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巌流島の踏み絵を飛べ! 涙腺破壊BABYMETAL快進撃と格闘技

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niconico動画の『巌流島チャンネル』でほぼ毎日更新していた「ブロマガ」が、オフィシャルサイトでパワーアップして帰ってきました。これまでの連載陣=谷川貞治、山田英司、ターザン山本、田中正志、山口日昇に加え、安西伸一、クマクマンボ、柴田和則、菊野克紀、平直行、大成敦、そして本当にたまに岩倉豪と、多種多様な方々に声をかけていく予定です。ぜひ、ご期待ください!

5月19日(木)のブロマガ………お題『巌流島・公開検証Final』に期待すること

文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

文◎田中正志(『週刊ファイト』編集長)

 

もうK-1もPRIDEも死んだのだ。地上波で放送され、お茶の間の話題となった格闘技は、忘れた方がイイという市場の冷えた現実がある。しかし、復興の狼煙が立ち上がる。フジテレビが10年ぶり格闘技再参入を決断。7年の競業禁止条項が明けた榊原信行氏は、PRIDE降臨を謳うRIZINを始動。谷川貞治はキックボクシング・総合でもない和製新ルールの巌流島を立ち上げた。

フジテレビの格闘技情報番組『FUJIYAMA FIGHT CLUB』が髙田延彦統括本部長率いるRIZINだけでなく、MMA世界標準のUFCに、異端の巌流島も扱うのは喜ばしい限りだ。3極は提示されている。

サブカテゴリーがさらなる細分裂を繰り返すばかりのマット界で、ファン各自の好みの多様化と選別は仕方のないこと。ただし、ジャンルがなんであれ食わず嫌いはよくない。UFCマニアや記者陣にとってWOWOW中継の撤退は痛いが、フジ番組での紹介は楽しみだ。巌流島に期待することは、格闘技好きの皆様がこの機会に踏み絵を飛び越えることに違いない。

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ロック音楽の過激、過剰なサブカテゴリーであるメタル業界もマット界と同じく暗黒の20年を浪費していた。しかし、メタル復興の狼煙が立ち上がる。新日本プロレスと業務提携する芸能事務所にして上場企業のアミューズは、広島3人娘のテクノポップPerfumeが言葉の壁を乗り越えてワールドツアーを成功させていた。

そこの社員プロデューサーのルチャリブレ好きKOBAMETALが神アングルとしてキツネ様を制定。8歳にしてアイドル虎の穴アクターズスクール広島(ASH)に入学、半年後には授業料免除のプロとなる正確無比の歌唱力を誇る最終兵器SU-METAL(中元すず香)を軸に、2歳下のYUIMETAL(水野由結)とMOAMETAL(菊地最愛)を自社の成長期限定企画『さくら学園』から召喚する。Perfumeの振付師MIKIKOが付いた。メタルとダンスという、相容れないと思われた様式美がひとつになり2010年11月、BABYMETALが始動する。

デビュー曲の「ド・キ・ド・キ☆モーニング」はテクノ風POP。メタル民は存在すら知らない。仮に知ったとしても、すべての歌謡曲はそうやって現場制作されているとシュート活字されればお終いだが、パソコンで作・編曲された打ち込み楽曲がメタル風味だったとしても、敏感で繊細な感性を持つ真のメタル民は「偽メタル」の烙印を押してポイ捨てしたであろう。

鋼鉄神ジューダス・プリーストは昔から打ち込みを使っていたと裏のウラを知っていたとしても、ヤオガチは聴き分けられるからだ。2013年1月、トイズファクトリー移籍後の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は、「アイドル界のダークヒロインBABYMETALが世界へ放つ衝撃の”世直しメタル”」がEPシングルの叩き文句。“世界征服”の目標が掲げられる。いじめ撲滅の強いメッセージが歌詞とダンスで直観的に伝わるだけでなく、メタル信者(格闘技プロレス置き換え可)という肩身の狭い虐げられたマイノリティー民に勇気と希望を与える魂の解放曲! 宣材ビデオではジャンヌ・ダルク聖少女戦士になる。

しかし、世界最大の発行部数を誇る音楽雑誌Burrn!は無視、大御所やメタル者ご意見番も主流派はなかったことにしてしまう。アイドルとメタルの融合、日本カワイイ文化の異端はタブーだったのか?

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認知は海外からだった。「ギミチョコ!!」のYouTube再生回数がトンデモ社会現象の発端になる。住んでいる地域や老若男女を問わず、面白音楽ビデオの流行が世界に拡散。アミューズ側は中毒患者をまん延させるべく、幼少期より歌とダンスのレッスンを熟してきた日本のアイドルという職業を目指す少女たち、ピラミッドの頂点から選ばれし者の素材などYouTubeチャンネル浸透を加速させていく。

英国BBC放送が「ウェンブリーから東京」と題したドキュメンタリーで紹介した通り、秋葉原のAKB48劇場アイドル文化、原宿カワイイ文化、きゃりーぱみゅぱみゅと並び、ハイブリッド品種BABYMETALに光が当たる。SU-METALがお仕事でメタルを唄うとなった際、「なんじゃこりゃ?」とまったく知らなかったJ-POP少女の驚きと、奇天烈なBABYMETALと名乗るカワイイ少女隊を最初に見たお茶の間のリアクションは同じだ。

「フィンランドは一人当たりのヘヴィメタルバンドの数がおそらく世界一であり・・・」と、歓迎されたご当地で博学を披露したばかりのオバマ大統領が、広島で核兵器撲滅のスピーチをする戦後70年に、「ギブミー・チョコレート」が世界に通じたという究極のパラドックスを迎えた。

