この男、巌流島の理想のサムライ! レロが語る「カポエイラとは何か?」
「私は母親のお腹の中にいる時から、すでにカポエイラをやっています!」
巌流島の理想は、自身が学ぶ流派の技で美しく勝つこと。その意味でカポエイラ・マスター、マーカス・レロ・アウレリオは、巌流島の理想のサムライだ。難しいと言われるカポエイラの技で、本当に勝ってしまう「巌流島のスター候補ナンバー1」のレロに話を聞いた。
————レロ選手のバックボーンである「カポエイラ」は、どういう武術なのでしょうか?
レロ カポエイラは、ブラジルの黒人奴隷が約400年前に創った武術です。奴隷たちは武術の訓練を禁じられていました。いうまでもなく支配者たちにとって奴隷が力を持つのは危険なことだからです。そこで奴隷たちは音楽に合わせて舞踊を練習するふりをしながら、戦闘の訓練を行い、密かにカポエイラを編み出しました。そうしてアクロバティックなカポエイラの動きが生まれたんです。
————いつ、どんなきっかけでカポエイラを習い始めたのですか?
レロ 父親がカポエイラのマスターなので、うちはカポエイラ一家なんです。母親もカポエイリスタ(カポエイラ・プレーヤー)で、僕を身ごもっている間もカポエイラをやっていたみたいです。つまり私は母のお腹にいるときには、すでにカポエイラを始めていたということですね(笑)。実際に物心ついた頃から父とカポエイラの修行を続けてきました。私の家族では全員がカポエイラをやります。それが我が家の伝統なんです。
————カポエイラの技の特徴を教えてください。
レロ カポエイラには多種多様な技が存在します。非常に危険な技もあれば、エンターテインメント用の見せる技もあります。舞台でカポエイラを披露するときは、アクロバティックで舞台に映える動きを使い、実戦で闘うときには伝統的なカポエイラの戦闘用の技で闘います。生き残るためには何でもやる。それがカポエイラ本来の哲学です。
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————カポエイラでは精神的な部分も重視しますか?
レロ カポエイラは世界中のすべての人が参加できる武術です。いかなる宗教や思想の人にも開かれているものなんです。カポエイラの流派によって、それぞれの考え方がありますが、私達の流派では師匠を敬い、伝統的なカポエイラの教えを重視します。そして次の世代へとカポエイラを引き継いでいくために活動しています。
————カポエイラの競技ルールを教えてください。
レロ 競技大会では、フルコンタクトで攻撃しあうわけではなく、演武としてのカポエイラの美しさを競います。演武を通して、カポエイラの美しさや楽しさ、実戦性などを同時に表現するんです。
————レロ選手のカポエイラ大会での実績は?
レロ カポエイラ北米選手権を制し、世界選手権では準優勝しています。ただ、私はカポエイラで一番大切なことはランキングではないと考えています。今はカポエイラの“マスター”の称号を得るのに相応しい人間になるため、修練を続けています。
————他にどんな格闘技を経験してきましたか?
レロ ブラジリアン柔術、ムエタイ、ボクシング、さらに柔道も学んだことがあります。それぞれの格闘技から必ず得るものがありますから。そうして学んだものを自身のカポエイラに還元させて、また成長していくことが大切です。
————ブラジルに日本の“サムライ・スピリット”のような哲学があれば教えてください。
レロ 我々、ブラジル人の心には、カポエイラを創った奴隷たちから伝わった不屈の精神があると思います。それが我々にとってのサムライ・スピリットだと言えるでしょう。
————これまで2度、巌流島に参戦していますが印象は?
レロ 巌流島のスタイルは大好きです。まずリングではなく、円形の闘技場で闘うのが新鮮で驚きました。寝技の膠着がないのも、展開が目まぐるしく変わっていくのですごくいい。格闘技イベントとしての巌流島のプレゼンテーションは素晴らしいです。それと日本の格闘技ファンは世界一ですね! また日本で闘えるのがとても嬉しいです。
————では最後に今大会に向けてメッセージを!
レロ 次の試合も面白いものになるでしょう。よいトレーニングができていて、体調もよいです。試合ではいつも自分の100%のパフォーマンスをお見せするように心がけています。今回もファンの方々に最高の試合を披露したい。もちろん実際に闘うまでは、どういう展開になるかは分かりません。どんな戦法でいくかはまだ秘密です。それにいざ闘技場に立ったら、一番重要なのは本能で闘うこと。何が起きるかは誰にも分かりません。だからこそ、ぜひ実際に会場に来て観戦してください。そこで起きることは、人生でその一瞬だけの貴重なものですから。皆さんと会場でお会いするのを楽しみにしています!
『全アジア武術選手権大会 2016 in TOKYO』チケット情報