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還暦すぎていまだ現役! ボディビルでも日本一に輝いた角田信朗が語るドーピング問題

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文◎角田信朗(ヘルメス・レフェリー)

文◎角田信朗(ヘルメス・レフェリー)

 

いま巷で話題となっているドーピングについて、私なりの意見を寄稿させて頂きます。

意見は100人いれば100様。私の意見を、これが正義だと振りかざすものではありません。格闘家の一人として、アスリートの一人として思うことを述べさせて頂きます。

ドーピングというのは、覚醒剤などの違法薬物と違って、社会一般における法律違反には該当しませんので、使うのは個人の自由と言ってしまえば自由です。

が、勝敗を競う競技スポーツにおいて、定められたルールに抵触する禁止薬物を使用する事は、ルール違反であるのは当然のこと。任侠映画で言えば、賭博でイカサマをするのと同じなんですね。

ルールに抵触するような禁止薬物を使ってまで、つまり、インチキをしてまで勝とうとする。その姿勢を私は単に「潔くない」「漢らしくない」と斬り捨てます。

勝負に対するイカサマというのと同時に、自分の努力や汗と涙にインチキを持ち込んで、それで自分を高めたと勘違いすることは、アスリートとして恥じるべきことであると。そんな選手を、少なくとも私は応援しないし尊敬もしない。

サムネ

検査結果云々の話になると、これは私自身、ボディビルの世界に足を踏み入れ、JADA(日本アンチドーピング機関)のドーピングチェックを3回受けた立場でモノを言わせて頂きます。

このドーピングチェックは、非常に厳密なモノで、いわゆるオリンピックにおいてアスリートに課せられるものと全く同じです。

JADAの委員立ち会いのもと、尿を採取し、その尿を検査用の容器に移す際にも、非常に厳密な過程を経ます。

私は3回の検査とも、禁止薬物に抵触せず、この事を競技者として誇りに思います。イカサマに頼らず、己の血と汗で限界の扉をこじ開けたところにこそ、真の達成感はある。

ところが、この禁止薬物リストというのも、定期的に刷新されます。

というのも、禁止薬物リストに挙がっていない、新たなる薬物を作って選手に使用させるメーカーが存在する。

「疑わしきは罰せず」で検査をクリアしてしまえば、選手はシロという事になりますが、要するにイカサマをしているのは事実なわけです。バレないようなイカサマをした、ということですね。

ボディビルの世界の話をすると、私が所属していた日本ボディビル・フィットネス連盟は、JOC(日本オリンピック委員会)の傘下にあり、JADAのドーピングチェックを受ける際の費用に関しても、その何割かはJOCの助成を受けているのではないかと思います。

世間一般の格闘技団体が、これに準じたドーピングチェックを同様に受けられるかというと、そこにはかなり高いハードルがあり、しかもJOC傘下の組織でない場合には費用が爆発的に高くなる。

ですから、格闘技団体がこの検査を行うためには数多くの無理が存在するわけです。

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で、日本連盟のこのドーピングチェックが、ある時期から突然、簡易検査(首筋をコットンで拭って、それを検査紙にてチェックする)に変わりました。

私が出場した2023年の日本マスターズでは、この簡易検査を受けました。なぜ突然簡易検査に変わったのか?

私が日本マスターズで優勝し、日本代表としてスペインで開催された世界選手権に出場した2022年。大会開催の数日前だったか、開催直後だったか、WADA(世界アンチドーピング機関)から、IFBB(世界ボディビルフィットネス連盟)に対して厳重警告が為されました。

要するに、加盟選手にあまりにもドーピング違反の選手が多いための警告指導であり、結果、IFBBは、WADAの検査対象から外されてしまったのではないか?と推察します。日本連盟の検査が簡易式に変わったのも、下部組織としてこの事態に準じたからではないかと思われます。

この簡易検査に関しては、JBBFがその結果を公表していますが、そこに列記された16種類の禁止薬物は、全て覚醒剤・麻薬系のモノばかりで、いわゆるアナボリック(タンパク同化)ステロイド類は含まれていません。

前者は興奮剤系、後者は劇的な筋肥大に繋がるものですね。

つまり、これらアナボリックステロイド系の検査はなされていないということになります。なされていないのであれば、これはザル法ということになる。

つまり、検査でシロか?クロか?というのも、純然たるシロなのか、バレないインチキをしたシロなのかは、本人にしかわからないわけです。

以上のような理由から、すべての面で公正・公平な検査が行われることがなかなかに難しい状況の中、まずは選手自身にアスリートとしての誇り・矜持があるのかどうか? ファンにもその精神があるのかどうか?

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薬物使用による後遺症は、どれも本当に目を覆いたくなるような惨状ばかりです。

ボディビルの世界では、薬物を使う事を暗黙に認めた上で、「モンスター化」したビルダー達がそのお化け度を競う「ミスターオリンピア」という最高峰がありますが、ここに出てくる選手達の肉体は、ある意味、人間の常識を超えたもので、好きな人達には堪らない魅力かもしれません。

しかし、ここで闘ってきた数々のビルダーは、今や廃人のように、車椅子に乗ってヨボヨボのお爺ちゃんになっていたり、片足を切断したり、中には心筋梗塞を起こして他界した選手達もいます。

しかし、この大会を見て、あいつステロイド使ってるやろ!!と批判する人は誰もいません。選手もファンも皆、割り切っているのです。

格闘技の大会も、競技として開催する以上、そこにはルールという物差しに則った公平さが絶対条件となる。そこで、その物差しとなる検査を行うことが完全ではないとしたら、これはもう選手とファンの皆様の良心に委ねるしかなくなる。

インチキ・イカサマをするのはファイターの恥だ、という矜持。

そして、そんなイカサマをする奴を俺たちは応援しない!!というファンの矜持。

あるいは選手が自らの潔白を証明するためなら、高額な検査費用も、選手のファイトマネーから差し引けばよいのではないでしょうか。

それが無理なんだったら、ボディビルの大会と同じく、ドラッグフリーのナチュラルな大会と、ドラッグを使ってもいいから、モンスター同士の殴り合い蹴り合い掴み合いを楽しむ、決して上品とは思えない大会も、ファンと選手が望むのなら、差別化して開催すればよいのではないでしょうか?

そうすれば、誰からも文句は出なくなると思うのですが。

人間辞める人生を良しとするなら、ドラッグユーザーの大会を開催なさっては? というのが私の個人的な意見です。

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