巌流島ルールは全ての格闘技に不平等なルール! ミャンマーラウェイは巌流島でサバイブできるか!?
niconico動画の『巌流島チャンネル』でほぼ毎日更新していた「ブロマガ」が、オフィシャルサイトでパワーアップして帰ってきました。これまでの連載陣=谷川貞治、山田英司、ターザン山本、田中正志、山口日昇に加え、安西伸一、クマクマンボ、柴田和則、菊野克紀、平直行、大成敦、そして本当にたまに岩倉豪と、多種多様な方々に声をかけていく予定です。ぜひ、ご期待ください!
6月11日(土)のブロマガ………お題「7・31巌流島で楽しみにしている試合」
5月1日に横浜文化体育館で開催されたキックボクシング大会『ZONE』にて、ミャンマーラウェイの試合が2試合行われた。ラウェイルールはこれまで日本でも何度か行われ、ミャンマーの選手が招聘されて日本人選手と対戦したのだが、自分が見た中でも『ZONE』の2試合は飛び抜けてインパクトがあった。
特に2010年ラウェイ王者ソーゴームドー(ミャンマー)が元ラジャダムナンスタジアム認定国際式ボクシング・スーパーウェルター級8位プロイタクシン・ノー・ナクシン(タイ)を1RでKOした一戦。ソーゴームドーは相手の足をなぎ払うようなローキックでプロイタクシンのバランスを崩し、パンチの連打から頭突きを見舞ったのである。この一撃でプロイタクシンは完全に失神。目を見開いたままピクリとも動かず、リング上は一時騒然となった。
ラウェイに何度も挑戦経験がある寒川直喜は、「ラウェイは頭突きなんですよ」と語ったことがある。コンビネーションの中に頭突きが組み込まれているという、おそらく世界でも類を見ない技術体系こそがラウェイの強さである、と。
今回の巌流島には、そのソーゴームドーを1月にKOしているトゥントゥンミンが参戦する。ソーゴームドーをKOした男って、どれだけ強いんだ!? と想像力をかきたてられるところだが、ちょっと待った。巌流島ルールで頭突きは禁止である。ラウェイ最大の武器である頭突きが禁止されるということは、カポエイラに蹴りを使うな、柔術に寝技を使うなと言っているのと変わらない。ラウェイから頭突きを抜いたらムエタイとほとんど同じになってしまい、パンチ、蹴りだけならムエタイの方が上なのではないか。
ちなみに、スーパーセーフ着用ながら頭突きが認められる空道は、パンチと蹴りが主武器でそれに投げや寝技が付いてくるものであり、頭突きを禁じられても武器はまだ多くある。今大会に出場する2014年第4回世界空道選手権大会270+級で優勝したエブゲニー・シャロマエフ(ロシア)は、パンチとハイキックが得意なので大きな影響はないだろう。
余談ではあるが、日本人として初めてUFCに挑戦し、ホイス・グレイシーと対戦した元・大道塾の市原海樹は、現地でミャンマーラウェイの試合に飛び入り参加し、KO勝ちを収めている。その過去を考えるとトゥントゥンミンvsシャロマエフをラウェイルール、もしくはスーパーセーフを着用して頭突きを認めた特別ルールで対戦させたら、なかなかのドラマなのだが……。
話は戻って、頭突きを封じられたラウェイである。最大の武器を失って、どう戦うのかが今大会の見どころだ。ムエタイもヒジや首相撲を封じられて戦うことがよくあるが、パンチと蹴りの技術レベルが高いためそう簡単には負けない。ラウェイもまた“禁じ手”があっても、素手の殴り合いで鍛えたパンチで強さを発揮できるのだろうか?
でも考えてみれば、瀬戸信介選手の蟷螂拳も指で目を突くのが最大の武器であり、それを封じられた中で前回勝利を収めた。よく言われるように「強いヤツはどんなルールでも強い」ことを証明するのが、この巌流島ルールだと言えなくもない。全ての格闘技に平等であるようで、全ての格闘技に不平等な巌流島ルールでは、その選手の“生命体としての強さ”が試されるのだろうか。
地上最も過激な格闘技と言われるミャンマーラウェイで、勝ち残ってきた精神力、気持ちの強さこそがラウェイ最大の武器になるのかもしれない。