「巌流島は天下一武道会に出ている気分で楽しい!」
東南アジアの謎の格闘技シラットと闘う、渡辺一久インタビュー!
…………巌流島への3度目の参戦が決まりました。
渡辺 いつもそうですけど、今回もワクワクしています。
…………昨年7月の両国大会のトーナメントでは、惜しくも決勝戦でビターリ・クラット選手に敗れてしまいました。
渡辺 初めて70kgの階級で闘ってみて、骨格の違いを感じましたね。実際に拳を交えてみて、やっぱりデカいなぁと思いました。だからといって、もう大きい相手とはやりたくないということではなくて、次はデカいやつをぶっとばしてやりたいです。ビターリにもリベンジしないとね。
…………何戦か経験して、巌流島での闘い方は固まってきましたか?
渡辺 いやぁ、巌流島は異種格闘技だから、相手のスタイルが毎回違うじゃないですか。セオリーはあってないようなものだから、自分の闘い方を貫くしかないと思ってます。とにかく思いきりパンチが打てれば。それが僕の闘い方なんで。
…………異種格闘技という部分で、ボクシングを代表している意識はありますか?
渡辺 ありますよ。殴り専門とういか、やっぱり殴って倒したいですよ。まぁ、組んだら組んだで、男の負けん気があるので、腰の強さを見せて投げ返したくなるんですけどね。
…………第一回大会ではボクサーらしからぬ、綺麗なフロントネックチャンスリー・ドロップを決める場面もありました。
渡辺 え? フロント・ネックチャンスリーって何ですか?
…………プロレスのDDTみたいな体勢で、相手を後方に投げる技です。
渡辺 ああ、あれは意識せずに自然に出ちゃった技なんですよ。自分でもあの技がどこから出てきたのかわからないくらいで(笑)。逆に変に狙っちゃうと、うまくいかなくなるんです。だからやっぱり本能のままに闘うことですよね。自分でも自分が次に何をするのか楽しみです。何が飛び出すか、わからないので。
…………3.25巌流島で対戦するバラット・カンダレ選手は、シラットという東南アジア武術の選手。まさに未知の相手になります。
渡辺 いやぁ、シラットはやばいでしょう。といってもシラットが何なのか知らないんですけどね(笑)。シラットは蹴りが強いのか、投げが得意なのか、僕には一切データがないですから。対戦相手の映像を見たら、体が大きそうな印象だったので、とにかく当たり負けしないことかな。あとは未知の格闘技といっても相手に腕が四本あるわけじゃないですし、もうやるだけです。
…………巌流島のテーマのひとつに“実戦”がありますが、ボクシングという競技でチャンピオンになった渡辺選手は、実戦をどう捉えていますか?
渡辺 実戦というとケンカになるんですかね? 僕はボクシング、キックボクシング、総合格闘技とやってきて、競技とケンカは違うものだと思いますけどね。とにかくキックボクシングとも総合とも違う巌流島という舞台で、自分らしい闘いができればいいと思っています。
…………巌流島という舞台の魅力はどんなところでしょうか?
渡辺 闘っていて、すごく気持ちいいんですよ。これはあの闘技場の上で闘ってみないとわからないことなんですけど、やっていてすごく楽しい。子供の頃に見ていたドラゴンボールの天下一武道会に出ているような気分ですよ。ロープとか金網がなくて、観る側にとってもわかりやすいでし。他の選手たちも巌流島に来たらいいのになぁ。みんな、実はこっちが面白そうだなぁと思ってるはずなんですけどね。あとはルールさえ定まれば、巌流島ってすごく可能性があると思います。
…………ルールはまだまだ整備されていない印象ですか?
渡辺 やっている僕自身、まだルールがよくわかっていませんから(笑)。どんなルールで、どういうセオリーで闘うのが正解なのかがまだよくわからない。ボクシングだと、左ジャブを打ちながら時計回りに差し合いをするセオリーがありますよね。巌流島のルールも早く確立されたものになってほしいです。
…………ボクシングという競技で王者になった人間として、ルールは固定化してほしい?
渡辺 “公開検証”と銘打ってやっていますけど、ある特定のルールでいくと決まれば、選手たちはみんなそれに合わせて練習するわけじゃないですか。早くその段階に持っていってほしいですよね。これぞ「巌流島ルール」というものを定めてほしいです。
…………ただ、格闘技としてセオリーが定まってしまうと、すべての選手の闘い方が均等化されて、魅力を失う部分もあるかと思います。
渡辺 そうなんですよねぇ。そうするとルールは変え続けていったほうがいいのかなぁ……。
…………そのほうが格闘技コンテンツとしては面白いものになるのかもしれません。選手は大変かもしれませんが(笑)。
渡辺 そうかぁ。そういう考え方もありますよね。毎回、ルールに縛りをつけていくのもいいかもしれないですね。
…………例えば、「1分10ラウンド制」でやってしまうとか。短期決戦こそ実戦的という考え方もあるでしょうし。
渡辺 ああ、なるほど。よく考えたら「3分1ラウンド」とか誰が決めたんだって話ですしね。3分って何なんだって話だもんなぁ。1分だったら、僕が最強かもしれないし(笑)。
…………誰かが決めたルールひとつで“最強”の規定値がひっくり返ることもあると思います。
渡辺 たしかにそうですね。そう考えると面白いなぁ。
…………闘うということに関しても、「なぜ闘うのか」が問われるようになってくると思います。渡辺選手はなぜ闘うんでしょうか?
渡辺 僕の場合は単純に自分が楽しいからというのと、あとは僕の試合を見たがって待ってくれている人がいるから。僕が闘っているのを見て、元気が出たとか、勇気をもらったとか言ってくれる人がいるんですよ。ありがたいことにね。そういう人たちのために闘っているところが大きいです。
…………自分だけのために闘うのでは限界がある?
渡辺 そうだなぁ、あまり自分のためには闘ってないですよ。「やっぱ渡辺の試合は面白いなぁ」と言ってくれる人がいるから、やる意味があるのであって。自分が気持ちよく闘って、みんなにも喜んでもらえたら一番いいのかなと思います。まぁ、やりたいようにやりますよ。今回も暴れますので3月25日、会場に応援に来てください。