たい。
幸い、私は前回の大会で大きな勇気を与えてもらいました。それは沖縄拳法空手の種市純也選手対クンタップの試合でした。あの試合内容、感動、そして後から知った山城師範の作戦、種市選手の精神力は、ファイトマネーをたくさんもらってレミー・ボンヤスキー vsレミー・ボンヤスキーみたいな試合しかできないプロよりも(レミー何度もごめん)、よっぽど素晴らしいじゃないかと。私はあの試合、本当に目頭が熱くなりました。名前さえ知らなかった一武道家に、感動してしまったのです。
結局、お客さんを感動させるって、こういうことなんだなと、改めて思い知りました。昔の名前で出ている選手やタレントに頼るより、彼らのような名もなき武術家にチャンスを与え、発掘して、輝かせる。だから、トライアウトの選手をいきなり何人も出すことにしたんです。これはプロデューサーの私にとっても新境地であり、新しいチャレンジです。私が期待するのは今回、彼らのような初登場の武術家です。
カポエイラや沖縄拳法空手の菊野克紀、ネオ柔道の小見川道大のように、自分たちの流儀を貫き、種市純也のような気持ちを見せて、いい試合をしてくれれば、巌流島はまた一歩先に進める気がします。そんな1・3巌流島に期待しています!