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立ち止まらない、格通的生き方! リアル刃牙・平直行との30年!

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お題………9.17 刃牙の世界を制するのは誰だ!?

文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)

文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)

 

グラップラー刃牙のモデルにもなった平直行という格闘家との付き合いは、かれこれ30年近くになる。私が大学を卒業して、ベースボール・マガジン社に勤め、そこで『格闘技通信』を創刊したのだが、その創刊第1号から平直行は登場。

当時は佐山聡さんのシューティングに所属していた。その時はもちろん、まさかお互い50歳を過ぎるなんて、想像もしていなかった。もはや「黄昏流星群」だもんなぁ。

平直行はとても気さくで、感じのいい人なんで、ずっと仲良くさせていただいている。しかし、仲がいいと言っても、彼と頻繁に連絡を取ったり、食事をする関係ではない。でも、彼はずっと私の近くにいた。

それはなぜかというと、彼は常に旬なものを追い続けているからだし、私が活字から映像→イベントとやることは変わってきても、ずっと「精神は格通」をやっているように、平直行もずっと格通的生き方をしているからだろう。

普通、格闘家というのは、どこかで立ち止まる。いろんな格闘技をかじった人でも、最終的にはキックボクサーになったり、MMAファイターになったりする。普通は立ち止まるし、中には極めようとする。それが普通だ。

しかし、平直行は決して立ち止まらない。私が最初に会った時はシューティングの選手だったが、その前は仙台でボクシングや極真、大道塾をやっていた。

しかし、次にあった時はシュートボクシングにいて、シーザーさんが引退するとメインイベントを張り出した。そうかと思えば正道会館の空手の大会に出場。正道会館がリングスと提携するや、実験リーグなどで総合格闘技がなんたるかの道しるべを務めた。

ところがUFCで大道塾の市原海樹がホイス・グレイシーに敗れると、カーリー・グレイシーに柔術を学び、正道会館で柔術クラスを開く。その後、MMAの創成期に素手のバーリ・トゥードをやったり、K-1がブレイクするとK-1ルールでも興行を盛り上げ、アンディ・フグのセコンドとしてフグを再生させたりした。

最後は義理堅くシュートボクシングのリングで引退。プロモーターにとっては、魅せる試合のできる平直行は、どこのリングでも重宝がられた。何が飛び出すか分からない「闘いのおもちゃ箱」。その生き方はまさに歩く格通だった。

普通、これだけのリングを股にかけると「トップと喧嘩して」というパターンが多いが、前田日明も、シーザー武志も、石井館長も、他のジャンルのトップとも、義理堅く、うまくやっている。誰からも可愛がられる人懐っこさが格闘技界を股にかけられた理由だろう。縁がなかったのは、なぜかPRIDEくらい。

サムネ

そんな平も、引退したら、柔術の先生にでもなるのかと思いきや、意外にも武術に走り出した。人体の構造を学ぶために整体を学び、柳生心眼流などの武術を学んで、殺す術も生かす術も修得する。

私の生き方が、格通的な生き方という表現をするならば、大道塾→シューティング→シュートボクシング→正道会館→リングス→柔術→バーリ・トゥード→K-1シュートボクシング→柳生心眼流→武術という、平直行の止まることのない生き方は、全く同じ感性だったということになる。

いつも近くにいたのはそんな理由からだ。私も最後は「巌流島」に辿り着いた。だから縁も切れない。きっと菊野克紀もそういう縁のあるタイプなんだろうなぁ。

こうやって平直行のことを書いているだけで、30年間の様々な思い出が浮かんでくる。懐かしい。とてもここでは書ききれない思い出がいっぱい詰まっている。

今回、巌流島で何をやろうかと考えた時、前からやりたかった「全日本武術選手権」を行うことにした。「刃牙の世界」「修羅の門の世界」「喧嘩商売の世界」をリアルに実現。これはやがては、16名ではなく、3232武術流派とどんどんジャンルを股にかけて、膨れ上がっていくだろう。

しかし、困ったことにスーパーファイトで考えていたエース菊野克紀が、こちらがオファーするのが遅すぎたこともあって、11月に自身がプロデュースする格闘道イベント『敬天愛人』と両立できるか悩みだした。

前の私なら「何が何でも出てほしい」と口説いていたが、今は無理はしないようにしている。そこで菊野のためにも何か別のことを考えなきゃと思いついたのが、伝説の武術家とのエキシビションマッチだった。これなら巌流島と菊野の顔も立つし、意味もある。

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だが、まさか数見肇とか、倉本先生というわけにはいかないし、さてどうするか? と、考えていたら、近くにリアル刃牙がいることを思い出した。そうだ、全く近くに武芸百般の武術家、平直行がいるじゃないか。

すぐに平直行に電話してみる。

「平ちゃん、今度の巌流島は突然なんだけど、917日にやることになりました」

「ああ、予定開けられると思いますけど、確認します」

「そこでなんだけど、今回は審判ではなく、試合というか、3分間のエキシビションマッチをやってもらいたいんだけど」

「えっ? 誰とですか?」

「菊野克紀!」

平直行へはK-1以来のオファーだ。

「いいですよ」

意外に軽いノリで快諾。

「ホント? 嬉しい! ありがとう! エキシビションと言っても、どの程度でやる? 顔面パンチとか、どうする?」

「いいですよ。普通に打ってきてもらって」

「普通って、思いきり?」

「大丈夫ですよ。アゴ折られないように気をつけます」

全然へっちゃらって感じだ。さすがの54歳、武術家。

これはラッキーだ。菊野克紀選手に伝えると、喜んでくれた。

「でも、大丈夫ですかね?」

「全然、平気みたいだよ」

これが発表されると、私が考えてた以上に反響が大きかった。考えてみれば、「刃牙の世界」の中にリアル刃牙が入ってきて、エースの菊野克紀と闘う。武芸百般の平直行と沖縄拳法空手の菊野克紀が何を見せてくれるのか? 普通の試合より面白いかもしれない。昭和の武術思考の平直行vs平成の武術家・菊野克紀という達人同士のスパーリング。言われてみれば、面白いよなぁ。

発表の翌日、平直行から何度も電話が入った。もしかしたら、反響が大きすぎて萎縮したか、「もう少し準備に時間がほしい」と言い出すんじゃないかと、恐る恐る電話に出てみる。

「平ちゃん、どうした? まさか武術家ということで、エグい技で急所を攻めるとか、そういうのはなしだよ。秘孔くらいは分からなければ突いてもいいけど(笑)」と、冗談混じりに様子を伺う。

「はははは、11月の鹿児島大会に向けて健康的な秘孔を突いてやりますよ」

余裕ある受け答えにホッとする。

「ところで、今大会の僕のギャラなんですけど……

「ギャ、ギャラ? そうかごめんなさい。ギャラの話をしてなかったね」

「それなんですけど、巌流島も大変なのは十分わかっているんで、チケットでもらえませんか? 僕、自分で売り歩きますよ。そういうのも、僕らの世代は散々鍛えられましたからねぇ。懐かしいなぁ。ポスターもいっぱい張るので、できたらくださいね」

こんなところも格闘技を世間に浸透させるために多くの苦労してきた、我々黎明期世代ならではの発想だ。いい奴だなぁ。

ありがとう。本当に嬉しい。

私の中では俄然、リアル・グラップラー刃牙、平直行が楽しみになってきた。

9.17巌流島の大会情報はコチラ⇒『全日本武術選手権 2018 in MAIHAMA