「なぜ柳龍拳と決闘することになったのか?」 You Tube回数400万越えの男・岩倉豪インタビュー
毒針使うとか、決闘後に袋叩きに合うとか、むちゃくちゃ緊張しました
…………岩倉選手の格闘技歴を教えてください。
岩倉 13歳から柔道を始めまして、空手をやっていた経験もありますが、一番のバックボーンになるのは柔術です。今も柔術の試合に出ていて、指導者として格闘技を教えたり、各地の格闘技大会に選手を派遣する仕事をしています。
…………岩倉選手といえば“柳龍拳の前歯を折った男”として知られているわけですが。
岩倉 いやぁ、あの時はいろいろと大変でしたよ(笑)。
…………柔術家でありながら柳龍拳さんをパンチでボコボコにしていましたよね?
岩倉 あれは心理戦を用いた奇襲なんですよ。試合前、相手に対して、自分はあくまで柔術家だという情報を与えておきました。そうして寝技でくるだろうと思わせておいて、殴りにいくという奇襲作戦だったんです。
…………試合前から闘いは始まっていた?
岩倉 それが本物の決闘であり、実戦というものですよ。試合当日、会場に向かう途中で、謎の人物が僕に接触してきて「柳龍拳さんはめちゃくちゃ強い。闘うのはやめたほうがいいですよ」と辞退するよう勧めてきたりとか(笑)。お互いにいろんな揺さぶり合いがあるわけですよ。
…………柳龍拳さんと試合をしたのは2006年でしたよね。そもそも、どういう経緯であの一戦が実現したんでしょうか?
岩倉 最初は“探偵ファイル”というサイトの編集長が、合気の達人を自称していた柳龍拳さんに挑戦状を出そうといって始まったんです。当時、柳さんは「誰の挑戦でも受ける」と公言されていたので。そして僕はその編集長に格闘技を教えていたんです。その関係から探偵ファイルと柳さんが揉めているのを見て、いさめようと思い仲裁に入ったら、今度は「だったら岩倉、お前が出てこい!」という話になって。そうしてお互いヒートアップしていって、やらざるをえない状況になってしまったんです。柳さんとしても、流れの中で引くに引けない状況になったんだと思いますよ。
…………当時65歳の老人だった柳龍拳さんを若者が本気で殴るのはいかがなものか?という意見もあります。
岩倉 それは終わったから言えることであって、あのときの僕には柳龍拳が何者かわかっていないわけですから、必死ですよ。柳さんは他に公開で試合をしていなかったから情報がなかったし、本物の達人の可能性もあったわけで。
…………その状況では本気で殴りにいくのも当然だと。
岩倉 もちろんです。それにものすごい緊張感の中でやった決闘だったので、相手がいったい何をしてくるかわからなかった。毒針をしかけてくるかもわからないわけですよ。
…………投げでも打撃でもなく、まさかの毒針殺法!(笑)
岩倉 いや、笑うでしょうけど、あのときの僕は本気でそれくらい考えていたんです! 闘っている最中に毒が全身に回ってきてバタンと倒れるかもしれない。そうなる前に短期決戦で勝負を決めにいったんです。実戦というのはそういうことですよ。何があるかわからないんですから。
…………競技の範疇外の闘いまで想定しなくてはいけない?
岩倉 それこそ巌流島の宮本武蔵じゃないですけど、決闘に勝ったとしても、その後に敵の門弟たちに襲われて、やられてしまうかもしれない。僕の場合も、柳龍拳さんの地元の北海道に乗りこんでいったわけで、完全なるアウェイでしたからね。勝ったとしても、その後にみんなに囲まれてボコボコにされるんじゃないか、というくらいの異様な雰囲気はありましたよ。
…………映像を見た印象以上に殺気だった空気感の中で行われていたんですね。
岩倉 YouTubeの動画には映っていないですけど、試合後、現場にいた警察官が「決闘罪で逮捕する!」と言い出して一悶着する場面もあったんですよ。決闘罪って、ちょっと待ってくれよって話でしょ(笑)。試合の契約書を見せて、なんとか事なきを得たんですけどね。その後も“老人虐待”と批判を浴びて、当時いた道場にいられなくなったりもして。まぁ、散々でしたよ(苦笑)。
…………岩倉選手こそ被害者なのかもしれません……。
岩倉 ただ、これだけは伝えたいんです。皆さんが言うように柳龍拳は偽物かもしれません。でも武人として果たし合いの場に出てきたわけですよ。そういう意味で、柳龍拳は武道家としては本物だと僕は思っています。
…………本物の達人というのは存在するのでしょうか?
