今大会の注目!パンクラス王者ロッキー川村とFAKE
お題………9・2巌流島・舞浜大会の見所
仇討ちをテーマにした映画のことも書いていいのが今回のブロマガだ。記者の趣味は映画とヘビメタ音楽なので、お題を聞いて色めきたった。武道を標ぼうする巌流島が、いずれはやると踏んでいたテーマであるが、K-1 REVENGEのシリーズ化、呼称の一般化にもかかわらず、あえて日本語表記の「仇討ちADAUCHI」とやっているところが和風の様式美にこだわる巌流島らしい。
仇討ちと言われれば、忠義を重んずるサムライ社会、ひいては日本文化の象徴かも知れない。なにしろ、『忠臣蔵』だけでも、キアヌ・リーブス主演のハリウッド版とか、ロバート・デ・ニーロとジャン・レノの『RONIN』のような、モチーフ借りているものを含めたら、海外作品だけでも膨大にある。それらのネット評などに目をやると、必ず「荒唐無稽の・・・」とやり玉にあがるが浅はかだ。国内制作のTVや映画なんか、ファンタジーを通り越した飛躍物が少なくない。海外版を批判なんかできないことが勉強不足だったりする。
それにしても『忠臣蔵』は世界中で愛されていることは間違いない。それがK-1 REVENGEの“青い目のサムライ”アンディ・フグは同じ相手に二度負けないとか、K-1ブームの核となっていった隆盛の歴史は、本稿で繰り返すまでもなかろう。お茶の間の感情移入の基軸として、仇討ちを格闘技試合に求める心理は自然でもある。先に、海外制作の『忠臣蔵』を引き合いに出したが、プロレスなんか、因縁の抗争が手を変え品を変えて延々と続く大河ドラマのリベンジ編なのであって、そもそも荒唐無稽で正しいのだ。タイガー・ジェット・シンが新宿伊勢丹デパート前で猪木夫妻を襲撃とか、お返しに猪木がシンの腕を折ったりと、現実とフィクションの境域まで見えなくしていたのだから、大したモンである。
格闘技に絞っても、どれかひとつのカードが仇討ち戦として記憶に残るというよりは、例えば桜庭和志の快進撃というのは「髙田延彦がグレイシー柔術に敗れて、プロレスが弱い」と言われた日本最弱論、ドン底からのリベンジ物語であり、主君の仇討ちに桜庭和志が立ち上がる過程に、全国、いや世界が熱狂したのだと考える。
しかるに2017年のマット界、対立概念が希薄化した問題も大きいが、なにか、トキメクような震えるリベンジのカードが提供できてない気がする。アンディ・フグには神風が吹いていた時期があり、だからREVENGEが意味を持ち、カリスマになれたのであるが、今の時代は因縁もなにもないフロイド・メイウェザーvs.コナー・マクレガーのボクシング戦が大衆には関心を呼ぶらしく、100ドルという高額のPPV料金を徴収するが、時流が仇討ちの伏線を求めていないのだろうか?
サムライ末期には、「仇討許可書」を貰えば私刑として許された時代が確かに存在した日本であるが、映画『柘榴坂の仇討』などにも使われるプロットとして、いざ相手を探しあてた時には、明治政府が仇討ち禁止令を発していたという情勢の変化を思わずにはおれない。もちろん、切腹という名誉の死も許されない現代では、マッチメイク泣かせでREVENGEのコンセプトが形骸化してしまっている。
個人的に期待する選手はロッキー川村だ。いよいよキャラの確立が完成段階になっており、プロフィール写真撮影時に表情を作ったとかなら普通だが、試合中でも顔芸をやれるようになったので、被写体として最高に絵になる選手に昇華してきた。
真面目なREVENGE観点では、ロッキー川村は自身との闘いである。パンクラスの現ミドル級キング・オブ・パンクラシストという肩書ながら、対抗戦のオファーを受けなかったとか、防衛戦の期間が空いてしまっている課題に加えて、「どうせプロレス活動が主になっている選手でしょ?」という風評に対して、落とし前をつけようとしている重要な戦(イクサ)ということになろう。しかし、対戦相手は、近くで見たら人間とは思えない肉体の、ヘビー級の関根シュレック秀樹である。無差別級の体裁だが、かなり無茶なカードであることは間違いない。但し、もとは階級分けもなかったパンクラスの原点を振り返るなら、絶対に不利な闘いにミスター・パンクラスのロッキー川村がどう挑むのか。主催者は、スーパーファイトという煽りのカードながら、記者にはこれがイチバン仇討ちを感じさせた皮肉がある。
映画に話を戻すなら、近年もっともREVENGEを感じたのは、“ゴーストライター騒動”で世間を賑わせた佐村河内守氏に完全密着した、森達也監督による衝撃のドキュメンタリー映画『FAKE』である。週刊ファイトではもう4、5回取り上げている興味の尽きない作品だが、BS日本映画専門チャンネルで今、まだ再放送を繰り返すようなので、本稿にも紹介しておきたい。
天下のNHKが、『魂の旋律 〜音を失った作曲家』ドキュメントを放送、“現代のベートーベン”、“耳聞こえぬ作曲家・奇跡の旋律”だと持ち上げた。ところが、ゴーストライターが全聾の設定はアングルだとばらしてしまい、一転してバッシングが始まる。しかし、すべてはそんな単純な構図なのか否か。結果的に、作品は佐村河内守と奥さんのRVENNGE物語にもなっているが、監督は肯定も否定もしていない。メディアへの疑問をぶつけているだけだ。
なにしろ、トランプ大統領がフェイク媒体として攻撃を強めるCNNを標的に、2007年の『レッスルマニア23』の億万長者対決動画をパロディにして、ビンス・マクマホンの顔にCNN仮面をつけてぶっ飛ばして見せたのをTwitter公開する2017年である。仇討ちテーマは、フェイクとは何か?の議論と絡むと面白味が倍増する昨今なのだ。さて、ロッキー川村は、ギミックなのか本物なのか・・・。
『忠臣蔵』の結末は、誰もが見る前から知っている。それでも年末になると、新作だの、旧作の放送が条件反射的に番組表の恒例となるから、その神通力たるや不滅である。映画もプロレスも、ケツは決まっているにもかかわらずだ。但し、ドキュメンタリー映画は、カメラを回し始めた時点では、作り手にもケツがわからない場合が多く、それが特別なクライマックスに繋がることが稀にある。アメリカのプロレス実録物に関しては、人気絶頂だった王者ブレット・ハートの巡業に1997年の約一年間同行した『Wrestling with Shadows』が強烈だ。カナダ人監督は、自国出身の英雄のロードムービーを撮影していくウチに、俗にモントリオールの悲劇と称されるダブルクロス事件に出くわす。「ケツが決まっているプロレスのどこが面白いのか」と嘲笑っていた連中が、最後で底なし沼に突き落とされる衝撃のエンディングが重い。
プロレスでもシュートとワークの境界線がわからなくなることはさておき、格闘技のマッチメイクに関しては、REVENGE戦を組んでも主催者の思惑通りにならないこともまた、楽しみだったりする。9・2巌流島は、次回以降の序章ということになろう。番狂わせの連続を期待してやまない。
9・2巌流島の大会情報はコチラ⇒
『巌流島 ADAUCHI 2017 in MAIHAMA』
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