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巌流島とドーピング問題

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文◎谷川貞治 (巌流島プロデューサー)

文◎谷川貞治 (巌流島プロデューサー)

 

今、格闘技界で一番の話題といえば、ドーピング問題だろう。SNSを見てると、もはやドーピング問題というより、足の引っ張り合いみたいなところがあるが、このドーピング問題についてどう考えるべきか、その見解を述べたいと思う。
 
まず、私自身もアンチドーピングには大賛成。ドーピングの何がいけないかというと、大きく分けて二つの理由がある。
 
ひとつは副作用が強く、肝臓や人体のホルモンバランスに大きな影響を与えるため、それを打ち消す薬を服用するなど、身体にかなりの負担がかかるからだ。
 
また、薬物が依存性も高いのも、人体を蝕みやすい一因である。最近でもステロイドの過剰摂取でお亡くなりなられたボディビルダーもいる。
 
しかし、極論をいえば、それは個人の問題。身体が悪くなろうが、それは自己責任の問題で推奨することはないにせよ、他人がとやかく言う話ではない。
 
最近、美容整形が流行ってるが、それも自己責任の問題だし、何らかのリスクを背負っても美しくなろうという覚悟の話である。身体的な代償を犯しても、強くなりたい、金を稼ぎたい、勝ちたいというのは個人の考え方次第である。あくまでも、極論だけどね。
 
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では、ドーピングの何がいけないかというと、自己責任に止まらず、試合においては「公平」でなくなるからだ。だから、ドーピングはダメなのである。
 
スポーツの前提は何かというと、「公平な条件」「平等な条件」で競い合うことにある。 たとえば、格闘技で言えば、同じルール、同じ体重、同じ試合経験(米国アスレチックコミッションでは特に厳しい)を考慮の上で試合が組まれる。
 
これは平等かつ公平なスポーツの精神に則って、世界の常識になっている。そこにドーピングで筋肉増強剤(ステロイド)や興奮剤などの薬物を取り入れることは、もはや平等ではなくなるし、そもそも他の選手が必死に日々のトレーニングを行い、対戦相手を研究し、恐怖に打ち勝って挑み、成果を競い合うものではなくなってしまう。
 
これは考えなくても卑怯な行為であり、スポーツの精神を冒涜する行為だ。だから、ドーピングはダメなのだ。
 
私がK-1プロデューサーだったり、RIZINみたいな格闘技イベントをやるなら、ドーピングに対しては厳しく、誠実に対応していくだろう。なぜなら、これらはスポーツだからだ。昨今のSNS時代では誤魔化しは通用しない。
 
しかし、一方でドーピング検査にはお金がかかる。きちんとやっているUFCは年間ドーピング検査に30億もかけているというから、主催者は頭の痛いところだ。
 
ドーピングは日進月歩で進化していて、やってる選手とはイタチごっこのようなものだから金がかかる。私が知る限り、それをちゃんとやっている日本の格闘技団体はRIZINくらいだ。
 
では、巌流島ではドーピング問題をどう考えるか?  現在、巌流島では選手の契約書にはドーピングの禁止事項と罰則事項を盛り込んでおり、試合後に無作為で尿検査をしている。
 
しかし、実際はマリファナのような違法薬物は出るものの、RIZINのような精密なドーピング検査ではないので限度がある。
 
違法薬物はそもそも犯罪なので、公平とか平等の条件以前の問題で、試合に出場させるべきではないだろう。
 
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しかし、巌流島の理念は「武道』である。武道とはスポーツの真逆、路上の現実を想定し、そこでいかに相手から身を守り、勝つことを目的としている。
 
だから、体重差関係なしの基本は無差別。実戦を考慮した巌流島ルールが主体だが、両者の合意があればいろんなルールで試合することは認めている。これはいわば決闘の発想だ。
 
また、武道は相手が柔道やってるからできないとか、空手をやってるからできないっていうことがないので、全試合異種格闘技戦となる。
 
同じジャンル同士の試合なら、K-1やRIZINのようなスポーツ格闘技のジャンルで試合すれば良い。異種格闘技戦がメインなら、当然経験の差も問わないことになる。
 
そう考えると、ドーピングが不公平なら、そもそも不平等、不公平が前提の武道にとってはアリとなる。路上では相手がドーピングしていようが、薬中だろうが身を守らなければならないからだ。
 
もちろん、武器を持っていたり、複数で襲われたりする場合もしかり。武道はそもそも何でも有りの世界である。
 
しかし、巌流島を始めた時は、まさかドーピングのことまで考えてこなかった。スポーツとは真逆な武道だからこそ、ドーピングに関しては独自の概念を打ち立てなければならないが、この機会に考えていく必要があるだろう。
 
少なくとも、試合と見せている以上、他の格闘技団体の検査で陽性が出たドーピング選手を、対戦相手が拒否するなら、マッチメイクは組むべきではない。
 
では、ドーピング選手でもやりたいと言ってきた場合はどうするか?  武道の理念に則って実現させるか? それともスポーツの常識で片付けるか?
 
そこを真剣に考えていきたい!