岩倉 本物はいますよ。僕、若い頃に塩田剛三先生のセミナーで手合わせさせてもらったことがあるんです。そのときに塩田先生に本気で左ストレートを入れたら、その勢いのまま投げられて、肩を脱臼してしまったんですよ。
…………おお! やはり塩田剛三は本物でしたか?
岩倉 僕はこれまで本物の合気の達人を3人見ています。人間の身体構造を理解したうえで、巧妙なトリックを仕掛けているんだと思うんですけどね。要は昔の武術における門外不出の秘伝。見た者は必ず殺せという形で、一子相伝で秘密を守っていく巧妙なトリック。それが達人の技だと思います。
…………巌流島の第2回大会に出場した“60歳の達人”こと渡邉剛さんは、何もできないまま15秒でパンチでKOされてしまいました。
岩倉 あの合気の方は、巌流島の舞台に呑まれたんでしょう。合気を捨てて殴り合いにいきましたよね。自ら打撃格闘技の枠に入っていってしまった。それでは合気の選手が勝てるわけがないですよ。僕はいかに巌流島の枠にはまらずに闘うかがポイントになると思っています。いかにして自分の闘いに相手を引きこむかが勝負でしょう。
…………3.25巌流島では中国武術の達人である瀬戸信介選手と対戦するわけですが。
岩倉 瀬戸選手は蟷螂拳の使い手といわれていますけど、キック等の試合経験がある人なので、純粋に打撃格闘技の実力者として捉えています。それと人づてにとにかく身体能力が高いと聞いていますので、そこは脅威ですね。
…………その打撃の実力者を柔術家である岩倉選手はどう攻略するつもりですか?
岩倉 はっきりいって、巌流島のルールで柔術家が闘うなんて無謀ですよ(笑)。寝技が使えないルールで柔術家にどう闘えというんだと。この試合のオファーを受けてからルールをよく見たら、グラウンドで関節技が使えないというのを知りまして。断ろうかとも思ったんですが、やはり一度受けたからにはやろうと気持ちを入れ替えました。
…………巌流島のルールでは立ち関節技は認められていますが?
岩倉 動きを回っている相手を立ち関節で極めるのは難しいですよ。しかも相手が身体能力の高い瀬戸選手となるとほぼ不可能です。跳び関節を狙ってもグラウンド状態になったらブレークになるでしょうし。そういえば柳龍拳さんのときは、相手の道着の袖を掴んで、動きをコントロールしながら殴って仕留めたんですよ。あれは柔術のテクニックを応用したものなんですけど、巌流島の道着には袖もないですから、柔術の活かしようがない……。
…………ではそんな不利な状況で、岩倉選手はどう闘うつもりですか?
岩倉 実はひとつだけ方法があるんですよ。そんな状況でも、これが決まれば勝てるという秘策がひとつだけある。巌流島のルールの盲点をつく秘策が。その作戦がうまくはまれば勝てます。逆にいうと一発勝負というか、その狙いがはずれたらもう僕に勝機はないでしょう。そのときは覚悟を決めます(笑)。
…………一か八かの賭けに出ると。
岩倉 そうするほかない。巌流島の大会名が「公開検証」になっているように、僕もまさに実験を行うわけです。
…………でも、策士の岩倉選手の言葉をそのまま鵜呑みにしてもいいものでしょうか? また柳龍拳さんのときのように、心理戦で相手を揺さぶっているだけかもしれません。
岩倉 さぁ、それはどうでしょうねぇ。まぁ、当日を楽しみにしていてください。
柳龍拳 vs 岩倉豪の果たし合いがこれだ!
⇒https://www.youtube.com/watch?v=7jf3Gc2a0_8