2014年3月、日本武道館2日連続は最年少アイドル単独公演記録更新となるも、海外武者修行が宣言される。アウェイとなる英国デビュー戦7・5『ソニスフィア』、BABYMETALが他流試合のフェスティバルで戦闘能力を開眼。圧倒的パフォーマンスで「テレビでしか見たことのなかった」異国の青空会場を制圧する。LIVE伝説もまたファンによって動画が拡散していった。

信じる者は救われる。メタルは戦いだ。2015年は1・10さいたまスーパーアリーナの『新春キツネ祭り』2万人から。6・21には2万5千人の幕張メッセ千葉で『巨大天下一メタル武道会』、12・12-13横浜アリーナ最終章は2日計2万6千人動員で首都圏トリロジー聖杯の奇跡が完結。アイアン・メイデンの壮大なステージセットをモチーフとする守護神キツネ様3体の巨大スフィンクス最天井から、ゴンドラ型ピラミッドに召された聖少女戦士が超満員の横浜アリーナ天空を旋回して「THE ONE」の連帯を唄うフィナーレ。イジメの踏み絵から2年、キツネ様は飛んだのだ。

2016年はキツネ様の日4・1に新作『METAL RESISTANCE』を発売し、英国ウェンブリー・アリーナから世界を転戦。日本人アーティストとして前人未踏、史上最大となるワールドツアーの最終日は9・19東京ドームだ。ビルボード・アルバムチャートで坂本九の「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」を53年ぶりに抜いて39位、他には75年シンセサイザー冨田勲「展覧会の絵」の49位、86年ラウドネス「Lightning Strikes」の64位という“2作目マーケティングの成果”もあるが、記録更新なのは事実。

GW期間は“神バンド”との全米ツアーの最中と重なったが、YouTubeなどで検索する時代の寵児とも分析されように、各公演成功は逐一投稿共有されていた他、WOWOWは初だしドキュメンタリー番組含むLIVE中継連続編成、NHK総合では『BABYMETAL革命~少女たちは世界と戦う~』完全版45分が放送された。NHKは2014年12月24日初回放送の『BABYMETAL現象 ~世界が熱狂する理由~』から、ロンドン・ブリクストンのO2アカデミー5千人会場を札止めにした熱狂を取り上げている。

世界征服に偽りナシ。ロンダ・ラウジーがUFCを超えてお茶の間で話される名前に化けたように、BABYMETAL国際現象は止まらない。リオ五輪閉幕式に、次回東京オリンピック告知として、J-POPカワイイ文化のダークサイド、赤と黒のゴシック衣装BABYMETALがイジメ撲滅を唄っても驚かない。すでに球場の吹奏応援歌でも使われている。

プロレスは騙しのゲームと定義される大衆感情操作のスポーツ芸術だが、騙しの権化・女狐を神アングルとするBABYMETALの世界征服侵攻がマット界にもたらした教訓は計り知れない。国内では新規女性客の囲い込みが始まった。

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聖飢魔Ⅱが1985年にデビューした際、早稲田の学生バンドのただの遊びだとレビュー0点評価したのがBurrn!である。日本産メタルのBABYMETALもまた文化人ロックファン”には「作られたメタル」との風説の流布があり、Perfumeのような口パクと思われているようだ。

また、少女なりバンドが楽曲を作っているならともかく、音源制作はクリエーター陣というのも踏み絵になった要因である。しかし、レイヤーを重ねて作り込んだ方が中毒にさせるフックになる、というのが作る側の言い分だ。真説ルー・テーズ自叙伝の原著題がなぜに『フッカー』なのか、エンタメ極意が英語版には活字にされている通り。流智美ファンタジー版936連勝の『鉄人』とは根幹が異なるのと同じである。

格闘技プロレスにせよ、ファンから選手になった者もいれば、まったく知らない未知のジャンルに飛び込んだ例もある。どちらにも成功と失敗例があり、業界に入ってからどう取り組むかが問われるだけのこと。ももいろクローバーZとBABYMETALはどこが違うのか。前者もプロレス好き、ロック好きプロデューサーでKISSとも共演を果たしている。しかし、後者はパソコン楽曲作成でもレイヤーを重ねて時間をかけて練り上げられた労作を揃えた上に、生ダンスのレベルが戦闘だ。また、「アイドルになりたい」という全国何万人予備軍の熾烈で過酷な競争から選ばれしSU-METALは、その鋭い眼力が17歳にしてメタル女王の風格を漂わせる。世界がカワイイ文化とメタルの融合に陥落した。

新興格闘技イベント巌流島もまた格闘技ファンやマスコミには踏み絵になっている。好みの多様化は避けられない。悪いことでもないが、楽しみ方情報と分析の選択肢は認められていないままなのが、我が国の問題だ。既得権を水戸黄門の印籠のようにかざす専門誌紙は、ファンが本当に知りたいことを伝えてきたのか否か。ファンを悪魔教の信者とする聖飢魔Ⅱに限らず、キツネ様のコンセプトは新興宗教樂團NoGoDにもルーツがある。ビジュアル系日本産メタルは偏見と誤解から不遇と過小評価の極みにあるが、Burrn!が伝えてこなかった罪は糾弾されよう。

BABYMETALがNHK『紅白』に出場するなら、フジRIZIN大晦日の視聴率は持っていかれる。週刊ファイトは気付かないふりをしていた仲間に贈るBABYMETAL讃歌として、5月19日号表紙と1万字巻頭記事をBABYMETALにした。

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週刊ファイト5月19日号BABYMETAL現象とマット界/UFC身売りマクレガー殺害?メイウェザー戦

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