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公開検証を4回終えて、巌流島の 競技的な(ルール)課題とは何か!?

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文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)

文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)

 

4回の公開検証を終えて、皆さんにご報告しなければならないのは、巌流島の競技的な課題でしよう。競技を作る上で、最も重要なのは、その「競技の理念」です。しかし、その理念を実現するのは普通、格闘技団体であり、流派を興すようなカリスマ的創始者がいて、自分たちの弟子に実践させることで改良し、大会に昇華していくものです。嘉納治五郎の柔道や大山倍達の極真空手を考えると分かりやすいでしょうね。K-1だって、石井館長率いる正道会館がありましたし、MMAだってグレイシー柔術の理念からスタートしています。

しかし、巌流島はあくまでもイベントという場であって、「こういう格闘技を作りたい」というカリスマ的な指導者もいなければ、ベースとなる格闘技団体もありません。そこが巌流島の欠点であり、「ファンや格闘技関係者と決めていく」という大義名文のある新しい可能性を秘めたジャンルなのです。

巌流島の理念は、できるかぎり実戦(武術)の競技化をめざしていますし、武道の試合にしていきたいと思っています。武道の試合というのは、礼儀作法があり、単なる勝ち負けを競うだけでなく、そこに精神性を感じ取れたり、流派の特徴を出した美しい技で勝つことを選手に求めています。しかし、ベースにある格闘技団体で練られてきたものではないため、それをいろんな格闘技の、いろんな選手に伝えるだけで大変です。

たとえば、第4回大会の前は2回もルールミーティングを開いたのですが、その時選手たちに口酸っぱく「はじめで試合が始まるわけだから、その後にグローブを合わせるのは禁止。やらないでほしい」と伝えたのに、第1試合のクラブマガ選手をはじめ、グローブを合わせる選手が何人もいました。グローブを合わせたら、菊野克紀vsクンタップのような4秒決着なんて生まれないし、第1回大会のアメフト和久のような突進は生まれません。試合としての可能性やチャンスがいくつも削がれてしまうのです。何よりも、見ている方の緊張感が損なわれてしまいます。そんな簡単なことも伝わらない。そういう細かい苦労がいっぱいあるのです。

だから、巌流島でも「議論」に投稿される意見は必ず目を通しているのですが、短期間で選手が対応できないルール変更は採用しませんでした。そもそも巌流島の公開検証1~3と、段階的にルールが改良(マイナーチェンジ)されているのに、根本的に別のルールに変えるようなおもしろい発想の意見もありましたが、それも今更選手に理解させることも難しいし、変えたら変えたで別の公開検証をまた始めなければならないので、それも採用しませんでした。しかし、かなり面白い意見もありましたので、将来的な課題とさせていただきます。

ここが難しいところですが、巌流島をやっていく上で、競技は絶対に確立しなければなりませんが、競技にすると、競技の中での勝ち方が生まれてきます。つまり、巌流島は早くK-1やMMAとも違った競技を確立して、「新しい格闘技が出てきた」「実戦とはこういうものだ」というものを世間に知らしめたい一方で、MMAのように競技にしたくない矛盾があるのです。その意味で、時々、田村vsモヨの「猪木vsアリ」ルールみたいなものは続けていきたいと思います。公開検証は終わりましたが、ある意味、格闘技も武道も公開検証は永遠に続けていくべきだと考えています。

第1回大会から第4回大会を通してみると、非常に競技として成熟しているのが分かります。第4回大会で注意したのは、第3回大会で課題となった審判団と演出サイドの連携、とにかく裏舞台を徹底的にきちんとすることでした。これはかなり良くなったと思います。しかし、レフェリングについてはまだまだ課題は残ります。というより、競技とレフェリングはどの格闘技団体も永遠のテーマになっているのです。

私が第4回大会を見て思ったことは、パウンドのストップをもっと明確にすることです。今回の感想や意見を聞くと「止めるのが早い」という意見が圧倒的に多かった。海鵬もトゥントゥンミンも、ベルギネリもまだ死んでないといえば死んでいない。かといって、「15秒殴られるのを我慢すればブレイクになる」というのも実戦的ではありません。そこで、パウンドはレフェリーが効いたと思うパンチがなくても「下の選手が動いてディフェンスしようとしてなければ、一本を取る場合がある」としっかり選手に伝える必要があると思いました。そうでないと、「15秒我慢すればいい」という選手も増えてくるでしょう。実戦で15秒で誰かが止めてくれることはありません。

