武術の競技化には必ず理念がある! そこを踏まえて巌流島はルールを議論していきたい!
niconico動画の『巌流島チャンネル』でほぼ毎日更新していた「ブロマガ」が、オフィシャルサイトでパワーアップして帰ってきました。これまでの連載陣=谷川貞治、山田英司、ターザン山本、田中正志、山口日昇に加え、安西伸一、クマクマンボ、柴田和則、菊野克紀、平直行、大成敦、そして本当にたまに岩倉豪と、多種多様な方々に声をかけていく予定です。ぜひ、ご期待ください!
5月23日(月)のブロマガ………お題『巌流島・公開検証Final』に期待すること
巌流島の次回大会は7月31日(日)、有明コロシアムに決定しました。有明というと、10,000人キャパですが、アリーナと1階席のみ、約4,000人のキャパで勝負しようと思います。今はまだ、10,000人の観客を集めるほどの力は、正直ありません。
さて、この7・31有明大会で「公開検証」と名のつく実験イベントは最後にしようと思います。ファンとコミュニケーションしながら作り上げるという『巌流島』イベントも、そろそろ答えを出していかなければなりません。
そもそも私は格闘技復興をめざす上で、既存の総合格闘技やキックボクシングではなく、全く新しいジャンルを作り上げないと、真の復活は難しいと思っています。その「キーワード」こそ『武道』だと思うのです。
「実戦」という命の奪い合いのための技術を「武術」と言います。「武術」は戦国時代の戦(いくさ)から現代のストリートファイト、護身術に至るまで幅広く使われますが、わかりやすく言えばスポーツなどの競技ではない闘いを指します。競技ではないので、体重を合わせるような発想も、「よーい、ドン!」で一緒に始める発想もありません。裸で闘うこともなければ、相手が複数の状況だってあります。もちろん、自分は空手を習っていても、相手は柔道など、別の格闘技をやっている場合だってある。武器を持っていることを想定することも重要です。そうした現代護身術の技術を磨けるような大会こそ、新しいジャンルになると考えているのです。
武術であれば、大前提として全てが「他流試合」=「異種格闘技戦」になります。その上、総合格闘技との違いは、実戦となると寝技にあまりならないため、立ち技中心になること。さらに実戦では、体当たり、ぶちかまし、押し出し、タックルといった行為が非常に重要。衣服も当然着ています。それらをファンと議論して作り上げたのが、巌流島ルールなのです。実戦では、不意打ちなどの騙し、急所攻撃が本当は重要なのですが、そこは競技としての限界があります。違う実験を考えなければならないでしょう。
私はこのような実験検証は「興行」という形では難しいので、非公開で「道場マッチ」のような形で行い、動画配信していくのがいいと思っています。こういうところに、武術の新しい公開検証の仕方があると思います。
現在、巌流島のオフィシャルサイトの「議論」のページでは、「残心」について語られています。これなんかは、「興行」として試す価値は大いにある思います。前回のブロマガで、元格通の安西さんは巌流島のことを「キックボクシング+相撲+シュートボクシング」みたいなことを書いていましたが、巌流島は継接ぎのルールで新しいものを作ろうとしているわけではありません。この辺のことが分かっているマスコミは本当に少ない。
そもそもそういう人は、ルールそのものをゲーム的に「あり、なし」で決めているという発想しかありません。例えば柔道は「打撃なしの投げ技のみを競い合うルール。寝技は抑え込み30秒を狙う行為のみに限定」で最強を競うゲームだと捉えているでしょう。しかし、創始者の嘉納治五郎は柔道に当て身(打撃)も取り入れていたし、立ちでも寝ても関節技、締め技を追求しようと考えていました。しかし、柔道を普及させる上で、柔道は「競技化する上で立ちの投げ技を重視すべきだ」という結論に達したのです。確かに戦場の実戦を考えると、打撃や寝技よりも、投げがいかに重要かはガチ甲冑合戦でも証明されています。柔道の抑え込み30秒も、「相手を抑え込み小刀で首をかき斬る時間」という意味があると言われています。本当に凄い武術です。
空手の大山倍達も、初期の頃は投げも掴みも競技に取り入れていました。しかし、空手として「素手の打撃」を磨くことにこだわったため、投げや掴み、押し、顔面攻撃というのはどんどんなくなってきた背景があります。つまり、武術の競技化には何らかの理念があって、それに向かった競技作りの中で、「安全性」や「エンターテイメント性」、「武術性」、「技術を磨くという修行の側面」などの矛盾にぶつかっていくのです。特に日本で生まれた武道的な競技は全て、そういう理念が含まれています。
そして、その武術という命の奪い合いの中にも、人として美しい生き様を貫こうとする考え方が「武道」なのです。私はこの「武道」を興行で表現するために重要なのは、「美しさ」だと思います。「美しい闘い」に「美しい精神」。そして、試合の所作まで美しくあること。それが武道の表現であり、他の格闘技イベントとの決定的な差別化だと思うのです。
そういう精神のもと、巌流島としてのスタイルをそろそろ確立していきたい。それが7・31有明大会の一番のテーマだと思っています。幸い、巌流島に対して、世界中の格闘技から「試してみたい」と多くの反響をいただいています。
巌流島のオフィシャルサイトにも掲載していますが、素手でパンチ、キック、ヒジ、ヒザ、頭突きに投げ、金的蹴りまで認めている地上最も過酷なルールと呼ばれるミャンマーラウェイ最強の男トゥントゥンミン、イタリアにある素手によるバーリトゥードでフットボールをやるカルチョ・ストーリコの英雄、コンバット・サンボだけじゃないロシア格闘技、前回活躍したイスラエルのクラブマガ、カマキリ拳法など、実に多種多彩、まだ世界にはこんな未知の格闘技があったんだという選手が登場します。
また、大反響だったガチ甲冑合戦も、7・31有明大会の前後に行います。これは一般の参加者も募り、50:50、100:100の対決をやりたいと思いますので、こちらの情報もお待ちください。有名格闘家もすでに参戦を希望しています。こちらもフジテレビの協力を得て、やっていきたいと思います。ぜひ、ファンの皆さんと新しいジャンルを切り開いていきたいです!