ウォッチャーが現場で目撃した9.17巌流島。プロレスファンとしての歓喜、島民としての喚起
お題………賛否両論! 全日本武術選手権。刃牙の世界は実現できるか?
——今日ここにいるプロレスファンどれくらいいるんだ? プロレスが一番強いんだ。お前ら、胸を張って帰れ!
「全日本武術選手権」を制覇した奥田啓介選手によるこのマイクパフォーマンスは、97年に桜庭和志選手がUFC Japan優勝時に発した「プロレスラーは本当は強いんです」に次ぐ名言だと思いました。
2日前にシュートボクシングの試合があり、善戦するも準決勝あたりで敗退するのではないかと予想していましたが、良い意味で予想を裏切り、最高の結果・爪痕を残しました。
入場時の煽りやドロップキック、モンゴリアンチョップ、ラリアートなどを披露し、しっかりとプロレスラーとしての見せ場を作り、また試合後は丁寧に挨拶をする姿も含め、会場の空気を掴んだようにも感じます。
奥田選手は「タックルではない、スピアーというプロレス技だ」と言っていますが、こういった「指の角度が違えば違う技だ」というプロレス特有の考え方も大好物です。
00年代初頭からの総合格闘家の台頭により、さすがに今ではプロレスと格闘技はあくまで別物と考えてますが、やはり格闘技イベントでのプロレスラーの活躍は、プロレスファンとして強烈なカタルシスを得られます。
胸を張って帰りたい反面、”島民”としては少し肩を落としたのも事実。準決勝以降は全部押出し決着でしたし、打撃による一本勝ちも少なく若干モヤっとしたのは否めません。
タックルが上手い裸の選手が優勝した今大会。「巌流島タックル問題」と名付けたいです。この議論は「やらなきゃ意味ないよ」と聞こえてきそうですね。
背面タックルではなく、しっかりとルールに則ったタックルですが、奥田選手の4つの勝利は全部押し出しでの勝利。
そして、ワンマッチのシュレック関根選手vs鈴川選手は、柔術着vs廻し姿という絵面こそインパクトありましたが、想像していた試合展開にはならず、噛み合ったとは言いがたい試合でした。
トーナメントにしろ、関根選手vs鈴川選手にしろ、巌流島道着着用であれば展開も変わったのではないか、と思います。
実戦性を謳うのであれば道着(着衣)は必要ですし、異種格闘技を謳うのであれば各々のバックボーンコスチュームは必要。
中澤選手やアキラ選手に関しては巌流島道着は似合わない。あのままで戦うからこそ意味があるし、唯一無二の異種格闘技イベント、武道エンターテイメントになるわけです。
押し出しと道着。なんとも折り合いがつきませんが、だからこそ議論しがいがあります。
賛否両論出ていますが、ほとんどのお客さんは興味があったから会場に行ったわけで、単に「つまんなかった」とただ否定するのではなく、「どうすれば面白くなったか」「自分だったらこういうルールにする」と考えるのが大切です。
ちなみに、私は「グラウンド状態での転落(転がし)は有効扱い」くらいで、ある程度バランスよくなるんじゃないかと思いました。土俵際の粘った攻防はなんだかんだ会場が盛り上がるので、転落のルール自体はなくしたくないです(両端に幅150cmの金網を設置するという案もあります)。
また道着に関しては、開催前までは巌流島道着に統一してほしい派だったんですが、バックボーンコスチュームは個性が出てきてやっぱり面白い……。ワンマッチであれば基本着用で、両者合意のもと「あり・なし」を決めるくらいしか思いつきません。
29日放送後にどういった議論が展開されるかも含めて、出てきた意見をしっかりと精査し、次回大会に繋げてほしいです。