そもそもグラウンドのパウンドまで認めたルールにしたのは、柔道家のような投げの得意な選手が「投げ技一本」では物足りなく、パウンドまで奪うと勝つための「決めて」がなくなってしまうからでした。それだと柔道家にとっては不利。まして、実戦だと寝技の概念を持ち込むのは良くないので、パウンドみ有りという経緯になったのです。柔道をやっていたアフリカのロククがミャンマーラウェイ最強のトゥントゥンミンに勝ったのが、非常にわかりやすい例です。これがパウンドなしだと、ロククは勝ちようがなかったし、寝技なしになるとロククの勝利はお客さんにも、トゥントゥンミンにも納得いかないものだったでしょう。一方、そこに寝技のサブミッションまで入れると、MMAのような一対一の決闘になってしまい、実戦と少し変わってきてしまいます。

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このように見た目の印象も非常に大切で、議論の中では「残心」というものが活発に意見として飛び交いましたが、私も「残心」という概念はとても武道らしくて好きです。しかし、MMAを見慣れた現状を考えると、「残心」や柔道の「投げ一本」で試合が決まってしまうと、選手も、観客も物足りなさを感じるのは否めません。今回は特に「残心」の意見も出てることだから、「早く止めよう!」と審判団の間では話し合われていましたが、逆に選手やファンから「止めるのが早すぎる」という声をたくさん聞くようになりました。もしかしたら、アマチュアの試合では、「転落1回」「柔道の一本でも勝負あり」「残心でも一本あり」にしてみるといいかもしれません。

また、第4回大会まで通じてやはり難しいのは、「転落」の取り方です。一人が体を残し、相手だけ場外に転落させるのは、かなりの技術が必要になります。私個人の意見としては、1ラウンド3回ではなく、1ラウンド3分ならば2回でも十分な気がしています。それよりも難しいのが、第3回大会の星風vsボンギンゴシのような試合展開になった時です。星風はあの試合、自分も場外に飛び出す覚悟でボンギンゴシにぶちかましながら、前へ前へと押していきました。結果的に全て同体となりましたが、あれを相撲取りにやられると押し出された方はどうにもなりません。したがって、審判の中では「あれは一種のかけ逃げと同じ。転落を明らかに狙っていない押し出しなので、注意を取るべきだ」という声もありましたが、「ボンギンゴシは星風より体が大きいので、自分の技術で対処すべきだ。悪いのはボンギンゴシの方だ」と、意見も真っ二つに割れたのです。

私個人の意見としては、あのような一方的な押し出しで突き落としたにもかかわらず、自分も一緒に落ちたので「転落」にならなかった攻撃は、柔道でいう「効果」を与えるべきなような気がします。そして「効果」を2~3回取れば「転落」と同等の価値を持たせる。これで場外に関しては、「転落」と「同体」の差がよりはっきりする気がします。その間に「効果」があることで、どっちだろうというのが少なくなると思うのです。

長くなるので、関節技についてもう一つだけ触れておきます。今回の第4回大会から、立ち技で極めかかった関節技でお互いに寝技になっても、極まっていれば一本を取るというルールになりました。たとえば、桜庭選手がヘンゾ・グレイシーの試合で見せたように、桜庭選手が後ろから組まれたところ腕を取って極めようとしたら、結果的に両者グラウンド状態までも連れ込み、ヘンゾが脱臼したシーンを覚えているでしょうか?  ああなったら、寝技でも一本を取ることにしたのです。立ったままの状態の関節技で寝てしまっても、瞬間的に極まっていれば一本。それは実戦でも十分有り得るし、正しいと言えます。寝技の攻防ではなく、藤原喜明の脇固めのような関節技、サンボにあるような飛びつき逆十字、立ち技でフロントチョークを極めたまま倒れてしまうような一瞬の関節技は有効。これにより、立ち関節はなかなか極まりませんが、関節技の一本勝ちが増えるかもしれません。ただし、寝技になってからの関節技の攻防は禁止としています。

この後、公開検証を4回終えて、「実戦的」で、なるべく流派に対して「公平な異種格闘技戦」であり、「安全性も確保」された中で、「見る側も面白い」巌流島ルールを決めるべくルールミーティングを重ねていきたいと思います。次回の巌流島では、改めてそのスタートラインに立ちますので、またいろんな意見をください。お待ちしております。