GANRYUJIMA BLOG巌流島ブログ

審判団が見た巌流島! いつも高度なMMAの試合を裁いてる梅木レフェリーが書いてくれました

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文◎梅木良則(レフェリー)

文◎梅木良則(レフェリー)

 

巌流島についてのコラム執筆の依頼をいただき、何を書こうかと考えている時、昨年1228日に行われた巌流島の審判団の中に、初期からレフェリーを務めているのは私だけになっていることに気づきました。

そこで私なりに印象深かった試合のお話をしながら、今回約3年ぶりに巌流島が再開したことに対する思いをお話させていただければと思います。

 まず、一番古い記憶では2015718日両国国技館で開催された第2回公開検証での渡邊剛vs中島大志。

それぞれ古流柔術、相撲をバックボーンに持つ両選手でしたが、問題は30vs60歳という年齢差。何かあったらまずいとあっ、と思ったら誰になんと言われようとすぐ止めようと決意にして望んだ試合でした。

実際、中島選手のパンチ一発でフィニッシュ。すぐにかけより意識を確認しようと、顔を見ると意識はあるものの歯が全部なくてびっくり! しかしすぐ総入れ歯ですという言葉を聞いて安心したんだか、どうなんだか、不思議な気持ちになった記憶があります。

次に印象に残っている試合は、20161021日代々木第二体育館で行われた菊野克紀vs小見川道大です。この試合はこれまでの巌流島の試合の中で、ベストバウトに上げる方が一番多い試合ではないかと思います。UFCから帰還した菊野選手が日本での主戦場に選んだのが、巌流島でした。そこから3連勝で迎えた小見川戦。

小見川選手もUFCから帰還し、MMA4連勝後、巌流島へ主戦場を移し2連勝しての試合。

菊野選手は空手、小見川選手は柔道と日本を代表する武道の達人同士。

この二人が巌流島で闘うことに、興奮しないわけがありません。

試合も小見川選手が巴投げで菊野選手を場外へ投げれば、菊野選手は三日月蹴りで小見川選手を転落させるという、お互いの持ち味を存分に出し合った試合となりました。

続いて一番衝撃的だった試合です。201756日舞浜アンフィシアターで行われた鈴木信達vsマーカス・ヴィニシアス。ONE FCでチャンピオンとなり、名実ともにMMAトップ選手となった空手の達人・鈴木選手を相手に、カポエイラがバックボーンのマーカス選手がどこまで通用するのかと戦前は思っていたのですが、試合が始まるとマーカスの後ろ回し蹴りで鈴木選手は場外まで飛ばされ転落。

その後もマーカスのカポエラ殺法が炸裂し、鈴木選手が1RKO負けするという全く予想していなかった決着となりました。

そして昨年1228日、7年ぶりに両国国技館へと戻ってきた巌流島はよりその色を濃くしていました。

サムネ

谷川さんが巌流島は競技じゃない、と常々おっしゃっている通り、ルール、出場選手、競技場、何にもとらわれず、とにかく魅力的な格闘技を見せてくれました。

そしてあれだけの各競技の一流選手、レジェンド選手達が一堂に会するだけの求心力が巌流島にはあります。

どの試合も巌流島でなければ実現しない顔合わせだったと思います。

今の格闘技が競技化に進む中、削り落としているものを巌流島はより膨らましているような気がします。いわゆる逆張り。

2023年の巌流島からも目をはなすことはできません。きっと想像もできないことをやってくれると思います。

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