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「菊野克紀が奇跡を起こせる理由とは? マッチメイク側から見た1・3巌流島!」

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お題「大反響!  1・3 巌流島・舞浜大会を振り返る!」

 

文◎谷川貞治(巌流島イベントプロデューサー)

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皆さん、改めまして新年、明けましておめでとうございます。

そして、1・3巌流島イベントを観戦していただき、誠にありがとうございました。CS放送「フジテレビONE」での反響も良かったのですが、まだ見てない方は、巌流島オフィシャルサイトの動画サイト「おさむらいdh」でいつでも見られますので、ぜひご覧ください。

プロジェクションマッピングという世界初の演出に忍者ショー。大学対抗武術駅伝もなんとか成功し、おかげさまで大きな評判をいただいています。これらの新しいことをわずか1ヶ月半でやるのは大変でしたが、実は僕が一番心配してたのは「試合」でした。

それでは、マッチメイク側の今回の意図をお話ししながら、1・3を振り返って見ましょう。

まず、マッチメイク側としては「5:5」マッチはとても怖いイベントです。仮に10試合以上でも組んでいたら、1~2試合は誰か必ずいい試合をします。そのいい試合で興行として「面白い」という印象を残せることができるのです。だから、主催者側はいっぱい試合を組みたがる。でも、10試合以上あるイベントは、長すぎて本当に良くありません。

だから「5:5」マッチというと、いい試合なく終わってしまう可能性があるのです。そうならないためにも、私は保険を打ちました。その保険というのが、知名度があり、人気があり、試合を「作れる」田村潔司と渡辺一久を入れることでした。この2人は勝ち負けに関係なく、ファンの心に何か残す「いい試合を作る」ことができます。こういう選手は格闘技バブル時代のメインを務めてきた選手の特徴です。魔裟斗や桜庭和志、ジェロムやアーツ、みんなそうですね。RIZINなんかで言えば、ミルコや所英男。彼らはお客さんに対して「見せる」という修羅場を何度もくぐり抜けています。勝ち負けに関係なく、「見せる」試合をする。そこが日本の格闘技イベントの大きな特徴です。

あと、「見せられる」という意味では、カポエイラのレロには信頼感がありました。逆にまだまだだなと思っていたのが、瀬戸信介と町田光です。だから、私は今回の「1・3」では田村潔司と渡辺一久に無理させないような相手を選び、瀬戸信介と町田光には負けてもいいから等身大で頑張ってもらおうと考えたのです。これで、最悪2勝2敗。そして、メインの菊野克紀は相手が強いこともあって、これは真剣勝負。どういう結果になるかは神まかせの試合として、ラインナップしたのです。こういう賭けは重要です。

特に田村潔司は私にとって最大級信頼している保険。これまでの巌流島を見ても分かりますが、タムちゃんは負けても本当に感動する試合をしてくれます。特に今回はメインの菊野克紀がUFCの時のようにあっさり負けてしまう可能性もありますから、タムちゃんのところでいい試合を見せておきたかったのです。

ところが結果的に全てが逆になりました。渡辺一久と田村潔司がまさかの、何も見せられないままの敗戦。レロも前回負けているからか、勝ちに徹したマウントパンチ。逆に町田光はできることを一生懸命やってくれました。これには頭を抱えました。特に体調最悪のタムちゃんは大誤算でした。田村さえいい試合すれば今大会は成功と言えたからです。それほど期待していました。

しかし、この大ピンチを救ってくれたのが、菊野克紀。いやぁ、本当にこんなヤツ、私の長い格闘技人生の中でも見たことありません。神懸かり的なまさに武道的な試合をクンタップ、ハ・ウンピョ、小見川道大、ケビン・ソウザと3大会連続、4一撃KOするなんて、本当に神が宿っているとしか思えない勝ちっぷりです。いやぁ、凄い! 特に今回のソウザはめちゃくちゃ強く、まず勝てない、組まない相手でしたからね。

菊野克紀がなぜ凄いのか?  これについては今後、いろいろ語っていきますが、まず一番言いたいことがあります。それは菊野克紀がMMAの闘いから、巌流島になって進化させていることです。「これはMMAの闘いじゃないだ。巌流島なんだ」と、気持ちも、戦法もガラリと変えている。実はこのことに気がついているのは、菊野克紀と小見川道大だけで、タムちゃんも、渡辺一久も、ケビン・ソウザもMMAの時と闘い方が全く変わっていないのです。菊野克紀と小見川道大が闘いをすごく進化させている。これは巌流島にとっても、MMAに慣れたファンにとってもとてつもなく新鮮で、可能性を感じさせる闘いなのです。

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しかも、それを菊野克紀は真面目に日々努力しています。彼の究極の目標はヒーローになること。自分を劇画の主人公に身を置き、沖縄拳法空手の「夫婦手」や「神の手」を劇画チックに真面目に実践している。「ナイハンチン」の型をやれば強くなれると信じている。マウントパンチがどうのという話は一切出てこない。ある意味、自分で自分を騙してものにしているのです。そこが飛び抜けている理由でしょう。

今はもしかしたら「見せる」ことを意識した2000年代の考え方すら古いのかもしれません。「見せる」選手より、自分を騙し「真面目に努力する」選手の時代。そして、結果的に「勝ち」が舞い込んで、お客さんを感動させられる。ターザン山本さんが「武道とは神に愛されること」とツイッターでつぶやいていましたが、その意味は深い。神に愛されるのは、そんな努力家たちです。マッチメイク側の私にとっても、考えさせられる大会でした。

いやぁ、ますます今までの感覚でやってたら、どんどんダメになるな。

巌流島がMMAの亜流だと思っている選手は勝てないし、私自身も大会の作り方を進化させなきゃいけない。それを教えてくれたのが、菊野克紀でした。大したヤツだ!