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初めて観た人の話題となる「転落」の賛否両論! ぜひ武道的な視点で考えてみてください

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お題………大好評! 9・2巌流島ADAUCHIの総括と裏側

 

文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)

文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)

 

皆さま、9・2 巌流島・舞浜大会をご観戦ありがとうございました。

今回もとても評判が良く、ホッと胸を撫で下ろしています。当日のツイッターの検索ランキングもトレンド上位に入ったし、巌流島もジワジワきていて、そろそろ地上波で勝負したい。そんな気分です。皆さん、応援よろしくお願いします。

今回の巌流島のテーマは、「ADAUCHI」=仇討ちでした。格闘技で一時流行った「REVENGE」の武道版。メインでは菊野克紀が日本人全敗のカポエイラの達人マーカス・レロ・アウレリオに見事TKO勝ちで仇討ち達成! しかし、カポエイラ兄のマーカス・ヴィニシアスは、レロに勝ったイタリアの喧嘩フットボール、ミケーレ・ベルギネリにKO勝ち、ムエタイ王者のクンタップは沖縄拳法空手の種市純也にKO勝ちと、それぞれが仇討ちを成し遂げ、この新企画の手応えを感じた次第です。

でも、私の知り合いも今回、初めて巌流島を生で観戦した人が多く、そういう人たちの話題に必ずなるのが、「転落」です。最近の巌流島イベントでは、柔道の小見川道大が巴投げ連発で他の格闘技イベントにはない必殺技を見せたり、今回のシュレック関根のように道着を掴んでパウンドするなど、巌流島ならではの闘いで色を出しつつあります。そのひとつの特徴は「道着」!

しかし、巌流島の最大の特徴である「転落」については賛否両論。ターザン山本さんからは「あれは最大の発明ですよぉ〜」と絶賛されたかと思えば、「あの決着は物足りないからやめたほうがいい」という意見もあります。しかしですねぇ、そもそも皆さんが最も過激だというイメージのUFCのようなMMAも、必ず相手を金網に押し付けたり、ロープやコーナーに追い込む場面が見られます。金網やロープ、コーナーポストを触らない試合なんて、まずありません。しかも勝敗の決め手となる攻防はその金網やロープ、コーナーポストで展開が生まれます。つまり、巌流島のように金網やロープ、コーナーポストのような囲いがなく、下が崖だったら、みんな落っこちて死んでいるのです。ほとんどの試合は、囲いがあるから成立しているし、そこでの攻防の技術によって勝敗が決まるのは、決して実戦的ではありません。

そもそも格闘技の試合は「どこを攻撃してはいけない」「どんな技を使っちゃいけない」という規制=反則でルールが成り立っています。しかし、その禁じ手と同じくらい重要なのは、闘う「時間」と「場所」の大きさです。そこをうまく頭に入れて闘わないと勝てない。青木真也選手と話をしていた時も、「MMAと差別化しているのは、ルールの制約ではなく、転落ですね。あれで攻防が変わってくるし、テイクダウンも変わってくる」という話が出てきました。

これを実戦で考えてみましょう。現代でいえば喧嘩です。

場所の狭いところで喧嘩になった場合、一番有効的なのはパンチやキックではなく、相撲のようなぶちかまし、体当たり、レスリングのような胴タックルです。相手が突進してきたら、相手をKOするようなパンチやキックはプロでも簡単に当てられません。つまり、実戦では力士やレスラーはとても強いのです。そして、喧嘩ではぶちかまし、体当たり、タックルはすごく重要。喧嘩というと、マイク・タイソンのような殴り合いが素人には迫力あって、強そうに見えますが、あれは組み合わない、押し合わないというルールが前提にあってできること。掴みOKだったり、押し出しOKならば、タイソンも殴るより、押し出しに出るはずです。

次に! それに対抗できるのは、相手の力を利用した柔道等の投げ技。小見川道大の巴投げは、まさにぶちかまし、体当たりに対抗する技で、巌流島で生きるのは必然的なことでした。改めて、「あ、巴投げって、こんなに実戦で生きるんだ!」と思った人は多いでしょう。

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しかも、場所が広くなったら、今度はぶちかまし、体当たりよりも、柔道のような投げ技が有効になってきます。押し出す距離が遠くなれば、今度は投げる技術がないとスタミナ的にも持ちません。そして、殴る蹴るの技術は、掴まれる行為以前に、相手に当てなければならないという、とても難しい技術なのです。喧嘩で迫力のある打撃の攻防は、実は最も効率が悪く、最も難しい技術なのです。

相撲的なぶちかまし、柔道的な投げ技、空手やキックのような打撃技が公平に繰り出される大きさとして導き出したのが、巌流島の8メートルの円形です。これより、狭くなると押し出しが多くなるし、これ以上広くなると、押し出しの決まり手は出ないんじゃないかと導き出した大きさ。しかし、これも正解ではないので、今後は大きさが変わるかもしれません。

しかし、ここで重要なのは、実戦を考えると「押し出す」という行為は無視できないということです。よくMMAの試合を見てください。必ず1試合中に何度も金網やロープ、コーナーにどちらかが押し付けられます。実戦を考えると、あれで階段や崖から落っこちたり、ものにぶつかって勝負が決まってしまうことが多いのです。「あ、崖だったら死んでるな」と思う場面がいくらでもあるし、そう見ていたら、過激なMMAの見え方も変わってくるはずです。実際にテイクダウンも一度金網やコーナーに押し付けてから倒すという場面が何と多いことか。あ、これも落ちてる、これも落ちてる、金網やコーナーがなければテイクダウンできていないという試合ばかりです。

もし同じUFCのメンバーで巌流島ルールで闘ったら、ランキングの順位もチャンピオンも変わってくるでしょう。菊野克紀が「MMAルールだったらレロに勝てないけど、巌流島ルールならばチャンスがある」といった意味、小見川がジャイロ戦の後「無差別は怖かったけど、道着があったので勝てた」といった意味。そういうところに巌流島の隠れた魅力があります。

しかも、金網やロープ、コーナーポストがなく転落してしまうということは膠着がない。選手は前へ前へ出ないと勝てないので、必然的にKO決着が多くなるのです。

「転落」が面白いのか、面白くないかは、その意味をよく理解すること、そして見慣れるかどうかにあります。「転落」の賛否両論は巌流島が市民権を得るまで繰り返されると思います。そのためには武道的な意味を伝え続けるしかありません。一方、巌流島としては、押し出し→転落決着が多くなるのも、よくありません。「転落」は確かにあっけなく見えるし、空手家やキックボクサーさえ押し出しばかりしはじめたら、本当に相撲になってしまいます。それでは巌流島の意味がない。闘いを作るには、選手の姿勢も重要です。選手の「落ちたら死につながる。絶対に下がらない」という強い自覚が緊張感を作ります。そこは選手に対する啓蒙が必要となりますね。

また、今のところ闘技場の周りにはスモークを焚いていますが、主催者としてはもっと落ちた時のインパクトを強める演出が必要かもしれません。それには高さを高くするしかないんですが、それはそれで選手の安全性を考えると、そんなに高くもできません。今は60センチくらいの高さですが、それでも腰を打ったり、足を挫いたり、場外で怪我をする選手は多い。難しい課題ですよね。

本当に「転落」が面白くなれば、巌流島は新しい格闘技イベントとして評価を受けるでしょう。武道的な視点をもって、皆さんのご意見をぜひお待ちしています。

 

9・2巌流島のレポートはコチラ⇒
『ADAUCHI 2017 in MAIHAMA』