【10.21全アジア武術選手権大会】誰が化けてのし上がるか? 僕は空手と柔道に期待している
9月12日(月)のブロマガ………お題「10・21巌流島・全アジア武術選手権大会の見所」
まあ、よくもこんな顔ぶれを集めましたね。中国プロ散打 韓国テコンドー、ムエタイ、モンゴル相撲、日本の空手と柔道、そしてロシアのハンド・トウ・ハンド、イランのカンフートーアってなんでしょう? よく知ってる格闘技と、全く未知の格闘技が巌流島ルールのトーナメントで競い合う。未知の選手から誰が化けてのし上がるのか? ここに創世記の格闘技の魅力が詰まっている。逆に言えば化ける選手が出ないようでは、興行は行き詰まる。
僕にとっての今回の見所は、カオス状態のトーナメントではない。日本人選手2人が僕には気になる。菊野選手は前から気になる選手だった。沖縄拳法空手を名乗り、古流の知恵を格闘技の試合で活かす選手。前回の試合は4秒KOというインパクトのある試合。さて今回は注目を浴びる中でどう闘うのか?
もう1人の日本人の小見川選手は、シュートボクシングの試合でレフリーをしたことがある。レフェリーをやりながらよい選手だなと思った。
巌流島は「武道エンターテイメント」を掲げている。武道とは武術とも格闘技とも違う価値観で出来ている。明治維新以降に衰退した武術を武道として再興したのが、柔道の嘉納治五郎先生。武道としての空手と柔道は深い関係にある。嘉納先生が空手を沖縄から本土に招聘し普及に協力、尽力した経緯がある。空手も柔道と共に武道として本土で新たな出発をしたのだ。明治初期の空手と柔道は兄弟のような関係にあった。武道としての新たな概念を加えながら、新しいスタイルを共に模索し、共に普及を図った時代がある。明治以降の空手と柔道は、それまでとは全く違った概念と技術体系を持っている。
柔術にも空手にも本来、江戸時代以前には、道衣は存在せずに段位制度も存在しない。嘉納先生による考案で柔道と空手に道衣と段位制度が生まれたのだ。空手と柔道の道衣が似ていて段位制度を持っているのには理由がある。前回の東京オリンピック開催には、嘉納先生の御尽力の功績が大きかった。そして次回の東京オリンピックには柔道と共に空手も登場する。巌流島でブレイクしてほしい競技なのだ。
小見川選手は柔道出身なのに打撃が上手い。そして足腰が強い。シュートボクシングの選手が、小見川選手に負けた試合を裁いたことがある。小見川選手の打撃は、シュートボクシングの基準でいうとあまり上手くない。綺麗なジャブや左ミドルを出せるわけではない。でも僕はレフェリーをやりながら上手いなと思った。自分の出来ることだけを確実に試合で実行する。これは簡単そうで実に難しい。自分の基本であり武器である柔道に、打撃を上手に組み合わせたスタイルは派手じゃないけど、確実で堅実なスタイル。出来ないことはしないで、確実に出来ることで勝負に徹する。これはアマチュア出身だからなのかな?
ミスをしないで確実に自分が出来ることを試合で行う。これは玄人受けするスタイル。今回の試合形式は巌流島。確実な打撃と世界レベルの柔道の投げ。そしてそこに相撲の押し出しを加えてくれたら、あの足腰の強さで、押し出しをすると立ち技の打撃系の選手にはきつい、無理に耐えて動きが止まれば柔道の投げもある。巌流島は道衣着用だから柔道の技術も使いやすい。派手じゃないけど堅実な打撃もある。しかも小見川選手は強打を持っている。上手くミックスすると大化けする可能性がある。もっとも闘うのは僕じゃないから、全く別のスタイルかもしれないが。試合前の想像力をかき立てられる良い選手が小見川選手なのだ。総合では堅実に見えたスタイルが、押し出しと道衣着用で圧倒的に強い選手に化ける可能性がある。
前回の4秒KOからの試合。菊野選手はまた前に出る勇気を試合で出せるのか?そこに僕は興味がある。同じように前に出ても同じように倒せるとは限らない。相手を倒せる距離は自分も倒れてしまう距離でもある。そこを相手よりもホンの少し前に出る勇気を持って実行する。ほんの少しが実は隠れたコツなのだ。同時に打ったパンチは、足の指1本の少し短いくらい前に出た方が先に当たる。言葉にすれば簡単で実行するのには困難が伴う。足の指がほんの少し短いだけで良いのだ。足を一つ分前に出せば、出し過ぎになって拳は相手に近く成り過ぎて威力が消えてしまう。ポイントがずれるのは遠いだけではなく、近くでもKOにはならない。試合では前に出るプラス距離感が必要になるし、前に出るばかりでは相手に読まれる。距離感が合わないまま単純に前に出れば、危険な状態なる。そのあたりも含めて、プロの試合で本当に前に出るということなのだ。前に出ないで下がりながら試合をする。下がって相手を前に出して先に当てる。下がりながらなのに、前に出るのと同じ状況を作れば打撃はさらに威力を増す。優れたボクサーはこんな芸当が出来る。
今回はトーナメントなので、全3試合をすべて短時間のKOで終えるのは至難の技になる。それを達成出来たら菊野選手は一気に駆け上がれる。巌流島の軸に成れるし、巌流島もスターを抱えた団体に大化けする。
それは現実的に非常に難しい。菊野選手に他意はないが、それは現実問題として難しい。1発が当たらない時でも焦らずに試合をこなし、やって来たチャンスを逃さない。1発KOを狙うだけの選手の何倍もそういう選手の方が強いし魅力的。試合の中で自分のペースを作り、確実にKOで仕留める。菊野選手は頭が良い選手だと感じる。1発KOの次の試合の進化が見れる気がする。ただ同じことをやったら墓穴を掘る。1発KOの後の落とし穴にはまった選手を、僕は何人も知っている。1発KOの後の進化を菊野選手が見せてくれたら。彼は大化けする。
日本人2人に、そして空手と柔道に僕は期待する。僕は当日は審判なので中立な立場であり、試合に見入ってもいけないのですが、正直、この2人の試合を今から楽しみにしている。